● Mail Magazine 日々のあわわ 2002年07月03日(水) 第47号
〜○。今日のあわわ〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜
エンジェリック・カンヴァセーション
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どうも、真魚です。
最近、編集者の知人を通じて、ある編集プロダクションを紹介され、テープ 起こしの仕事をもらいました。それが、昨日、やっと終わりました。いやー、 すっごい大変だったんです。
なぜ、大変だったかというと、まず一つはテープ起こしの仕事が初めてだっ たこと。というと、「ライターなのに?」と思われる方もいるかもしれません。 私に仕事を紹介してくれた知人もそうでした。
「そういう(テープ起こし)仕事は始めてですが、私で大丈夫でしょうか」。 と言うと、知人は「えっ、あなた、ライターでしょ」と驚いていました。イン タビューなどの取材では、たいてい録音をとるので、知人も驚いたのでしょう。 取材から原稿を書くまで、人によってやり方はいろいろだと思いますが、私の 場合、たしかに取材のときに録音もします。録音はするのですが、インタビュ ーをしながらメモをこまめにとるんですね。メモをとりながら、次に質問をど う発展させるかも考えつつ、原稿にするときはこの話とあの話はいれたいとか、 このコメントは文字数によっては、さっきの話とあわせてスパイス的に挿入で きるかもしれないなどなど原稿の展開も考え、それを矢印やアンダーラインな ど、ほとんど私にしかわからない記号でメモしながら取材をすすめていきます。 だから、原稿を書く段階になったら、一番頼りにするのはメモと、それによっ て喚起される、取材時の話の内容や雰囲気などの記憶です。テープはその確認 のために聞きながすことがほとんどで、短い原稿になると、テープを聞き直さ ないこともあります。
しかし、「テープ起こし」という仕事は、たいていは録音内容をそのまま書 き起こすものです。テープ起こしにも、いろいろ種類はあるそうですが、一番 多いのは、今回、頼まれたような「けば取り」という処理を行うもの。「あの ー」とか「まあ、その」のような、あいのてのような言葉や、あいづち、ども ったり、とちった部分を削ったり、重複する副詞を取ったり、言い直している 言葉を整理したり、誤った助詞を訂正したりなどしながら、録音されている音 声を忠実に文章になおします。このように、録音されている内容をほぼそのま ま、書き写すというと、簡単そうにきこえるかもしれません。ところが、これ が容易なことじゃないのです。
ふだんから発音発声の訓練をつみ、しゃべることが仕事のアナウンサーや俳 優さんならともかく、一般の人の場合、話し方が不明瞭だったり、そうとうに くせがあったりして聞き取りにくい人もいます。そのうえ、日本語は同音異義 語が多く、漢字変換するのに、判断がつきにくいことも多い。けっこう頭と集 中力を使うのです。録音が一対一のインタビューならともかく、おおぜいで話 されたりすると、声が重なったりして、なおさら誰が何を言ってるのかと分か りにくい。それに、録音状態が悪かったら……。
そう、今回、苦労した一番の原因は録音状態が最低だったことでした。20 人くらいの大人数が出席する会議で、テープレコーダーを司会者のところに置 いたまま録音しているようで、声の遠い人が多いわ、周囲の雑音ははいりまく りだわで、最初にテープを聞いたときには、何を言っているのか全くわからず、 本当に文章に起こせるのかどうか不安でたまりませんでした。しかし、一度、 引き受けた限りには投げ出すわけにはいきません。紹介してくれた知人のこと もあるし、初めての依頼主に悪い印象をもたれるのも後々の仕事にひびきます。 会議の資料も見ながら、少し聞いては、巻き戻しということを何度もくり返し たり、ちょっと休憩して時間をおいて聞いてみると少しは聞き取れるようにな ったりするので、それを少しずつ文章に起こします。そんな具合ですから、な かなか、進みません。一日中やって、文章におこせたのは約30分の録音。録 音時間は全部で2時間です。
「まだ、4分の1しかできてない」
私は気が遠くなりそうでした。短時間の間に再生と巻き戻しのボタンを何度 も押すので、左手の親指は痛くなるし、常に、テープの音声に全身全霊傾けな ければならないのですが、集中力も一日中は続くものでもありません。集中力 ってフル回転させていると、次第に、疲弊していき、状態の悪くなったビデオ テープの画像のように、ぶつぶつがりがりと乱れて切れ切れになっていきます よね。今回は集中力だけでなく、心のどこかもキレそうでした。それでも、お 茶を飲んだりして、ときどき神経をなだめながら、必死になってテープ起こし を続けました。このテープの中で、一番、はっきり聞き取れたのは、最後のほ うの司会者の言葉です。
「では、次回の日程を決めて、今回はこれで解散ということにします」 録音されている会議に出席している人のなかにもそういう方がいたかもしれ ませんが、これは、私が待ちに待った言葉でした。それを聞いたとたん、「や っと終わった! さあ、とっととみんなお帰り!」と泣き出しそうになりまし た。原稿の誤字などをチェックした後、依頼主にメールで送ったときには、長 い間の便秘が解消したように身も心もすっきり。
私が送った原稿をみた依頼主から、電話があったのですが、今回、私が渡さ れたテープは数あるなかでも、最低の最低という録音状態だったそうです。
「ひょっとして、これで懲りちゃいましたか?」と依頼主。私は「はい。そ うです」と言いたいのはやまやまでしたが、「初めてで、要領も分からなかっ たし、録音状態のせいで、ちょっと苦労しました」とすべてを、初仕事と録音 状態のせいにします。すると依頼主は「実は、暫くすると、またテープ起こし の仕事がでてきそうなんですけど、そのときにもお願いしていいですか? 今 度は少しは録音状態はいいほうだと思います」。
ここで、私の性格上、「もう結構です」とは言えないんですよね。依頼主は 原稿の仕上がりを気に入ってくれたようだし、この仕事が、また別の仕事(取 材執筆や編集アシスタントなど)に繋がるということも充分ありえるからです。 「ありがとうございます。また、よろしくお願いします」
小さなことからこつこつと、だもんね、と心の中で呟き、私は電話器に向か って深々と頭をさげました。
ああ、でも、次があるなら、少しは楽なほうがいいなあ、と思いつつ、楽な 仕事なんて、めったにないんだよなあ、と認めたくない事実もぼんやりと見え ていたりするのでした。
〜○。あわわ後記〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜
ワールドカップも終わりましたね。
テレビの特番などではドイツのGK、オリヴァー・カーン選手がよく話題に のぼっていました。見事な戦いぶりもありますが、「ゴリラ」とあだ名される、 ちょっと特異な容姿におうところもあるようです。タレントの山瀬まみさんが 「霊長類最高のゴールキーパー」と評したとか。名前もオリヴァーだしな。
私は、カーン選手はクラウス・キンスキー(ナスターシャ・キンスキーのお 父さん。「アギーレ 神の怒り」「フィッツカラルド」「キンスキー わが最 愛の敵」などに出ていた俳優。故人)に似ていると思うのですが、どうでしょ うかね。
次回は7月14日(日)を予定しています。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
真魚
e-mail:92104094@people.or.jp
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