昨年の年末イトーヨーカドーを皮切りに大手スーパー各社が消費税還元セールをはじめた。
マスコミ各社は「政府にかわって民間企業が景気回復に乗り出した!」とか
「消費税還元セール、各スーパーとも130〜150%の売り上げアップ!」などと
ほぼ好意的な報道ぶりだ。
家電など高付加価値商品を中心に売り上げを伸ばしたようだ。
しかし私はこれには非常に危険な傾向だと危惧している。
それはデフレへの入り口にあるかもしれないと言う事だ。
今回何故売り上げを伸ばせたかと言うと実は多くの消費者には潜在的には購買意欲が
有ったのだ。
ただ、購入するきっかけがなかったのだろう。
そこに雇用問題や政治の不信による将来への不安が重なり出来るだけ貯蓄に
まわさなければならないとの思いになっていたのだろう。
その証拠に日本人の貯蓄高は上がり続けている。
そこに消費税還元セールは「それだったら買ってもいいか。」と思わせたのだ。
そういう意味ではすばらしい効果が有ったと言って良いだろう。
それでは何故問題有りなのだろうか?
それは消費税還元セールは「麻薬」なのだ。
今まで常に前年割れの売り上げを続けてきた大手スーパーにとってこの麻薬は
さぞ魅力的だろう。
今後各スーパーの売り上げはふたたび前年割れ状態に戻るだろう。
いや、還元セールで好評だった家電などの消費財に関しては更に売り上げが落ちるだろう。
その時またスーパー大手各社はこの麻薬に手を出してしまうのではないかと言う事だ。
そう、頻繁に消費税還元セールが実施される事が恐いのだ。
昨年の年末も各社とも何回か繰り返し消費税還元セールを実施していた。
その還元率もヒートアップしていった。
この状態がこれからも続く事が有れば大変危険だろう。
これからしばらくの期間は消費税還元セールは絶対実施してはいけないのだ。
まさにデフレスパイラルにつかまってしまうだろう。
消費者は賢い。
もし今後どこかのスーパーで還元セールなるものが実施されるのならば
消費者はどこかでまたセールが有るだろうと特に付加価値商品の
購入を見合わせるだろう。
そうすると消費は一気に落ち込む。
それに現在のスーパー各社は絶えられないだろう。
そして還元セールは繰り返されいったんは売り上げが上がる。
しかし必要なものしか購入しないだろうから全体の消費アップへの貢献は少ない。
いくら安くても景気に明るさが出ない限り衝動的な消費は期待薄だ。
つまりセール期間中は売れるがそれ以外の期間は更に売り上げが落ち込むだろう。
そうすると何もしないスーパーはまったく売れなくなるので還元セールを実施えざる得なくなる。
還元セールは麻薬の本領を発揮しはじめる。
そのうち還元率が増大して競い合い出すだろう。
しかし繰り返すたび麻薬の効果は少なくなっていく。
それこそ生き残りをかけての利益を無視した乱売に発展するだろう。
しかしこれはスーパー業界のみではとどまらない。
スーパーでの家電の価格が下がれば家電専門店に影響して価格の下落は避けられない
だろうしそれはその他各業界でも同様だ。
価格が下がる事は一見消費者にとっては良い事と思える。
しかしスーパーにとっては単価ダウンで有り実利益の低下となる。
年間を通して前年比で大幅なアップでも計れればペイ出来るがそれは望めないだろう。
おそらくスーパー大手各社の経営は相当悪化するだろう。
そうなると更なるリストラや不採算店の閉店につながるだろう。
そうすると追いつめられたスーパー大手は仕入先各社に還元セール協賛と言って
仕入れ価格ダウンの要求をしてくるだろう。
こうなると大変だ。
それは無数の取引会社の経営を圧迫するだろう。
イトーヨーカドー、ダイエー、ジャスコ、長崎屋、西友・・・ETC。
日本の小売業を支えてきたこの各社と取引各社となるとものすごく多くの人が関わっている。
そこで雇用の不安が増大してますます消費は落ち込む。
これがデフレスパイラルだ。
いったんこれにはまってしまうと政治不在の現状ではしばらくは回復不可能だろう。
ようは根本的な景気の回復による消費拡大無くしてこれ以上の値下げ競争はデフレへ
つながる可能性が非常に高いと言う事だ。
単店レベルでの消費税還元セールならまだしも間違えても大手スーパー全店展開
による消費税還元セールなどは実施しない事を望む。