平成12年度から大阪府では、全府立高校に学校図書館を中心とする学校内LANを整備し、生徒がいつでもインターネットを使えるようにする事業が進すめられています。この事業の概要と、大阪府高等学校図書館研究会での取り組みについて報告いたします。
この事業は、平成12年度に52校を整備し、その後2年間で残りの学校を整備し、計3年で全ての府立高校に導入の予定でしたが、平成12年度および平成13年度の2年間で全府立高校(156校)の整備が終了しました。
この事業は「学校情報ネットワーク整備事業」とよばれ、府教育センターに専用サーバをおき、各府立高校との間を高速専用回線で接続します。各学校側では、図書館司書室に校内サーバを置き、閲覧室に5台、特別教室などに6台のデスクトップパソコンを校内サーバと接続された端末として導入します。
さらにノートパソコンを10台導入します。閲覧室に光無線LANが導入され、ノートパソコンを校内サーバに接続できます。6ヵ所の普通教室には情報コンセントが各4口設置され、校内サーバに接続できます。
閲覧室のデスクトップパソコンからは、生徒は必要なときに府教育センターを通して、外部のインターネットにも接続し、情報収集できます。授業で必要があれば、10台のノートパソコンと合わせて15台のパソコンでインターネットが使えます。
閲覧室の無線LANとして、電波ではなく光通信が導入されることになったのは、心臓ペースメーカーを使用しているなどで電波の影響が考えられる生徒への配慮したこと、および、光通信の場合には途中に障害物があれば、接続が出来ないので、教室外への情報の漏れがなく、セキュリティが保てるという理由からだそうです。
普通教室の情報コンセントは6ヵ所ですが、別にネットワークケーブルとハブが用意され、自由に移動できるノートパソコンで、どの教室からもどの授業においてもネットワークに接続できるよう、情報コンセントを配置することになっています。
司書室に置かれる校内サーバには、図書館蔵書管理ソフトも導入されました。
リンク 大阪府教育委員会「大阪府学校情報ネットワーク」のページ
学校図書館を情報センターと位置付け、生徒の情報収集を支援することは、永年の学校図書館関係者の悲願でした。大阪府高等学校図書館研究会では、1987年(昭和62年)より「情報システム委員会」を組織し、図書館におけるコンピュータ利用について検討を開始しました。1989年に最終報告「学校図書館のコンピュータ化について」を発表しました。この報告は全国学校図書館協議会 1990年8月発行の『高校図書館へのコンピュータ導入−現状分析と提言』にも紹介されました。ここでは、学校図書館での蔵書の管理を主な検討課題としていました。当時は、ネットワークを学校図書館で活用するにはまだ条件が整っていませんでした。しかし、将来の課題としてネットワークへの対応も視野に入れ検討していました。ここでの検討結果をもとに、研究会として教育委員会に学校図書館へのコンピュータシステムの導入を要望し続けてきました。今回の導入は研究会として待ち望んでいたものです。
校内サーバに置かれる、図書館蔵書管理ソフトの仕様について研究会と教育委員会および導入業者とで共同研究をおこないました。
各校での蔵書データの入力支援と蔵書管理のための各種帳票の出力からなる蔵書管理システムが導入されました。入力されたデータについては閲覧室の端末から検索できます。また、教育センター側でサーバに吸い上げ、他校からも活用できる仕組みも考えています。 各校の蔵書データの入力は図書館担当の教職員の仕事です。現時点ですでに他のシステムで入力されているデータについては変換が可能になるようにしました。さらに、TRCDによるMARCの導入が可能な学校では、MARCのデータが活用できます。研究会としては、将来的にはMARCによって全校の書誌データを統一して、府立高校が一体となって図書館の情報を活用できることを目指しています。
サーバが図書館司書室に置かれますが、ネットワークの管理に多くの時間が必要になれば、全校配置など不可能と思います。今回の事業では、メンテナンスフリーをめざしています。
先進的な学校がインターネットと接続される場合、積極的な取り組みが以前より行われており、管理体制を構築する人材もいる中での事業でした。しかし、今回の事業は全校配置をめざした事業であり、まったく準備の出来ていない学校も多数含まれています。とくに図書館職員にはコンピュータに慣れ親しんでいない人も多く、メンテナンスフリーとはいえ、相当の不安を持っている人もいます。研究会としては、いかにすればその不安を取り除くことができるか、その結果として各学校でのネットワーク活用が活発になるよう苦労をしています。そのための、研修会の企画や運営をおこなっています。
これからの教育は学校内の限られた範囲で完結するのではなく、広い世界への興味・関心のなかで行う必要があります。莫大な情報が流通する社会では、限られた学校図書館予算ですべての情報を収集することは不可能です。また、情報の中には図書として流通している情報もありますが、最新の情報の場合は図書として流通していません。自校で計画的に収集し整理した資料だけでなく、児童・生徒の学習で必要となる、また教員が教育課程で必要となる、ありとあらゆる資料・情報を提供できる、開かれた外の世界への窓口として学校図書館は機能しなければなりません。
図書館職員には、情報を探すプロになって欲しいと思っています。教員や生徒が情報を求めてきた時、その情報が図書で手に入るのか、またネットワークで手に入るのかを判断し、最適な手段に導いて欲しいと思います。
社会の情報化とともに、情報機器の大衆化が進み、新しい社会問題を生んでいます。情報が氾濫する社会に生きるためには、情報社会の特質を学ぶことが必要です。そして、あふれる情報にまどわされ判断を間違うことのないようにしなければなりません。さらに、情報機器を用いて情報をやりとりしているとその先に人間がいることを忘れがちです。機器の先には人間がいることを認識し、情報社会でのルール・マナーを身につける指導をすることが急務であるといわれています。
インターネット上の情報は、政治、経済、社会、文化の多方面にわたります。大部分は合法的で、非常に有用な情報です。しかし、一部ではありますが、勘違い、嘘、違法な情報が出回ることもあります。わいせつ画像の配信、個人への名誉毀損行為、ネズミ講やマルチ商法の勧誘、詐欺商法などです。
インターネット上での自由は優先する課題です。自由を享受するためには負うべき責任があります。しかし、この「自由」の概念の取り違いや、「責任」の概念の曖昧さによって様々な問題が起こってるのです。インターネットで起こった不都合の責任は自分が負わなければならないという自己責任、すなわち自分で自分を守ることと共に、他の利用者に迷惑をかけないこと、共有財産である情報資源の無駄遣いをしないことなどの責任があります。また、世界中の言葉も法律も道徳も異なったさまざまな人たちが参加する社会です。インターネットを利用するためのルールやマナーを一般にネチケットと言います。ネチケットを守ることは、ネットワーク社会に参加するすべての人々に課せられた責任です。
インターネットの登場により、私たちのメディア環境は大きく変わりました。インターネットでは、どんな立場の人でも平等に情報発信ができます。さらに、双方向性により、新しい人間関係や共同作業を可能にします。このような特性から、人々の生活や文化など社会に大きな変化をもたらします。組織から解放され自立した個人を基盤とした「市民のメディア」となる可能性を持っています。
しかし、メディアが変わるだけで、社会が変わるのではありません。新しいメディアを有効に活用する能力を持つことが必要なのです。この場合の活用する能力とは、メディア機器の操作方法ではありません。情報源としてのメディアを通して伝えられる内容を、客観的にかつ主体的に評価する能力です。また自己表現の場としてメディアを活用するため、課題の設定や、自分の意見のまとめ方、そして表現の仕方などです。
メディアの一つとしてコンピュータは大きな位置をしめます。しかし、コンピュータがすべてではありません。言語による情報、活字による情報、TVを代表とするマスメディアによる情報など、すべてのメディアを含んだ情報活用教育が必要とされています。たとえば、インターネットで手に入れた情報を活字情報で確認し、その情報の信頼性を検証するなど、学校図書館にインターネット端末が入った意義は大きく、図書館での利用教育の充実が望まれます。
平成15年度より、高等学校の教育課程に新設される教科「情報」の目標に「社会の中で情報及び情報技術が果たしている役割や影響を理解させ,情報化の進展に主体的に対応できる能力と態度を育てる」とあります。メディアの活用や、情報社会でのルール・マナーなどの学習はこの中で行われるでしょう。しかし、日常的にネットワークを活用するときに生徒と接するのは図書館の教職員になるのではないでしょうか。図書館の教職員はメディアの特徴を理解し、生徒を指導できる必要があります。また、生徒の利用状況を教科「情報」担当者にフィードバックして、より良い教科「情報」の授業が実現できるよう、積極的に発言する必要があります。
生涯学習の必要性が言われながら、充分な学習や調査が出来ない背景には、情報活用のの教育が組織的になされていないことに原因があると考えられます。これらの活動を生涯的に保障する機関が公共図書館です。これらの教育は、学校図書館の利用教育と合同で行う必要があります。
全国学校図書館協議会「学校図書館」2001年2月号 原稿を修正・加筆したものです