考えるししとう Thinking


 *芸能人に会いたい

 長野五輪のモーグル・女子金メダリストSさんがフジテレビに入社することになっ
た。その記者会見で、彼女は下記のようにコメントした。

  「芸能人に会いたいので、ドラマとかやってみたいです」
 かっこいいなあ〜。冗談にしても本音にしても、すばらしい。
 テレビ局って、なんだかんだいっても、学生さんの憧れの職業の一つ。たとえ「芸
能人に会いたい」が本音だったとしても、履歴書の志望動機欄には書けないだろう
し、面接試験のときにも言えないだろう。「映像文化の担い手として」とか「報道の
使命」とか、普段、思ってもみないことを言わざるを得ないほうが多いんだろうな。
面接官のオヤジも、「何をタテマエ言ってんだか」と、何年か前の自分を思いだしな
がら聞いてるのかもしれないけど。
 それを、面接会場のような閉ざされた場所ではなく、ひょっとすると全国に報道さ
れるかもしれない記者会見場で、堂々と言っちゃうんだから、すがすがしい。ただ、
何も考えてないだけだったのかもしれないが。

 この記者会見を見て、「また、あの五輪表彰台の帽子の一件の時みたいに、文化人
面したジジババが『最近の若いモンはなってない』とか言い出すかもしれない」と、
想像してしまった。

 長野五輪の表彰台でSさんが帽子を取らなかったのが、責められたらしいと聞いた
とき、「どうでもいいじゃん」と思ったんだけど、「半世紀前まで神様の子孫だった
方は五輪開会式で、並み居る国賓を前に、ネクタイ無しで挨拶したのだが、それはよ
かったのか? そのやんごとなき一族の女性達は、開会式だろうがなんだろうが、人
前ではいつも帽子かぶりっぱなしなんだけど、それも、いいのか? 昔、男性は挨拶
するときに帽子を取らなければならないが、女性は帽子を取らなくて良い、と聞いた
のだが、それはまちがっていたのか?」という人がいなかったのは何故だろう。言っ
たんだけど、カットされたりしたのかしら。それにしても、こんな、取るに足りない
一件で、狭量で停滞した思考をあらわにしちゃう人たちがいるなんて、Sさんはアホ
なジジババを爆発させる地雷原みたいなものかもしれないぞ。楽しいなあ。

 Sさんはたくさんの企業から引く手あまただったそうだが、「スキーで採用された
となるとプレッシャーになるから」と思い、フジテレビに決めたという。でも、フジ
テレビも「スキーで採用」したんだと思う。「スキーで」じゃなかったら、「スキー
の金メダリストという付加価値でもって」だ。本人もどこまで、その自覚があるのか
知らないが、これから、いろんな場面で、フジテレビに思いっきり消費されていくだ
ろう。でも、そんなオトナのアホな陰謀に負けないで、これからも地雷原として、ど
んどんマイペースでいってもらいたい。          (1998年11月某日)

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