ゆえボクはキミが好き



















「千石。」

俺以外いないはずの屋上に聞きなれた声。

「よ。」

にこりと笑って声の主東方が手を上げた。

「珍しいね。東方がこんなトコでサボりなんて。」

「お前と一緒にしないでくれよな。俺は自主退室。課題終わったんでね。」

と、軽く嫌味を乗せて言われてしまった。

どーせ、俺はサボりですよ。

「自習かー。いいなぁ。」

「いいなーってお前。自習じゃなくてもサボってんだから一緒だろ。」

「確かに。」

だろ?と言いながら東方は俺の隣に腰を降ろした。

二人でフェンスに寄りかかり暫し沈黙。

その沈黙を破ったのは東方だった。

「で?今日は1日ここにいるつもりなわけ?」

「・・・・・・えぇ?!」

疑問に思って驚くまで5秒。

俺は東方の方に勢い良く身を乗り出した。

「なんでわかったの?!」

「あのなー・・・。」

東方は呆れた顔をして溜息。

「お前わかり安すぎ。っていっても、気付かない鈍感男もいるけど。」

「あは、まあ南はね。」

「あれだろ?バレンタインデー。」

「うん。」

「珍しく朝早く来たと思ったら、カバン持ってそのまま屋上だもんな。」

「だって、さ。」

「まぁ、お前の気持ちもわからないでもないけどな。」

「え?」

「あいつ地味にモテるし。」

「う・・・・。」

「優しいし。」

「うぅ・・・・・。」

「鈍感だし。」

「うぅぅ・・・・・・。」

「あ「あーーー!!!」

4つ目の南のいいところは俺の叫び声によって遮断された。

「東方!」

キッと東方を睨みつけて怒鳴る。

「悪い悪い。」

笑いながら俺の頭を撫ぜていった。

「でもさ、お前。」

「なんだよ。」

「もう少しあいつのこと信用してやったら?」

「え?」

「相方なりの忠告。俺お前よりあいつのことわかってるから。」

東方はにっこーり笑ったけど、その中には不適な笑み8割。

なんか悔しい。

「俺は東方より南のこと好きだもん!!」

叫んで、カバンを掴むとそのまま歩き出した。

バタンッ、と乱暴に屋上のドアを閉めて階段を駆け下りる。






「ちょっと、イジメ過ぎたかな。」
















怒りに任せて出てきたものの放課後まで

時間を潰す場所を1つ失ってしまった俺は途方にくれていた。

「どうしよっかなー。」

図書室や保健室は先生がいるし、部室の鍵は南が持っている。

あと、残すは外。

「少し寒いけど校舎裏かな。」

俺はとぼとぼと校舎裏へ向った。

校舎裏はあまり人は来ないし来るとしたらリンチとか告白

ぐらいだろう。

木の隙間から日が落ちてくる場所を探して芝生の上に寝転んだ。

以外に温かくて安心する。

「まぁ、あとちょっとの辛抱だしね。」

俺は小さく呟いて、目を閉じた。




ガサガサッ

芝を踏んで歩く足跡に俺は目を覚ました。

外の温度の寒さにブルっと震えた。

辺りを見回すともうすっかり日は落ちていてオレンジ色だった。

俺は、ハッと思い出してさっきの足音の正体を探した。

草の陰からそっとそちらを伺う。

(告白の現場だったりして。ラッキー。いやいや、盗み見るなんていかん・・・でも)

夕日に照らされて浮かんできたのは、2つ結びの女の子と

部活のユニホームを着ている男。

(おぉーまさに告白!女の子は2年制かな。男は・・・)

「あーっ」

男の正体に叫びそうになり口を手で覆った。

(うそ、まじで・・・南じゃん。)

間違いなく南だった。

テニス部のユニホームにツンツン頭。

俺が南を間違えるはずない。

声はちらちらとしか聞えないが、この様子を見たら十中八九、告白だろう。

女の子は小さなピンクの包みを南に差し出して思いを伝えている。

彼女の頬が赤いのは夕日だけのせいではないだろう。

南の性格からして、受け取ることはわかっていた。

目の前の女の子が差し出した物を無下に断るなんて絶対できないだろう。

俺は半ば諦めながらその様子を見ていた。

(ついてない・・・。これを見ないために1日隠れてたのに。)

情けなさと、悲しさで俺のテンションはかなり下がっていた。

でも、見ずにはいられない。

瞬間、俺は目を疑った。

南が深々と頭を下げていた。

(え・・・?)

何度も何度も頭を下げると、女の子はコクンと頷いた。

目にいっぱい涙を溜めて、にっこりと笑った。

そして、ペコりと頭をさげて駆けていった。

俺は混乱する頭を必死に落ち着かせ立ち上がった。

すると、南は振り返ってこちらをみた。

「うわ?!千石?!」

本当に驚いたのか目を丸くしてこちらを見る。

「お前、何やってんだよ。部活にもでないで。朝見たと思ったらいないし。」

声色は少し怒っていた。

「あ、お前まさか今のみてて・・・。」

「うん。」

「まじかよ・・・」

南はばつが悪そうに手で顔を覆った。

「なんで・・・」

「え?」

「なんで受け取らなかったの?」

「え?」

「だって、女の子泣いてなし、俺、南は絶対受け取ると思った。」

「あのなー・・・・。」

溜息のように言って南が歩いてきた。

俺は顔を上げられず俯いていた。

瞬間、温かい物が体に触れる。

少しして抱きしめられてるんだ、とわかった。

南の息が耳の近くで感じる。


「受け取ったらお前泣くでしょ?」


耳元で囁くように小さく言った。

「え?」

勢い良く顔を上げると、思ったより近い顔に驚く。

「それとも俺が受け取ってもよかった?」

「・・・やだ。」

「だろ?」

にっこりと優しく笑って俺の瞼に口づける。

じわりとそこが熱くなる。







「ずるい・・・南カッコよすぎだよ。」


「惚れ直した?」


「ばか。」





















END














アトガキ

KIMOI!南がカッコよくてキヨが乙女なんですがー!!

でもカッコイイ南ときめく・・・vカッコマンだ健太郎は。

バレンタイン過ぎちゃったけどバレンタインネタ。

ひさしぶりだわー。