カタクリの北海道における分布(続報)

五十嵐 博


1.はじめに

ボタニカ・11号誌上、及び平成7年の年賀状においてカタクリの北海道分布予報を整理したところ各地から分布情報が届いた。平成7年、8年の春にスミレ属調査と平行して春植物の分布調査を継続している。平成7年度は道南、道北調査などを行った。平成8年度は道東調査で若干の成果があがった。本誌11号では自己確認26か所、分布情報69か所の合計95か所であったが、2年たって確認数も増加したので続報として報告する。多くの方々から情報をいただけたが、まだの方は今後ともよろしくお願いしたい。

2.北海道におけるカタクリの分布

現在までの筆者が確認したものを黒丸、各種文献・資料、聞き取り情報によるものを白丸で記載した北海道内のカタクリ分布を右図に示した。 基本的に2.5万分の1地形図で分割した972か所を1点として63か所を自己確認した。その他各種文献・資料から75か所が記録され、合計138点が分布地点合計である。 前回と比較するとかなり分布傾向がはっきりしており、北海道西半分に主な分布が限定されていることが読みとれる。

3.カタクリの生育標高

平成8年度春までに自己確認、文献で標高の判明している情報など、確認地の標高を整理すると以下の表のとおりである。地点数は五十嵐確認他77か所、文献10か所の87か所である。最大750m、最低10mであり、件数の多い標高は100m、200mなどに集中している。

4.まとめと考察

・カタクリは道南、道央、道北には多く分布するが道東には一部しか分布していない。釧路や根室地方の情報は現在までに見つかっていない。現在までの印象では日本海側多雪地帯に分布傾向が見られる。道南、特に桧山支庁などは調査がまだ不十分でありこれ以外にも分布すると思われるが資料が少なかった。今後の調査や情報収集により、きめの細かい分布が判明すると思われる。 ・現在までの道内北限は浜頓別町(樺太にもある)、東限は美幌町(クナシリ島にもある)であるが、今後の調査、情報次第で変更する可能性が高い。 ・生育標高は10mから750mまでの資料が得られ、分布の中心は50m〜250mに集中している。しかし、筆者は余り高い場所を調査していないので結論とは言えない。 ・現在までに確認できた市町村は下記の76市町村であるが自己確認は49市町村であり、今後できるかぎり現地確認に訪れたい。[ ]内は自己確認を示す。

宗谷支庁・・浜頓別町

留萌支庁・・幌延町、羽幌町焼尻島、[増毛町]、[小平町]

上川支庁・・[美深町]、[名寄市]、風連町、士別市、[幌加内町]、[和寒町]、[旭川市]、鷹栖町、[比布町]、愛別町、上川町、[深川市]、滝川市、砂川市、東川町

網走支庁・・端野町、美幌町

石狩支庁・・[浜益村]、[厚田村]、[札幌市]

空知支庁・・当別町、浦臼町、月形町、[新十津川町]、[沼田町]

後志支庁・・[小樽市]、[余市町]、古平町、[共和町]、[仁木町]、赤井川村、[蘭越町]、[黒松内町]、[京極町]、[倶知安町]、[ニセコ町]、島牧村、神恵内村、[岩内町]、[真狩村]

胆振支庁・・[室蘭市]、[伊達市]、登別市、[穂別町]、[厚真町]、[豊浦町]

渡島支庁・・[函館市]、[大野町]、知内町、[福島町]、[八雲町]、[南茅部町]、[長万部町]

桧山支庁・・[厚沢部町]、[乙部町]、奥尻町、[熊石町]、[上ノ国町]

日高支庁・・[新冠町]、[静内町]、[浦河町]、[様似町]、[えりも町]       [三石町]、鵡川町、平取町

十勝支庁・・帯広市、浦幌町、中札内村、[広尾町]、[忠類村]

5.御礼

今回の分布資料を作成するにあたり、多くの人から分布に関する情報を頂いた。カタクリの次はアズマイチゲ、キクザキイチゲ、キバナノアマナ、エゾエンゴサク等多くのスプリング・エフェメラル(春の妖精)が残されている。今後可能な限り調査の予定である。


ボタニカ13号

北海道植物友の会