●年中行事の切手●

 年中行事とは、伝統的に一定の日に繰返される宗教的/公的な儀礼・儀式。元来は宮中の祭政一致的な公式行事だが、現在では、家庭・市町村・会社・学校から宗教団体や国家など、各集団が行う例年の行事/催しも年中行事と呼ぶことがある。多くの年中行事は、日本古来の厄除けの儀礼や農耕儀礼を基盤として、奈良〜平安時代に宮廷に伝わった中国の風習も加わり、次第に現在の姿となった。
 節供(節句)とは1年の節目となる年中行事のこと。徳川幕府は「五節供」を定めた。
 祝祭日とは、国家的な祝いの儀式・宗教儀礼の行われる定例日。現在日本では、「国民の祝日」を指すことが多い。明治期の祝祭日は皇室祭祀を中心として定められたが、戦後の新憲法の下に「国民の祝日に関する法律」(1948年)が制定された。


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●節分:せつぶん●

 もともと季節の変わり目(節目)の日で、立春・立夏・立秋・立冬の前日を指す。特に立春の前日を節分とし、2月3日または4日にあたる。節分は太陽の運行を基準としており、旧暦(太陰暦)の時代は日が一定せず、大晦日より前になることもあっため、節分行事と正月行事(年越の物忌など)が混合していた。なお1年の最低気温となる日は、節分の前後に表れる。

 追儺(ついな=鬼やらい)を節分に行うのは室町以後で、それまでは宮中の追儺行事は大晦日の夜に行われた。源流は古代中国の疫鬼を追い払う行事で、仮装した鬼を追う芸能形式のもの。現在では「豆撒き」が主で、戸主が年男となって「福は内、鬼は外」と唱えながら一升枡に入れた炒大豆を屋内に撒き、それを各自が年齢の数だけ拾って食べる。

●雛祭:ひなまつり●

 3月3日の「桃の節供」に、雛人形を飾り、桃花や雛菓子を供えて、白酒で祝う習俗。雛人形が主となるのは、江戸時代になってから。雛人形の制作技術が発達し、雛祭はしだいに華美になった。初期の雛飾りは平壇・立雛が主だったが、人形が精巧で華麗となり、雛壇に内裏雛・官女・大臣・五人囃子・仕丁・各種の雛道具を並べるという形式に発展した。都市から農村へと波及し、明治以降に一般化した。古い風習を残す地方もあり、鳥取の「流し雛」は、紙雛を祭った後、3月3日の夕方を桟俵にのせて川に流す。

 かっては、「麦ぼめ節供」といって麦の生育をほめる行事があり、さらに1日中子供達が山遊び・野遊びをする風習も広くみられ、これらは元来「神送り行事」であろう。また『源氏物語』などには、「上巳」の日に祓を行い人形(ひとがた)を船に乗せて流すという記載がある。「神送り行事」を基盤に、この祓いの行事と中国陰陽道の上巳の行事(宴をひらき桃酒で祝う)が習合したものが雛祭であろう。

 ●うれしいひな祭り:サトウハチロー作詞 河村光陽作曲

●七夕:たなばた●

 7月7日の行事で、織女祭・星祭とも呼ぶ。古代中国の行事と、日本の伝承、盆の行事などが習合したもの。中国では、牽牛星(鷲座α星=アルタイル)と織女星(琴座α星=ベガ)の二星が、天の川を挟んで年に一度会う日とされる。牽牛は農時の、織女は養蚕・機織の星で、陰暦七夕の頃は、頭上に明るく見える。また盆(旧暦7月15日)の行事とも関連し、この日に盆道作りをしたり、盆の市が開かれた。

 奈良時代には中国伝来の二星を祀る宮中行事があり、やがて晴天を祈る星祭となった。江戸時代には武家の五節供の一つとなり、庶民にも広まって、笹に五色の短冊などを吊るして軒端に立てた。

 折口信夫によれば、乙女が水辺の機屋に籠り、神の降臨を待ちながら一夜を過ごすという乙棚機(おとたなばた)の伝承が「たなばた」の由来という。また、一晩水辺に籠って禊をし、神に穢を持ち去ってもらうもので、各地に水浴の風習があった。弘前の「ねぷた」や青森の「ねぶた」は、眠りを追い払う行事で、秋の収穫前に、睡魔・悪霊を追い払った。また悪霊祓いは、水に流す=雨を願い豊作を望む習俗にもつながる。

 ●七夕さま:権藤花代・林柳波作詞 下総完一作曲

●七五三:しちごさん●

 11月15日の、子供の成長を祝う習俗。もとは3歳男女の髪置(かみおき)、5歳男児の袴着(はかまぎ)、7歳女児の紐落(ひもおとし)=帯解(おびとき)である。髪置は、この日から髪を剃らずに残す日。紐落は、紐で着ていた着物を帯で締めるようにする日。11月は農作業が終わった霜月祭を行う月であり、15日は太陰暦では満月の日であるから、11月15日を子供の成長を氏神に祈願する日としたのだろう。

 主に公家・武家の祝儀だったが、やがて江戸の町民も行い、氏神や神田明神などに参詣するようになった。明治以降の東京で、七五三として盛んになり、晴着を着せ、千歳飴を買って帰る行事となった。同様の祝いの行事は全国各地にあるが、子供の年齢や男女の別、また期日も土地によって異なっていた。しかし戦後は、各地とも現在のような七五三になってきた。

●端午の節句●

 5月5日の年中行事。現在は国民の祝日「こどもの日」で、5〜11日は児童福祉週間。端午とは「月の初めの午(うま)の日」意味。古代中国では、薬草を採取し、ヨモギの人形を門にかけ、菖蒲酒を飲んだりした。災厄や病魔を避けるためである。古代日本でも、香気の強い菖蒲・蓬などの植物を魔除けとし、身に着けたり屋根に挿していた。宮中では騎射・走馬が行われ、武家・庶民も石合戦・凧上げ・綱引などを行い、しだいに男子の出生を祝う行事となった。また菖蒲は「尚武」に通じるとされる。

 逆に、中部・四国などでは、女性の威張れる日とされた。北陸〜山陰などでは、菖蒲や蓬を束ねた棒で、女の尻や地面を叩く行事がある。もとは、田植の時期に、早乙女(田植をする若い女)や大地の不浄を祓う儀式なのだろう。

 こいのぼりは、男児の出世・健康を祈って立てる。江戸時代の武家は菖蒲(尚武)の節供を重んじ、旗差し・幟・吹流などを立て、町民は鯉幟を立てた。鯉は竜になるという出世の象徴とされ、幟に鯉の絵が描かれた。やがて、小さな紙の鯉が幟と併用され、さらに鯉の吹流しの形となった。明治までは多くは紙製だったが、現在は木綿や化繊製が多い。

 ●こいのぼり:作詞・作曲者不詳

 ●「世界こどもの日制定記念」(1956年発行) この画像は1/2の大きさ


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    主な年中行事と祝日
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1月1日●元旦[新年節]・★歳首(さいしゅ)
1月7日 人日(じんじつ:七草)
1月15日●成人の日/小正月
2月3日 節分
2月11日●建国記念の日[紀元節]
2月14日 バレンタインデー
3月3日 ★上巳(じょうし)=桃の節句/雛祭
3月2x日●春分の日{春季皇霊祭}
4月8日 灌仏会(釈迦の誕生日)
4月29日●みどりの日(昭和天皇誕生日)
5月1日 メーデー
5月3日●憲法記念日(憲法施行の日)
5月5日●★こどもの日 端午=菖蒲の節句
5月12日 ナイチンゲールデー
5月(第2日曜)母の日
7月4日 インデペンデンス・デイ
     (米国独立記念日)
7月7日 ★七夕(しちせき/たなばた)
7月20日●海の日(明治天皇の行幸を記念)
9月9日 ★重陽(ちょうよう)=菊の節句
9月15日●敬老の日
9月2x日●秋分の日{秋季皇霊祭}
10月10日●体育の日(東京五輪開会の日)
11月1日 万聖節(ハロウィン)
11月3日●文化の日(憲法公布の日)
     [明治節](=明治の[天長節])
11月15日 七五三
11月23日●勤労感謝の日{新嘗祭}
12月23日●天皇誕生日(平成)
12月25日 クリスマス
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★は「五節供」 ●は「国民の祝日」
[]は明治〜戦前の祝日
{}は明治〜戦前の大祭日(一部)


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