今、アメリカがイラクに戦争をしかけようとしています。
「悪の中枢」であるフセイン政権打倒が目的の正義の為の戦争だそうです。

湾岸戦争はクウェートに軍事侵攻した悪魔の国イラクからクウェートを救う為の正義の戦争、先日のアフガンはアメリカ本土を襲い5000名以上の犠牲者を出した難っくきテロリスト集団アルカイダ壊滅の為の正義の為の戦争だそうです。

自分は声を大にして言います。「正義の為の戦争」など絶対にあり得ない事を。
元々戦争と言うものは国同しの国益が相反して初めて起こるものでどちらが正義でどちらが悪と定義する事自体ナンセンスです。
もしアメリカが湾岸戦争でイラクを軍事攻撃した事を「正義」と言うなら今繰り広げられているイスラエルのアラブに対する軍事侵攻には何故「正義」の鉄拳を振るわないのでしょうか?

それでは湾岸戦争に於いてイラクは本当に一方的に「悪」だったのでしょうか?
おそらくほとんどの日本人はフセインが一方的な悪だと思っている方が多いです。
せめてここのコラムを見た「数少ない方々」は是非これを読んで真実を見る眼を育てて下さい。

当時アラブ各国間では原油価格を安定させる為にオペックにて原油の輸出価格と輸出量を決めていました。
しかしクウェートはそれを無視して安く大量に輸出し続けて大きな外貨を獲得していました。
同じ油田を共有するイラクはクウェートが大量に原油を採ってしまうと自国の不利益となるのでクウェートに再三中止の要請をしていました。
要請のなかにはもし止めないなら軍事侵攻をする、と名言されていました。
それでも無視続けるクウェートに業を煮やしたイラクはアメリカの駐在大使を通してアメリカに「軍事侵攻するが良いか?」と確認しておりアメリカは「当国はこの問題には関与しない。」との回答してイラクは軍事侵攻を決定します。
当時アメリカはイラン・イラク戦争に於いてイラクを支援してソビエトが支援したイランとアメリカ・ソビエトの代理戦争をしてきた事もあり友好国でした。
当然イラクはアメリカの理解を得られたと判断して侵攻したのですがアメリカはフセインを悪魔として一転させ湾岸戦争に突入します。

何故アメリカはイラクの軍事侵攻を事前に止めなかったのでしょうか?
実はアメリカは原油の多くを保有しているアラブに影響力を持つために軍事拠点を持ちたかったと言うのが事実です。
アメリカは国益の為に戦争をしたかったのです。
事実、湾岸戦争でサウジにアメリカは軍事拠点を確保しています。
このアラブにアメリカ軍が入ってきた事に激怒したのがビン・ラディンです。
イスラム教ではイスラムは聖地であり他教徒が入り込む事はイスラム原理主義の彼には許せなかったのです。
また同じイスラム国であるイラクがほとんどがキリスト教国で構成された多国籍軍に攻撃された事も彼を激怒させています。

同様の事が過去にもあります。
第二次世界大戦に於いて日本が真珠湾に奇襲をかけたのがその発端ですが実はアメリカは日本の軍事無線を傍受して事前に知っていました。
余談ですがこの時使用された傍受用のアンテナは日本の八木氏の考案した八木式アンテナでした。
日本ではこの発明に見向きもしなかったのですが情報戦の重要性を理解していたアメリカはこのアンテナの高性能に気づき採用していました。
日本は影に隠れた情報戦で既にアメリカに敗れておりそれなのに戦争を仕掛けて敗れたと言っても過言では無いでしょう。
その技術を日本人が開発したとは皮肉なものです。
さて本題に戻しますが何故アメリカは真珠湾攻撃を知りながら反撃しなかったのでしょうか?
それは「日本が一方的に攻撃を仕掛けた事に対する正義の戦争」と言う図式をつくりたかったからです。
結果アメリカは沖縄を占領してアジア地域に対する軍事拠点を確保しました。

この時期になると靖国問題がマスコミで騒がれ「戦犯」と言う言葉を聞きます。
いったいこの「戦犯」とはいったいどのような定義で決められるのでしょうか?
戦争終了時に敗戦国から戦争を始めた首謀者、と言うのが定義だと思います。
これを不思議に思いませんか?
何故、勝った国に「戦犯」がいなく負けた国にのみ「戦犯」が存在するのでしょうか?
元々戦争とは国間の国益がぶつかって始まるものでどちらか一方が悪いと言う単純なものでは無く戦争に突入させた責任者は勝った国にも負けた国にも存在する筈です。
日本が当時アジアの大部分を占領して多くのアジアの国に多大な肉体的、精神的な被害を与えたのも事実ですしアジアを占領下とすべくアジアに侵攻してきた欧米各国からアジアを守ろうとしたのも事実です。
戦争と言うものはどちらか一方に責任があるなどと言うような単純なものでは絶対にありません。
お互いに殺し合った戦争終了時にはそのような「戦犯」と言う認識になるのは仕方ない事だと思います。
しかし第二次世界大戦が終わり50年以上経過している現在にいまだこのような「戦犯」と言う認識をしている事自体、「第二次世界対戦」と言う世界的な悲劇に対する人類としてのきちんとした検証がまったくなされていないと言わざるを得ません。
勝った負けたは戦争に至ってしまった原因の事実検証とは関係ありません。
勝った側にも負けた側にも要因がありそれを当時の怨念を離れて検証しなければ第二次世界大戦に対する正しい事実認識は出来ないでしょう。
ですのでアメリカが「原爆投下は正しい選択」などと平気で言える信じられない認識になっているのだと思います。
ここにアメリカは気づかないと大変な事になると思います。
何故ラディンを筆頭とするテロリストは自らの死をかけてまでアメリカ(イスラエル)を攻撃するのかを考えないと根本的な解決はあり得ないでしょう。
テロは憎むべきもので肯定する気はまったくありませんが怨念による報復を正義の名を振りかざして実行すればいったんはアメリカ国民の気は晴れるかもしれませんが怨念は怨念を呼び更にテロを誘発するでしょう。

今、人類が共有している集合的意識(面白物理学を参照して下さい)にはアメリカに対する怨念がどんどん溜まっていますのでもしここでイラク侵攻となれば潜在的に反アメリカ意識を持っている国々から反アメリカ運動が世界的に一気に広がる恐れがあります。
個人的には非常に危険な状態だと思います。
日本人は「また湾岸戦争かぁ!?」程度に思っているかも知れませんがそのような単純な事態ではないように感じています。
それから国際的にナショナリズムが強まっているのも心配の大きな要因です。

「正義の旗の下の戦争」ほど危険なまやかしは無い事を知って欲しいです。
戦争は単に自国の国益を守る為に他国の多くの人間を殺す、と言うものです。
ビン・ラディンが極悪人でもたまたま彼がいると思われる国に暮らしていた何の責任のない多くの人間の命を奪って良い筈がありません。

相手を恨んで報復する前に何故自分が恨まれたのかを考えなければどちらかが朽ち果てるまで永遠に続く報復の応酬になるでしょう。
そのどちらもが「正義」の聖戦ですから・・・。

アメリカの友好国で日本はおそらく数少ない他国に怨念を持たない国ですのでアメリカの暴走を止められる可能性を持った国だと思います。
しかしマスコミから入ってくるアメリカからの一方的な情報を鵜呑みにしているとそこに隠された本当の事実は見えません。
大島渚監督が良く口にしていた「戦争の映像は勝った国側のものしか残されない。」は本当にそうだと思います。

アラブとイスラムの怨念、イスラムに加担するアメリカに対するアラブの怨念、湾岸戦争に於ける欧米の対応に対するイスラム原理主義者の怨念が複雑に絡み合って昨年の忌まわしいテロが起こった訳でこれらはそれぞれが独立して存在せず全てが網の目のように絡まっています。
昨年のテロの恐ろしい映像だけをみてしまうとラディン率いるアルカイダが一方的な悪だと思ってしまいますがそこに至るにはアメリカの責任もある事にアメリカを含めた人類が気づかないと大変な事になると思います。

もしアメリカがイラク攻撃を始めるなら日本人が毅然とアメリカに対して「それはおかしい!」と言う世論が起こる事を期待します。