● Mail Magazine 日々のあわわ 2002年09月12日(木) 第52号
〜○。今日のあわわ〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜
THE PILLOW BOOK
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たいていの雑誌には、コラムやエッセイのコーナーがあります。たいていは 作家やエッセイスト、評論家など文章のプロが書いているのですが、芸能人が 書いていることもあります。
少し前なのですが、私はある雑誌でタレントさんのエッセイのコーナーに関 わっていたことがあります。といっても、聞き書きやゴーストライターをやっ ていたのではありません。そのエッセイは1ページだったのですが、タレント さんの文章と写真をメインに、その添え物として、エッセイで取り上げたテー マについて何らかのデータをつける情報コーナーがありました。たとえば、タ レントさんがあるお店に行ったということを書けば、そのお店に取材して情報 を載せたりします。テーマが犬であれば、犬についての何らかの情報(最近の 人気犬種、ドッグフード、ドッグショーなど、犬に関する何か)を調べて取材 し、情報を載せるといったぐあいです。たぶん、編集側としては、1ページま るごとタレントさんの文章だけというのは、忙しいタレントさんにとってもき ついし、文芸誌ならともかくレイアウト的にもおもしろくないので、変化をつ けようとしたのでしょう。
私はその情報コーナーの調査、取材、執筆をしていたのです。編集から「今 回は●●について書くそうですが、どうしましょう」と電話があり、それにつ いてお互いにアイデアを出し合います。そのアイデアのなかから、よさそうな ものをとって、取材をし、書くのです。しかし、タレントさんは忙しいもので、 編集からテーマについて連絡があるのが、たいていはギリギリになってから。 私はけっこうきつい日程で、リサーチや取材などをこなしていました。なので、 タレントさんがテレビに出ているのを見たりすると、「そんなところに出てな いで、早く、原稿書いてください」と、理不尽なお願いを画面に向かって呟い たりしていました。
できあがった誌面を見るたびに思ったのは、タレントさんの書いているこの 文章っておもしろいのかなあ、ということでした。御本人がおもしろおかしく 書こうとしているのは分かるのですが、そんなことが分かるだけに、読んでい てつらかったりします。ただ、私に、そういう文章を読みこなすセンスがない だけかもしれないし、好き嫌いの問題もあるので、一概にダメとは決めつけら れません。
ほかの芸能人たちはどんなエッセイやコラムを書いているのかと気になって、 いくつかの雑誌を読んでみました。それで、分かったのですが、私が仕事をも らったところに限らず、芸能人のエッセイはクオリティの問題ではないという ことでした。身辺雑記が多いですが、それも「だからどうした?」とつっこみ たくなるような、説得力のなさ。例えば何か、おもしろい本や映画を見たとい うときも、ただ、「おもしろい」「すごい」「●●はかっこいい、かわいい」 という感想がほとんどで、どこがどうおもしろかったのか、すごかったのか、 ●●がなぜかっこよく見えるのかという起承転結がなかったりします。ひょっ とすると本当はおもしろいとおもっていないけどネタがないから書いたのかも しれないし、作品の宣伝を頼まれているだけかもしれませんが。
もっとも、芸能人のエッセイはファンへのサービスや客寄せパンダみたいな ものだから、文章のクオリティがどうのこうのと言うのが、そもそも間違いな んでしょうね。でも、いろいろ読んでみて思ったのは、なぜ、芸能人はエッセ イを書こうとするのか、でした。テレビや他人の手が入るインタビュー記事な どでは、伝えられないことがあるから、自分で文章を書いて表現しようとする のでしょうか。しかし、それが、前述したような、ただの感想文だったら、そ の人の表層やどのように見てもらいたがっているのかというイメージ操作が分 かるだけで、心の深遠などは分かりませんよね。それって「伝える」ことにな っているのでしょうか。
あと、もう一つ、考え付いたのは、ひょっとして、「文章を書いている=知 的」だと勘違いしていて、自分のイメージに付加価値をつけるためにエッセイ に手を出すのではないか、ということでした。しかし、文章なんて義務教育を 受けてりゃ誰にでも書けるので、「文章を書いている=知的」ということには ならないと思うんだけど。知的かどうかというのは、人に読ませる説得力のあ る文章を書けるかどうかという点にかかっています。その点で、読ませる文章 を書いている芸能人って、なかなかいないと思います。
美貌や演技、歌など、どこか抜きん出た部分があるから、芸能人やってるわ けですよね。そんな才能や天性の美貌があるだけでもすごいことなんだから、 それに磨きをかけていけばいいじゃない。エッセイもどきを書いて失望させな いでくれよ、と思うのです。
〜○。あわわ後記〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜
このメルマガをはじめて出したのは2000年の9月でした。2年たったんで すね。みなさん、いつも、おつきあいくださってありがとうございます。
今回のように、発行が予定通りにいかないことのほうが多くて、申し訳ない のですが、今後も、よろしくお願いいたします。
次回は9月22日(日)を予定しています。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
真魚
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