日々のあわわ

● Mail Magazine 日々のあわわ 2001年09月02日(日) 第27号

〜○。今日のあわわ〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜

時計じかけのオレンジ

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先日、「舌の上のプルースト」(木下長宏著/NTT出版)という本を読み ました。マルセル・プルーストの長編小説「失われた時を求めて」や「ジャン ・サントゥイユ」などの作品に出てくる料理や味覚にまつわる話を紹介しつつ、 作品の世界を紹介していくという、一種のガイド本です。「失われた時を求め て」については、美術、音楽、植物、ファッション、同性愛、料理など様々な 観点から、作品を読みとこうという試みがなされています。なかでも、味覚や 料理というのは、私達に一番身近で分かりやすい感覚だからかもしれませんが、 著者が実際に旅行で見聞きした体験談などもたくさんおりこまれていて、楽し い読み物になっていました。ひとつだけ不満なのは、「失われた時を求めて」 の料理人、フランソワーズお得意のチョコレートクリームについてふれていな いことでしょうか。

 しかし、私はこの本のなかで、私にとっては見すごせないエピソードと出会 ったのです。それは何かというと、第3章の「カブール/バルベック」に出て くる腕時計のことです。

 その腕時計は「失われた時を求めて」の第一篇の冒頭の文章を文字盤に渦巻 き状にデザインしていて、オルセー美術館で売っているというのです。

 実は、私、デザインがおもしろい腕時計が大好きです。そのうえ、「失われ た時を求めて」の第一篇の冒頭の一節が文字盤に渦巻き状に! なんて、クー ルなんだろう、と思いました。冒頭の一節とは有名な文章なので御存じの方も いらっしゃるかもしれませんが、念のため記しておきます。

 「長い時にわたって、私は早くから寝たものだ。ときには、ろうそくを消す と、すぐに目がふさがって、「これからぼくは眠るんだ」と自分にいうひまも ないことがあった」(「失われた時を求めて」井上究一郎訳/ちくま文庫)

 まるで、夢の中に導かれていくような書き出しです。私の勝手な解釈ですが、 「失われた時を求めて」という題名や、文章の魅力を分かった上で腕時計の文 字盤に渦巻き状に文章をデザインしたのだと思います。

 欲しい! すっげー欲しい!

 いてもたってもいられなくなった私は、すぐにネットにつなぎ、サーチエン ジンからオルセー美術館のウェブに辿り着いていました。オルセーのオンライ ンショップの英語表記のウェブをひらき、時計を探しましたが、お目当てのプ ルーストの時計はありません。がっかり。そういえば、本の初版は1996年。 すでに、生産中止なのかもしれません。しかし、ひょっとしたら、ウェブのシ ョップにのせていないだけかもしれない…。私は一縷の望みを抱き、問い合わ せのメールを出してみることにしました。

 翌日、私は図書館で英文手紙の書き方の本を数冊借りていました。そこに載 っている例文から、使えそうなものを継ぎはぎして問い合わせの手紙を書くと、 オルセーの問い合わせ用のウェブにアップし、送信しました。そのときオルセ ーのウェブを見ていたら、オルセーやルーブルなどの国立美術館のミュージア ムショップを経営しているRMN(フランス美術館連合)には日本法人があり、 そのウェブもあることが分かりました。なんだ、苦労して損した、と思いつつ も、RMN日本法人にもメール(日本語で)を出してみました。

 メールを出した翌日、まずRMN日本法人が返事をくれました。今、カタロ グなどにプルーストの腕時計が記載されていないこと、先日オルセーにいった 時には見かけなかったことなどが記されていました。う〜ん、やっぱ、もうな いのか…とがっくり来ていたら、次にオルセー美術館のアシスタントから返事 が来ました。そこには、オンラインショップではプルーストの時計の取り扱い はもうないことが書かれていたのですが、ルーブル美術館に問い合わせてみて はどうだろうかとルーブルのメールアドレスが記されていました。

 「ルーブルかあ…。う〜ん、どうだろうなあ」と私は思いました。私はルー ブルのオンラインショップも見ていたのですが、そこにプルーストの時計はな かったからです。しかし、せっかく、アドレスまで教えてくれたことだし、と 思い、ダメもとでルーブルにもメールを出してみました。

 それから10日、もう返事はないだろうなあとあきらめていたときに、ルー ブルから返事がきました。そこには、なんと、プルーストの時計があると書か れてあったのです。私は、「やったあ」と、泣き出さんばかりになりました。 そのメールを送ってくれたのはMarie Dominiqueさんという方。「ありがと うマリー。知らない人だけど」と感謝感激。しかし、メールを読み進むうちに、 私は事態が解決しないことに気付きました。マリーさんは、「デパートメント ストアのメールアドレスを教えるから、そこで注文できます」(英語で)と書 いてくれたのですが、かんじんの「デパートメントストアのメールアドレス」 がどこにもありません。

 「えええっ、これってどうゆうこと? 書き忘れちゃったの?」

 さきほどの喜びが急速に色褪せていきます。ああ、またメールしなきゃと思 い、私は「デパートメントストアのメールアドレスを教えて下さい」と英語で 書き、マリーさんに返信しました。

 あれから2週間たちましたが、マリーさんはまだ、返事をくれません。バカ ンスにいってるんでしょうか? まさか、どこかで事故っちゃってるんでしょ うか? それとも、メールが届かなかったとか、サーカムかなんかと間違えら れて削除されちゃったんでしょうか? もう少し待って、もう一度、メールを 出してみようかなと、日夜もんもんとしています。

 望むものってなかなか得られないんですね。

〜○。あわわ後記〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜

 「BSデジタル放送のテレビ局のウェブをめぐっていた時に、「タッチアンサ ー」という視聴者参加のクイズ番組があるのを知りました。賞金は100万円で ウェブからもエントリーできるようになっています。ウェブのエントリーシー トに「賞金100万円の使い道は?」という質問事項がありました。今だったら、 私、迷うことなく、「ルーブルに行って時計を買う!」と答えるでしょうね。 もっとも、BS放送用のテレビもないし、「タッチアンサー」は4人ほどでチ ームを組まなきゃ出られないどうなので、申し込まなかったけど。

 パリに行きたいなら、賞金狙うより仕事で稼げよ!と心の声の良心バージョ ンが時々、叫んでいますけどね。

 では、次回は9月16日(日)を予定しています。

 どうぞ、よろしくお願いいたします。

                            真魚

                   e-mail:92104094@people.or.jp

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