日々のあわわ

● Mail Magazine 日々のあわわ 2001年01月22日(月) 第11号

〜○。今日のあわわ〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜

シベリア超特急2

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 さ〜て、みなさん、誰もお待ちかねでないでしょうが、今回は「シベリア超 特急2」(以下、愛憎を込めて「シベ超2」と呼ばせてもらいます)です。

 「シベ超2」が完成したらしいと聞いたのは、2000年の夏くらいでした。 そして秋、私のもとに一通のファクスが届きました。「シベ超2」の試写の案 内でした。実は、この「シベ超2」の製作には、私の古くからの知人が関わっ ていたのです。それで、私のような無名のフリーランサーのところにも試写の 案内が来てしまったのでした。

 知人は「試写に人が集まらないと、水野閣下のご機嫌が悪くなるので、ぜひ 来てください。そうでないと、来てくれるまで、毎日、電話しますよ」と言い ます。私が呼ばれたのは、枯れ木も山のにぎわいということなんでしょうね。 そこで、秋風の吹きすさぶなか、某試写室まで出かけていきました。

 試写室には、新聞や雑誌で、その名を拝見する偉い評論家の方もいらっしゃ っていて、けっこう賑わっていました。試写が始まる時間になると、スクリー ンの前に水野閣下が出演者の少年、尾上松也さんを連れて現れました。そして、 閣下自ら舞台挨拶をしてくださいました。出演者のみなさんの演技のすばらし さ、名シーンへのオマージュをたくさんちりばめてあること、今回もどんでん 返しを用意(!)しており、それは誰にも話さないでほしいということなどな ど、あのテレビでおなじみの解説者の口調で「シベ超2」の魅力を、そんなに しゃべっていいのかというほど、とうとうと述べられます。

 「市川昆監督から編集は徹底的にやったほうがいいと言われましたので、い まも作業中です。今回上映するのはほぼ完成版といったところです」

 そりゃあ、映像凝り性の市川昆監督は、誰にでもそう言うでしょうが……。

 「尾上松也君の演じた少年には、私の少年時代の思いがこめられている」

 水野閣下もかつては尾上松也さんのような、かわいい少年だったということ でしょうか? 隣で聞いてる尾上さんはどう思っているのかな? しかし、音 羽屋御曹司で歌舞伎の舞台経験のある尾上さんも、映画デビューが「シベ超2」 というのは、今後の人生においてどうなんでしょう?

 なんだか、複雑な思いにかられていると、やっと閣下の口上が終り、映画が 始まりました。

 さて、映画のほうですが、まず最初にどんでん返しがあります。それは「シ ベ超2」というタイトルにも関らず、シベリア超特急が出てこないことです。 お話の舞台は第二次大戦直前のマンチューリ。謎の鉄道爆破事故のため、シベ 超の一等車乗客たちはマンチューリのホテルに滞在を余儀なくされます。その なかには、ヨーロッパ視察から帰国途中の山下奉文大将(水野閣下)、華族夫 人、女優、芸者置屋のおかみ、戦争成り金と金で買われてきた幼い愛人など、 いわくありげな人ばかり。その夜、密室殺人事件がおこり、山下大将と部下の 佐伯大尉は事件解決に挑みます。

 ということで、「シベ超2」はサスペンスタッチの一大エンターテインメン ト…のはずでした。

 たしかに、今回は前回よりはお金がかかっているのがうかがえます。ベテラ ン俳優陣や、箱根のホテルのロケはそのあかしでしょう。しかし、ホテルの客 室や廊下、ベランダなどのシーンになると、戦前の高級ホテルとはとても思え ない、いかにも、現代の観光orビジネスホテルになってしまいます。あまり細 かいところまでは、使えるお金がなかったんですね。俳優さんたちにしても、 よく、これだけベテランをそろえましたねと、知人に言うと、「みなさん、年 内の仕事が終わった12月に、いっきに集まってもらって撮影したんです。撮 影日数は少ないですよ」。そうか、多くの芸能人の方々が「仕事も一段落した し、ハワイにでも行くか」というときに、「シベ超2」の撮影にかりだされて いたのか。

 で、前作よりもお金をかけたぶん、少しはマシになったのかというと、たし かに少しはまともになっています。しかし、それはあくまでも前作に比べれば ということです。たとえば、これが、たまたまテレビをつけたらやっていた2 時間サスペンスドラマだったら、まあ、いいかと見てしまうかもしれないなあ、 という程度、とでもいいましょうか。

 今回は映画の名シーンをいろいろパロディしているのですが、実をいうと、 事前に言われていなければ、見過ごしてしまったかもしれません。なかでも一 番、分かりやすいものの中に「戦艦ポチョムキン」のオデッサの階段落としの シーンのパロディがあります。この名シーンは「アンタッチャブル」や「未来 世紀ブラジル」でもまねられました。しかし、「アンタッチャブル」や「ブラ ジル」は、階段落としに至るまでの必然性をきちんと設定した上で、パロディ にしていたため、効果的だったと思います。「シベ超2」では、その階段落と しに至る必然性が感じられないうえに、シーンの設定が途方もなく安い! だ から、事前に「階段落としのパロディがある」と言われていなければ、そうだ とは思わないというか、思いたくないものでした。ほかにも「第三の男」など もあるのですが、水野閣下の演技では、ジョゼフ・コットンもアリダ・ヴァリ もかわいそうです。

 大好きな軍服を着て、これまた大好きな山下大将にふんして御満悦の水野閣 下は前回からまったく進歩のない台詞まわしと演技。ベテランの方々の演技も 新劇の芝居みたいに大袈裟で、いったい、どういう演出をしているのでしょう。 登場人物達の過去や背景が、伏線なしに唐突に明らかになるところや、山下大 将が神懸かり的に推理をしてしまうところなども前回と同じ。

 また、ストーリーでは、女性達が犯罪の鍵を握っている(「犯罪の影に女あ り」ってやつ?)ことや、「戦争は悲惨だ」(水野閣下の棒読み口調で)とい う唐突で直接的すぎる戦争反対のメッセージなどが前回と共通していました。 これらは、シリーズとしての統一感を出すためかもしれません。

 とまあ、少しは前作よりもマシだったところもあったけれど、前作のテイス トをきちんと踏襲してしまった「シベ超2」はあっぱれというしかありません。

 前作のテイストといえば、ラストのどんでん返しはどうなったの?と思われ るでしょう。今回は前作のような迷走するようなどんでん返しではなく、推理 の範囲内でおさまっていて、推理小説が好きな人なら予測できるものだったと 思います。迷走もないかわりに、驚くほどのこともありませんでした。ただし、 私が見たときから、水野閣下が編集をがらっとかえていなければの話です。

 それよりも、私が驚いたのは最後に出てきた「山下大将と佐伯大尉は『シベ リア超特急3』で帰ってきます」というテロップでした。事件のトリックや山 下大将の伏線なしの神懸かり的推理によるどんでん返しなんかよりも、よほど、 驚きましたよ。ひょっとすると、これが、一番のどんでん返しだったのかもし れません。「シベ超」は、どこまでいっても「シベ超」だったんですね。安心 しました。

 こうなったら、「シベ超3」も作って、トリロジーにでもしてほしいもので す。そうすると、「シベ超3」でも山下大将はシベリア超特急の乗客なんでし ょうか? 山下大将はいつになったらシベ超から下車できるんでしょう? シ ベ超って、ひょっとすると時空を越えた無限の環状線なのかしら。私も、その 環状線から抜けられなくなってしまっているのかもしれません。

〜○。あわわ後記〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜〜○。〜○。〜

 長々と「シベ超」話におつきあいくださって、ありがとうございました。

 「テレビブロス」や「映画秘宝」などに、「シベ超2」のロケについて、前 作のことを含めながら、おもしろおかしく書いた記事が出ていたときに、製作 に関っている知人に聞いてみたことがあります。

 「水野さんはご自分がオモチャにされているのはご存知ですよね」

 すると、知人は「当然ですよ。水野さんは、映画を撮るためなら、利用でき るものはなんでも利用するというしっかりした人ですよ」。

 なんだかんだいいながら、人の迷惑省みずに「シベ超」のことを書いてしま う私なんか、逆に利用されていると言えるでしょうね。

 今回、発行が予告より遅れて申し訳ありませんでした。

 次回は2月4日(日)を予定しています。

 それでは、よろしくお願いいたします。

                            真魚

                   e-mail:92104094@people.or.jp

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