● Mail Magazine 日々のあわわ 2003年04月14日(月) 第65号
〜○。今日のあわわ〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜
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私は、以前から考えや気持ちが文章になかなかまとまらなくて、書けないで いたネタがありました。それは「大家族」を扱った番組についてです。この 「大家族」とはマグリットの絵のことではなく、子だくさんの家族のこと。私 は、その子だくさんの家族を扱った番組には、妙に気持ち悪いものを感じてい ました。それがなぜなのか、まだ、自分でもよく分かってないところもありま すが、なんとなく分かってきた部分があったのでそれを書いてみます。
4月8日のことです。プロ野球中継が雨で中止になったために「貧乏! 浪 花の大家族!!肝っ玉母ちゃん奮闘記」という番組を代わりにやっていました。 夕食が始まったのが8時半だったので、私と連れ合いは途中からその番組を見 たのですが、最初から見てしまったお姑さんによると「子どもが11人いるご 家庭で、お父さんは具合が悪くて働いてなくて、いつもお金がなくて、学校に 払うお金も滞りがちなの」と言うことでした。子ども11人も五つ子と六つ子 で11人ではなくて、11人別々に生まれたのだそうです。不思議なのは、狭く てプライバシーがほとんどないような家の中でどうやって子どもを作ったのか ということですが、それはよけいなお世話ですね。
私が見たとき、3人の子どもがお菓子をつまみ食いをした罰として寒い廊下 に立たされていました。その後に、そこの家族の夕食でオムライスと呼ばれる ものが出てきました。ところが、それが白いごはんの上にケチャップで子ども の名前を書いた卵焼きがのっているものだったのです。
お姑さんと連れ合いと私は顔を見合わせ「これがオムライス?」。しかも、 そのオムライスと呼ばれるもののほかにおかずは何もありません。お姑さんに よると「朝ごはんはいつもごはんにふりかけかお茶漬けだそうよ」とのこと。 そんな食事だから、育ち盛りの子どもはつまみ食いするんじゃないのか? 子 どもたちは一様に痩せているし、欠食児童という言葉を思い出しました。でも、 お母さんはぽっちゃりしてるんですよね。ストレス太りかしら。番組の内容は お金がないことで苦労するエピソードがほとんどで、最後は「貧乏だけど子ど もの数だけ愛情のある温かい大家族」というナレーションにもっていきます。
このような「大家族」番組をテレビではよくやっていますよね。この場合、 大家族といっても昔のように祖父母、父母、子、孫という世代の混じった構成 ではなく、親とたくさんの子どもという人数の多い核家族。ちょっと調べてみ たら、私が見た番組もそうだったのですが、各テレビ局でだいたい決まった大 家族を何年かにわたってドキュメンタリー形式で取り上げているようです。少 子化の時代なので、子どもが多いことが珍しいから番組で取り上げられるので しょう。でも、私はこの「大家族」番組に行き当たってしまうと、どうも腑に 落ちない、妙な気持ちになるのです。
まず腑に落ちないことの一つは、大家族というと、セットのように「貧乏」 がついてくるということ。アラブの王族やインドのマハラジャでなくても、日 本でも、裕福な大家族はいますよね。私の知り合いで10人兄弟の9番目という 人がいましたが、そこは本人も含め兄弟はみんな大学をでていました。もちろ んお金の問題だけではなく、親御さんが教育に理解があり、子どもたちが優秀 だったということもあるでしょう。また、別の知り合いで11人兄弟の11番目 という人がいましたが、そこの家はお父さんは外交官、お母さんは外交官の一 族の出身でした。そういう例もあるのだから、大家族は必ずしも貧乏ばかりじ ゃないと思うのに、テレビで取り上げられるのは貧乏な家庭ばかり。お金持ち にも子育てなどでは苦労はあると思いますが、貧乏の苦労話のほうがウケがい いのですか? それとも、裕福な大家族の話だと視聴者が「お金持ちだから子 どもをたくさん産めるのね。うちは裕福じゃないから、子どもは1人でいいわ」 とかなって、少子化が加速しちゃいそうだから?
あと、腑に落ちないことといえば、「子だくさんは貧乏だけど、子どもの数 だけ愛情があり温かい」という番組のもっていきかた。宗教や思想上の理由、 避妊の知識がない、知識があっても夫が避妊に協力しない、ただ、だらしなく てずるずると産んでしまっただけなどで子だくさんということだってあります。 テレビで取り上げられている大家族は違うのかもしれませんが、昔も今も子だ くさんということが即「愛情がある」ことにはならないと思います。
また、テレビに出ていた大家族は、親はしょっちゅうお金に関する苦労でい らいらしていて、子どもたちはつまみ食いや騒いだからといって叩かれ、学校 におさめるお金の話をしたら怒鳴られていたそうです。親は子どものためにお 金の苦労をしているのだと言うかもしれませんが、お金のない苦労を本当に背 負っているのは子どもです。寝る場所も満足になく偏食に近い食事、無秩序で 騒々しく、もともとは経済状態や自分のできる範囲も顧みずに子どもを産み続 けたから貧乏だったり忙しかったりするのに、親はお金や家事のことで子ども に当り散らす。そんな家庭が本当に「愛情がある」とか「温かい」と言えるの でしょうか。
そんなこんなで、「大家族」番組を見ると、番組の言わんとしているところ が納得いかなくて、妙な気持ちに襲われるのです。でも、「大家族」番組って 人気あるようですね。数年に渡って続いているものがあることからもわかりま すが、今回の番組で「ひょっとして、白いごはんのオムライスがあるのかも」 と思った私は知り合い10名ほど(出身は東北、関西、四国、九州など様々) に聞いたところ、そのほとんどが「あ〜、あの番組ね。私も見たよ。あの白い ごはんのオムライスは驚いた」と言ったのです。そこで、番組の感想を聞くと、 「なんで家計のことを顧みずにあんなにたくさん産めるの?」「クリスチャン なのかしら」「親よりも子どもの将来が心配だ」と言うものの、けっこう以前 の回から見ていると人がほとんどだったんだなあ。
あの家族の生きざまに決してシンパシーを感じている訳ではなく、どちらか というと奇異に思っているのに、番組を見つづけている。何でだろう?
みなさん「貧乏の話がすごいから」「最近のキレるとか、金銭感覚が麻痺し たような子どもに比べて、番組の子どもたちはいじらしくてかわいいから」な どと言うのですが、それって、人の貧乏話は蜜の味とか、珍しいモノを見たい ということでしょうか。「大家族」番組は「本当にあった奇妙な話」とか動物 番組の珍獣の生態みたいに受け止められているのかしら。
〜○。あわわ後記〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜
一昨年、愛知県の父母に子ども11人という大家族が、2歳になる6女をみん なで暴力をふるっていじめ殺した挙げ句、遺体をクーラーボックスに入れて放 置していたという事件がありました。テレビの大家族はそんな人たちよりはマ シですが、かといって格別すごいことをしているわけではないですよね。親が 子どもの成長に責任を持つのは当たり前のことなのに、自業自得の貧乏暮らし の中で子どもを育てる話がなぜ、こんなにテレビで持ち上げられるのか、本当 にわからないのです。
ひょっとすると少子化対策のための政府のプロパガンダなのかなあ。でも、 あの番組を見て、「貧乏でも子どもがたくさんいるってすてき。私も10人く らい産もう」とはならないと思うけど。
次回は04月27日(日)を予定しています。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
真魚
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