去年 1998年という年はヒドイ年でした。経済ソノモノも ヒドいものでしたが、専門家が機能
しなくなったという点でも ヒドいものでした。経済の専門家という人たちも 政治家たちも、目に
見える現象だけを追いかけて 事後の事象の解釈に明け暮れているだけでした。
その中で 僅かにホネのあるところを見せたのは、政治家を引退?した石原慎太郎が、『「N
O」と言える日本経済』で アメリカの経済的な搾取と侵略の戦略をスッパヌキ、行動を起こせ
と呼びかけたくらいのものでした。
NHKTVの 11月末からの4回連続の「マネー革命」にしても、あるいは 年が明けてからの
「資本主義はどこへ行くのか・マネーの時代の選択」にしても、「報道機関の客観性」とかいう
ヤツなのでしょう 何の提案もなく、石原の説の正当性を 裏付けただけでした。安さんは一生
懸命に勉強はしていますが、技術屋なので 経済は専門ではありません。しかし 納得の行か
ないことがあって、折角こういう意見を言える場があるのですから ひとこと言わせて貰います。
思うから言うのですが、日本のことは 日本人が考えて主張してゆかないと、働いた蓄積を 働
こうとしないヤツらにミンナ吸い上げられてしまいます。自由化だのビッグ・バンだのという言葉
に負けて、言いなりになっていますが、本質や目的を忘れた無条件の自由は 混乱でしかない
し、制限のない市場開放は 暴走を引き起こすだけです。そういうと また官僚が喜びそうです
が、統制を歓迎して 日本の危機を感じないヤカラは、この際 問題にするのは止めます。
要するに 言いたいことは、今NHKあたりが 前記の番組で使っている「資本主義」という言
葉は、本来的に 生産に対応して考えられていた「資本主義」とは別のモノで、「投機主義」とで
も言うべき「資金ゲーム」であることは すでに多くの人が指摘しています。問題はそれが 同じ
市場で売買されるからといって、それを放任するのは 筋が違うということです。この点について
は 別項の「些論ver6.1」でも触れましたが、専門家にお願いしたいことは そういう「お金という
交換比率(小室直樹)に過ぎないもの」に 値段を付けて売買する場合の条件整備です。その
場合に役に立つのが 次の「フライ・ホイール(ハズミ車)の哲学」の比喩です。物理的なイメー
ジは 掴み易いので、ヘッジ・ファンドのような「交換比率に値段を付けたモノ」の喩えとして 役
に立つのではないでしょうか。
今は あまり見掛けなくなりましたが、昔はよく フライ・ホイールを見ることができました。今
は原動機は 電動モーターが主流になり、身近な往復動原動機は 自動車のエンジンくらい
で、それもムキ出しになっていないので 言葉も忘れられてしまっているようです。しかし技術の
歴史を少しカジレば まず蒸気機関が出てきますし、今の子供でも 機関車トーマスや機関車
ヤエモンと言えば、脇の下に手をやって シュッシュッポッポとやりますから、間歇的な力の供
給のイメージは判るでしょう。回転軸に対して そういう間歇的な力の補給があったり、逆に負
荷が掛かる場合に使うのが 「フライ・ホイール」という 重たいハズミ車なのです。
フライ・ホイールには 次のような性質があります。これを 「伝える動力」を「生産ないし生産目
的」、「フライ・ホイール」を「ヘッジ・ファンド」に 読み替えて感じて見て下さい。
@ 動力源や負荷が平準化すると フライ・ホイールは要らなくなり、逆にフライホイールを使
う限り 両者の完全な平準化は得られない。[フライホイールのパラドックス]
A フライ・ホイールを 負荷軸から切り離して不安定な所へ置くと、自転して 災害が起る。
B 平準化目的の動力源や負荷に対して 過大なフライ・ホイールはロスが大きく、制御が
しにくく 極端な場合には制御不能に陥る。
つまり結論は 「ヘッジ・ファンドが 暴れるのは、キカイで言えば 単なる設計不良で、適正な
設計変更を 行なえば良い」のであって、デキナイ相談では 無いのです。
参考までに 中学の頃に習いいまだに憶えている「機械の定義」を記述して置きます
機械とは:「各部が 抵抗性のある物質から成り、その各部が連結して 一定の拘束運動を為
し、動力を伝えて 仕事を為す構造物を言う」
経済が機械とは違う事は 百も承知ですが、だからと言って システムの各部に抵抗性が無く
て良いということはないし、ルールなしの フワフワ・ブラブラでは仕事にならず、生産活動と無縁
の 仕事をしない仕組みであっても良い訳も無い、と思うのですが どうでしょうか。
アメリカの破綻は もう時間の問題でしょう。一般の人が 年金を担保に、金融ゲームに金をブ
チ込んで 「アタマが良いヤツは 遊んで食える」とウソブイテいているのはどう考えても変です。
有色人種は 白人のために働けというのでしょうか。自分が そういうことが出来てもヤラナイか
らと言って、他人もヤラナイだろうと思うのは 人が良過ぎますバカです。株屋の古手を 財務長
官に据えて そういうシカケを造っているのがアメリカです。アメリカに 腹を立てましょう。そのア
メリカに 何も言えぬ日本の政府にも、もっと 怒ろうじゃありませんか。 《末説一覧へもどる》
----------------------------------------------------(歯痒末説 ver10.1)-----