●花シリーズ●

Flowers (1961)

1871年に日本の近代郵便制度が創始され、1961年に90周年を迎えた。郵政省では、郵便創始90年記念の行事の一つとして、四季折々の花を選び、1月から12月まで毎月1種づつ、合計12種の花切手を発行した。

「さくらさくら」
作詞・作曲者不詳


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●すいせん:1月●

●名称:水仙、daffodil/Narcissus。ギリシア神話では、水に映る自分の姿に恋い焦がれ、身を投じたナルキッソス(ナルシス)の化身とされる。ナルキッソスの語源はナルケ(麻酔/昏睡)で、スイセン中のアルカロイド=ナルシチンの麻酔作用に因む。ギリシャ→ペルシア→中国(唐)と伝わる。「水仙」の名も、ギリシア神話の影響だろう。日本には平安末期頃に渡来。

●分布:欧州〜地中海沿岸〜中近東〜中国・日本と広く分布、約30種。「房咲水仙」が、原産地カナリー島から日本に伝わり、暖地の海岸地方に野生化した。福井県の越前岬、伊豆の下田、淡路島の灘が日本水仙の三大群生地である。越前岬は、対馬海流(暖流)の影響で、海岸一帯に自生、また斜面の段々畑に栽培されている。越前水仙は品質と生産量を誇り、福井県の県花(郷土の花)である。

●文化:清楚な白い花は、新年の花として喜ばれる。「その匂い桃より白し水仙花」芭蕉。

●うめ:2月●

●名称:梅、Japanese apricot、Prunus mume。

●分布:中国原産。奈良時代には渡来し、7〜8世紀に急速に広まり、江戸時代に多数の品種ができた。茨城県・福岡県の花(郷土の花)。

●文化:庭木・盆栽、実は食用・薬用となる。水戸(偕楽園)・熱海・青梅(吉野梅林)、月ケ瀬・南部、太宰府などが有名。水戸藩主=徳川斉昭公は梅が好きで、偕楽園や弘道館などに多数の梅を植えて楽しみ、また果実の利用をすすめた。菅原道真が藤原時平の陰謀で太宰府に流される際に詠んだ「東風吹かば匂ひおこせよ梅の花あるじなしとて春な忘れそ」は有名(飛梅伝説)。近縁種のアンズと同じく種子は杏仁水(きょうにんすい=咳止め)の原料になる。紀州南部梅林の梅干は絶品。「むめ一輪一りんほどのあたたかさ」嵐雪。

●やまざくら:4月●

●名称:山桜 Prunus jamasakura。バラ科。代表的なサクラの品種、日本の国花。

●分布:宮城県以西〜九州の山地に自生。

●文化:吉野山は、日本一の山桜の名所。約1300年前、役の行者が大峰山に修験道を開いた際、桜の木に蔵王権現を刻んで山上にまつった。その後、桜を神木と考えて伐ることを禁じ、さらに参詣者が挙って桜を植えたので、全山が5万本もの桜で埋められた。1185年の源義経と静御前の都落ちの際、一時吉野山に逃れた。1336年、後醍醐天皇は吉野山に南朝を開き、南北朝時代の戦場となる。1347年、楠正行は吉野山の如意輪寺の扉に「かへらじとかねて思へばあづさ弓なきかずにいる名をぞとどむる」と書き残して高師直の軍と戦い、翌年、四条畷で戦死した。「敷島の大和心を人問はば朝日に匂ふ山桜花」本居宣長。

●ぼたん:5月●

●名称:Paeonia suffruticosa / Paeonia moutan

●分布:中国原産で、奈良時代に伝来。新潟・島根が主産地。大根島が有名で、島根県の郷土の花。福島県の「須賀川牡丹園」、奈良県の長谷寺・当麻寺などが有名。

●文化:聖武天皇は、都に沢山の牡丹を植えたという。「立てば芍薬、すわれば牡丹、歩く姿は百合の花」といわれ、美人の姿にたとえられている。当初は薬用として栽培され、根皮(牡丹皮:ぼたんぴ)が、消炎・止血・鎮痛剤として、生理痛・月経不順・打撲症などに用いた。怪談に「牡丹灯籠」がある。「牡丹散てうちかさなりぬ二三片」蕪村。

●あさがお:8月

●名称:朝顔、morning glory、Pharbitis nil。朝早く咲くから。漢名は「牽牛」(ケンゴ)で、朝顔と牛が取引された故事に由来。

●分布:熱帯アジア原産。中国から日本へ薬用として伝来。日本で多数の品種が作られた。

●文化:既に平安期には観賞用に栽培されていたが、江戸時代に広まった。「入谷の朝顔市」は有名。毎年7月6〜8日、入谷鬼子母神の境内を中心に、約1万鉢が並び、早朝4時頃から夜半まで賑わう。早く育ち・押花が簡単なので小学校の夏休みの理科の宿題などに利用される。種子(牽牛子:けんごし)の粉末は、下剤・利尿剤となる。「朝飯につるべとられてもらい水」加賀千代女。

●きく:11月

●名称:菊、chrysanthemum、Chrysanthemum morifolium。属名は、chrysos(金)+anthemon(花)のラテン語に由来(リンネの命名)。

●分布:中国原産で、8〜9世紀頃に日本に薬草として伝来。18世以降に欧米へ伝り、米国で栽培方法が飛躍的に進歩した。

●文化:元来は薬用として渡来したが、観賞植物として多種が広く栽培される。食用菊や除虫菊もある。江戸後期には菊人形の見せ物も生まれた。現在、全国各地で観菊会や菊祭が催され、新宿御苑、多摩川遊園、茨城県の笠間、大阪府の枚方(ひらかたパークの大菊人形)などが有名。

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