最近になって頻繁に聞く言葉があります。
「テロ」です。
あのアメリカ本国の9/11も「テロ」、アラブがイスラエルの一方的な武力進行に対抗する自爆攻撃も「テロ」、イラクのバース残党のアメリカ兵に対する攻撃も「テロ」、北朝鮮の国家ぐるみの日本人拉致も「テロ」・・・。
テロ、テロ、テロ・・・、テロ=悪。
世界の「テロリスト」のみが極悪人で、攻撃を受けている側は正義だと言うことでしょうか?
自分は凄く違和感を感じています。
元々、「テロ」が頻繁に行われていた地域はイスラエルであり、イスラエルのシャロン首相は「テロ」に圧倒的な軍事力で応戦する事は正義だと言って国連の度重なる警告を無視してアラブに武力侵攻を続けました。
武力ではイスラエルには太刀打ち出来ないアラブは、自らが爆弾となるしかイスラエルに反撃する術がありません。
これをシャロンは「テロ」としてアラファドを非難し続け、武力攻撃を激化させて泥沼化しています。
イスラム教は日本人やアメリカ人には理解出来ない部分なのですが、基本的に大変信仰心が強い宗教であり「眼に眼を」、「歯には歯を」と言う教えがあるように他教徒から迫害されればイスラムを守るためにどんな方法を取ってでも反撃します。
それが自らの死を持って反撃する爆弾テロです。
最近は女性や子供が多く爆弾テロをしています。
それをシャロンは「弱者を使った卑怯な戦法」と言っていますが、自分はイスラエルの軍事攻撃で子供を失った母とか、親や友人を失った子供が自らの意志で命をかけて実施した可能性が高いように思います。
このようなケースでは「テロ」だけが一方的な悪と言えるでしょうか?
国を挙げての攻撃が「正義」で個人や組織を使った自爆攻撃が「悪」だと誰が言えるでしょうか?
イスラム教では自殺を禁じていますがイスラムを守るための自爆攻撃は唯一許されています。
第二次大戦時の日本の特攻隊と近いと自分は思います。
ここで「特攻隊はテロだった。」ともしアメリカから言われれば多くの日本人も違和感を感じると思います。
このケースでは国家ぐるみの軍事侵攻も個人や組織を中心としたテロ攻撃もまったく同等の「悪」だと考えるべきだと思います。
今回のアメリカのイラク侵攻は「大量破壊兵器」と言う大儀が揺らいでいる以上、「正義の戦争」とは言えなくなりました。
そこでブッシュは「テロとの戦争」と矛先を変えさせて正当化しようとしている訳です。
自らは正義であり、テロリストがあたかも一方的な国際社会の極悪人であるかのようにすり替えようとしてます。
ブッシュとその後ろにいるネオ・コンと言われるアメリカ極右派の理論はアメリカに敵対する国家は「ならず者」であり「アメリカの圧倒的な軍事力を持って民主化させれば世界は平和になる。」と言う日本人にはとても理解出来ないものです。
驚く事に現在アメリカ政府の中枢にいる副大統領チェイニーや国防長総監ラムズフェルドがこの考え方の強硬な支持者です。
また、ブッシュは前回の大統領選挙でゴアが有利だったのでアメリカの人口の10〜15%はいると言われる超過激なキリスト教原理主義団体に選挙協力を得て勝利しました。
この宗教の特徴は「妊娠中絶」を禁止している事で、過去に何人もの中絶手術を行った医師が彼らに銃殺されています。
ゴアとのテレビ討論でブッシュは執拗に「妊娠中絶は殺人行為で禁止すべき。」と何度も繰り返して連呼していました。
この宗教の教えは簡単に言うと「世紀末に中東地域にハルマゲドンが起きて、そこでイエスが復活する。目を覚ましたユダヤ教徒は全てキリスト教に改宗して世界は平和になる。」と言うものです。
つまり、この宗教は中東でハルマゲドンが起きる事を信じ、願っているのです。
もしかするとブッシュ自体がこの宗教を信じているきらいがあります。
彼の眼は宗教家の独特な眼に見えますし、「十字軍」と言うような宗教家しか使わないような言葉を使っている事からも可能性は否定出来ません。
ブッシュは本当に正義だと信じてこの戦争を始めた可能性があるかも知れないと思っています。
このネオ・コンとキリスト原理主義の2つがブッシュをイラクに突進させたと言っても過言ではないと思います。
つまりは核兵器も大量破壊兵器も関係なく、とにかくブッシュは次の選挙でも支持を得て勝つためには何としてもイラクで戦争を始めたかった訳です。
イラクで上手くいっていればおそらくはシリヤやイランが次の標的になった事でしょう。
日本人のどれ位が、この戦争の裏の真実を理解しているのかな?と思います。
イラクのバース党員からすれば、何の根拠も無く自国にアメリカが軍事侵攻してきて、仲間が大量に殺されて占領された訳ですからもしアメリカがこの戦争の大儀を証明出来ないのなら国際法からしても彼らが反撃する事は「テロ」でも何でもなく正当な「レジスタンス行為」だとも言える訳です。
本当に残念な事ですが日本人の優秀な外交官が2人、イラクで襲撃にあって殺害されました。
日本では「テロ」だと扱われていますが、自分はちょっと違うように思います。
バース残党は今まさにアメリカと戦争をしている訳で、そこに総理大臣が「アメリカを支持する、自衛隊も派遣する。」と断言している日本は「敵国」と思われても仕方ありません。
バース残党からすれば自衛隊の派遣を阻止する為の日本人攻撃も残念ながら当然の攻撃対象だと思います。
もちろん今回の外交官を殺害した卑劣な攻撃を正当化する気はさらさらありません。
ただ自分が言いたいのは既にイラクはアメリカ兵もバース残党も戦闘状態にあって、どちらが「正義」でどちらが「悪」だと言えるような状態ではないと言う事です。
イラクはバース党を支持するスンニ派と未だに独立国家を持てないクルド人とイランと近いシーア派が混在しており、元々大変不安定な地域を束ねた国家でした。
それをフセインが武力によりイラクと言う国家として統合して安定していた訳です。
そのイラクと言う国家をアメリカは一方的に破壊して占領した訳ですが、おそらくはアメリカの考えていたイラクの民主化は無理でしょう。
フセインの悪政からイラクを救う為と教えられて派兵されたアメリカ兵は、いくら探しても大量破壊兵器は発見されず、歓迎されると思っていたイラク人からは攻撃されて「戦争の大儀」が見つけられず、おそらくは精神異常者や自殺者が多く出ていると思います。
困ったアメリカはシーア派の義勇兵をバース残党の掃討作戦に参加させるようですので、残念ながら、おそらくはぐちゃぐちゃな内戦状態になるでしょう。
そうなればイラク内のクルド人は当然自治国家を目指すと思われますが、隣国であるトルコは約半数がクルド人ですので、独立運動が盛んになれば自国が巻き込まれる可能性が高いのでトルコも参戦する可能性があります。
たぶんイラクはこれから何十年に渡って憎しみの連鎖が続くでしょう。
イスラエルとアラブの50年に渡る憎しみの連鎖が、またここでも繰り返される可能性が極めて高い訳です。
元々ブッシュはイスラエルのシャロンの理論を持ち込んで軍事侵攻した訳ですから当然と言えば当然かも知れません。
そこに日本は自衛隊を派遣して戦争のまさに当事国になろうとしています。
今後十数年、数十年繰り返されるかもしれない、アメリカとイスラム過激派を中心とした世界中のテロリストとの戦争に日本は結果として参戦してしまう可能性が高いのです。
これが本当に日本の「国益」なのでしょうか?
小泉首相は「テロには屈しない。」と発言していますが、イラクのバース残党やラディン側から見れば「日本はこの戦争に参戦する。」と聞こえるでしょう。
日本はアメリカ色に染められた「テロ」と言う言葉は控えた方が良いと思います。
「卑劣な攻撃で悲しい犠牲者が出てしまったがイラク復興支援の方針は揺らがない!」と言えば良い訳ですから。
小泉総理が直ぐに「アメリカ指示」を表明したのは、日米の同盟関係からしても当然だと思います。
だけれども日本は外交に於いてもっとズルさも必要だと思います。
「アメリカ支持」を全面に出してブッシュ支持は誇示しながらも、アメリカに対しては「今回の外交官の殺害事件で国民は大変ショックを受けており、とても今派遣出来る状態ではない、来年必ず派遣するので待って欲しい。」とか「今派遣して、もしも自衛隊員が死亡すれば来年の参議院選でアメリカ支持を鮮明にしている我が自民党は負けて、日本は今回の戦争に対して批判的な民主党の政権になってしまう。それでもブッシュ政権として良いのか?」と説得して時間を稼ぐべきだと思います。
その内にイラクは今のアメリカのやり方では本当に派遣出来ないような泥沼状態になると思いますし、アメリカ人にとってイラクは悪夢だったアフガンの再現となりブッシュも再選されないでしょうからアメリカからの圧力もその内に無くなるでしょう。
アメリカが撤退せざるを得ない状況に追い込まれて、国連にイラク統治を依頼した時点で自衛隊派遣は考えれば良いと思います。
北朝鮮の拉致問題で拉致家族会がさかんに「拉致はテロだ!」と主張しているようです。
家族会でアメリカに出向いて「アメリカは拉致はテロだと認めた。」と、アメリカが拉致問題で何かしてくれるように勘違いしているように思います。
アメリカは「自国は正義」で「テロ=悪」と言う自国の強引な論理に拉致事件を「テロ」と言う言葉で重ねる事により、自国を正当化させようとしているだけだと思います。
アメリカが日本の拉致問題で何かしてくれる可能性は極めて低いでしょう。
アメリカにとって北朝鮮は核を保有している可能性があって、将来は自国を攻撃可能な弾道ミサイルの技術を持っている事です。
アメリカにとって核開発さえ押さえ込めれば北問題はたぶん終わりです。
自分は北朝鮮の拉致は「テロ」では無くて「国家犯罪」だと思います。
拉致問題をアメリカの定義する「テロ」と重ねて考えるのは自分は危険だと思います。
元々の罪のない民間人を無差別に殺人する「テロリスト」は間違いなく「悪」だと思います。
しかし今アメリカが「テロ」として定義しようとしているものは違うように思います。
アメリカやイスラエルの行っている国家による軍事侵攻も、それに反撃する「テロ」も、いずれも現実は「無差別殺人」であり、自分は「まったく同様な悪」だと思います。
自分は「劣化ウラン弾」と言う第二の核兵器を「科学的な根拠がない。」として、何と市街地でも大量に使用したアメリカに「正義」はひとつとして無いと思います。
たぶんイラク国民だけでなく、危険性をまったく知らされずに使用したアメリカ兵の多くにも何世代に渡って今後白血病や皮膚ガンに悩まされるでしょう。
戦争と言うものはそう言うものです。
「正義」なんてどこにもありません。