徒然草 9    


2000年5月27日に駒場エミナース
で合唱団「エトワール」により再演される混声合唱組曲
夕暮れの情景について、当日のプログラムより転載します。

  「夕暮れの情景」プログラムノート    川崎絵都夫

  1 夕立のとほりすぎた

     夕立ちのあとの草むらで一心に鳴く「きりぎりす」に想いを寄せて、
     優しく歌い上げます。
     「せきこんで」「感情の無みをいつそう多角うちあげて」「一心不乱に」
     「わき眼もふらず一途に鳴きつのる」等々。詩人は執拗にきりぎりすの鳴く
     様を描写します。そこに自らの生き方を重ね合せ、また、あこがれている
     気持ちを大きな流れに乗せて表現します。

   2 遠き樹木

     晩夏の丘にたたずむ樹木を見る詩人の心は、別離の寂しさをそこに投影してい
     るかのようです。ピアノのトレモロの響きに、美しいハーモニーがふうわりと
     乗っていきます。

   3 子守唄

     母を知らない「私」に聴こえてくる雪の日の子守唄。その表現の中に「母」への
     淡くそして強い憧れのような気持ちを感じます。初めと最後に出てくる「子守唄」
     のメロディは日本のいろいろな子守唄を表わしています。

   4 鳩

     終戦後の日本人の心象風景を表わしているような、しかし、ジメジメとしたところ
     の無い不思議な味わいの詩です。三味線や、琴などの邦楽器の雰囲気を声で表現し
     て、詩の持つカラッとした妙な味を出そうとしています。

   5 夕暮れの時はよい時

     「夕暮れの時はよい時」という言葉を「A」とした「ロンド形式」のような、リズ
     ムを感じる詩です。(既に詩自身の中に音楽が内在しているようで、作曲しやすか
     った詩です)
     ロンド形式のBにあたる部分ではゆったりと「夕暮れ」の神秘を語り、Cでは「若さ
     ににおう人々」にも「青春の夢失いはてた人々」にも同じようにやさしい「夕暮れ」
     を唄います。
     一転してDでは「夕暮れの憂鬱」を「?」と「!」を使い、やや強い口調で訴えます
     ここは男声のみのア・カペラで歌い上げます。
     最後のEにあたる部分では再び、あくまでもやさしい「夕暮れの情景」を静かに歌い
     上げて終わります。あたかも「全て許されているのだから安心して眠りなさい」と
     でもいうように。

 

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