cdmaOneに関しての技術情報は公開されていない部分が多く、あくまでもNET上での情報から推測して記載しています。
その為、間違い勘違い等有ると思いますのでご指摘お願いします。

1.cdmaOneの相互干渉問題。

CDMA方式はPN信号の類似性が有ると相互干渉を起こす問題点が有りPDC方式の1〜2割程度の電波使用効率しか確保出来ずつい最近まで携帯電話での採用は不可能と言われていました。

この問題を解決して民生用に初めてサービスを開始したのがクアルコムのIS-95(cdmaOneはIS-95の呼称)です。

クアルコムは可変速コーデック(EVRC)やVoice Activation、送信電力コントロールを考案して実用化に成功させています。

まず、TDMAと違い転送速度を可変出きるCDMAの特徴を生かして可変速コーデックEVRCを採用しました。
話者の声の性質や通信路の混雑状況によって4通りの符号化速度(8/4/2/1Kbps)を選び通話品質を保つのに最低限度の速度で符号化をおこないます。
これにより、電力密度を減らす事が出来ますので相互干渉が減り同時接続回線数が多く出来ます。

次にクアルコムは電話では双方が同時にしゃべる事はまず無い事に注目しました。
つまり、片側の伝送路で考えると音声信号が流れる時間は50%以下と言う事になります。
そこで、利用者がしゃべってる時間帯のみ送信電力を上げて、それ以外の時間帯は他チャネルへの干渉を押さえる為に送信電力を絞るVoice Activationを考案しました。
これも、送信電力を少なく出来ますので回線数をさらに増やす事が出来ます。

似たようなものにVOX(電池節約モード)が有りますが、これは端末自体で音声の有無により送信回路のON、OFFを制御するもので干渉を押さえるのが主目的では無く、電池の連続通話時間を延ばすためのものです。

また、基地局に近い端末から基地局に到達する電波の強さは遠くに有る端末の電波より強くなりますので遠くの端末からの電波に干渉を起こしてしまいます。(遠近問題と言います。)
その為に基地局に到達する電波が同じくらいの強さになるようきめ細かく(1秒間に800回)送信出力をコントロールしています。
これを送信電力コントロールと言います。

この送信電力コントロール自体はPDCやGSMでも実際には行っていますが、どちらかと言うと移動機のバッテリーセービングが目的で有り、回線数の確保を主目的としたクアルコムの試みは初めてと言って良いでしょう。

これらの技術を組み合わせで理論値ではPDCと同等から1.5倍という高い電波利用効率を達成させています。

また、3つの逆拡散機を用いてレイク受信が出来ますので1つの希望波に2つのマルチパスを合成して通話品質を向上させたりソフトハンドオーバー時にも活用されます。
cdmaOneは常に3つの基地局と交信していると思われている方がいるようですが、あくまでも端末に到達した電波のうち強い方から3つの到達波とレイク受信させていますので希望波と同じ基地局からのマルチパス2つと交信している場合もありますし2つ以上の基地局(同じ基地局の他セクタもあります。)と交信している場合もあります。

通話中に移動している時に基地局をまたぐ場合はに基地局を切り替える為にハンドオーバーが必要になりますが今までのPDCの場合は基地局により使用している周波数が異なりますので最悪の場合、切替時に通話が切断したり一瞬音声が瞬断する欠点がありましたがcdmaOneはいったん2つの基地局と同時にレイク受信してスムーズに切り替えるソフトハンドオーバーが可能です。

cdmaOneで採用された音声コーデックのEVRCですがドコモのハイパートーク(CS−ACELP)と比較すると絶対的な音声の再現性では若干劣るようですが利点として周辺雑音を協力に低減させる機能が有ります。
その為、駅のホームや都会の雑踏など騒音の激しい中では大変話やすいです。
携帯電話で採用されている音声コーデックは圧縮率が高く、結果として人間の音声以外は通さない特徴が有りますがEVRCは更に工夫を凝らしているようです。

この雑音低減効果を実感出来る面白いテスト方法が有ります。
cdmaOne端末から固定電話に電話(逆も可)して固定電話から「あーーーーーー。」などと同じ音声をしばらく続けてみて下さい。
そうするとある瞬間からcdmaOne側の音声がまったく聞こえ無くなります。
おそらく同じ音が連続的に入力されると周辺雑音と認識してミュート(消す)するようです。
最初は何故だか驚きましたが面白い発想で感心しました。
また、レイク受信の効果だと思いますが弱電界の安定性もPDCと比較すると大変良好です。

2.cdmaOneのシステム構成。

cdmaOneでは、下り(ダウンリンク)と上り(アップリンク)では回線の識別方法が異なります。

下りのチャンネル識別にはPN信号自体では無く、Walsh関数というものが使われます。
Walsh関数は64通りのパターンですのでcdmaOneでは1周波数あたりのチャネル数は64CHとなります。
そのうちデータがオール0のチャネルは端末の同期用のパイロット信号で使われ、7つはページング用、同期用が1つ必要ですので通信用は理論上では55回線となります。
実際は電波状況や他セルからの干渉を防ぐ為に20〜30回線くらいで設計されるようです。
旧IDOエリアの場合は1基地局で3セクタですので1周波数で取れる回線数は30×3=90となります。(旧セルラーエリアは6セクタが基本のようです。)

話がそれてしまいましたがWalsh関数で符号化してもそれだけでは拡散通信になりませんので下りに関しては全ての基地局の回線で同じPN信号によって拡散されます。

つまり、下りの場合は拡散の為のみにPN信号が使われ、回線の識別にはWalsh関数によってなされている訳です。
その結果、どの回線も同じPN信号で拡散させますので長いコード(ロングコード)を使う必要が無くなり比較的短いコードのPN信号(ショートコード)で済ませる事が出来ます。

また、異なった基地局では同じPN信号の位相をずらして使用し、端末は1つの基地局と同期が取れれば、あとは位相をずらすだけで他の基地局とも簡単に通信が出来るようになります。

cdmaOneの基地局ではGPSを設置して有りますが各基地局間の位相ずれのタイミングを取るための時間補足をしています。(同期型CDMA方式と言います)

屋内用の専用アンテナが登場すると思いますがそのままでは屋外と同期が取れないので建物から出入りする時に通話通話が切断するのを防ぐために屋外にGPSを設置してGPS情報を引き込んでくる必要があります。

CDMA方式では端末側で下り電波のPN信号と端末側のPN信号の頭のタイミング(同期)が取れないと逆拡散が出来無いウイークポイントが有ります。
cdmaOneはショートコードの採用により比較的短時間で同期補足が出来るようになっています。

また、CDMAでは一度取った同期を保つ為の同期追従も重要な技術になります。
弱電界でこの同期がずれると通話中にギュッとかキュキュキュとかいかにもデジタルなノイズが発生します。
PDCではこういうノイズが発生すると無音にしますので音声の途切れになりますが始めてcdmaOneを使うとこのノイズにはビックリしますね。(^^;;

次に上りの場合ですが、端末が通信する再に網側から個別のコード(PN)が端末に指示されそのコードにより拡散・逆拡散がおこなわれます。

1つの位置登録エリアでは4、096とおりのコードが使われます。(だと思う、ちょっと不確か・・・?)

cdmaOne(IS−95)の利点として旧アナログ(TACS、AMPS)の固定網を利用出来るので導入コストが安く出来るメリットが有りますがネゴ(接続)が遅い、ネットワークのトラブルが多いなど欠点も有るようです。
2001年の春頃には日本製の交換局が導入されるようですので改善される可能性があります。

ちなみに日本でサービスインした規格はIS−95Aを日本用にアレンジした独自規格(IS-95Aとは上下周波数の使い方が逆)でした。
IS−95Bでは日本の規格も正式に取り入れられ64K通信が可能になっています。

3.cdmaOneの今後の展開。 

現在のcdmaOneでは端末→基地局の電波(上り)に関しては大変細かい送信電力コントロールをしていますが下り方向は上りほど細かい電力制御はしていませんでした。
1Xから端末側に基地局からの電波状態をより細かく報告加させてり上り同様の送信電力コントロールを下り方向にも実施して更に電波干渉を削減させます。

これにより、現在のWalsh関数も64から128に引き上げられて1CHで使えるチャネル数が増加出来ます。
ただし、その為には下りの電波状態を基地局側に報告する機能が必要になりますので専用の端末が必要になります。
また、下り方向の通信速度を144Kbpsに向上させる予定です。
このバージョンはcdma2000を推進している業界団体で構成される3GPP2ではcdma2000のフェーズ1(1X)として規定されていますので、その頃からcdma2000のネーミングが登場するかも知れません。(C50シリーズになるようです。)

クアルコムは現在のシステム(IS−95)を利用して1.25MHzの帯域に拡散させて2.4Mbpsの転送速度を実現するHDRと言うシステムを提供すると報道発表しました。
内容としてはEVRC技術を通信に適応させたような方式で通信の品質によって回線の伝送レートを変動させるものです。

通信品質の良好な場合は回線を太くして(下り方向をTDMAで分割し割り当てる時間を長くする)短時間で処理して逆に通話品質の悪い通信時には回線を絞って時間をかけて伝送して全体の通信効率を高くしています。
また、レートに対してQPSK、8PSK、16QAMと速度に対応した変調方式を採用します。
QPSK→16QAMとなる程、高速の伝送レートが可能ですがエラー耐性が悪くなります。

HDRは同一周波数を通信で占有する事で効率化していますが同じ周波数で音声との同時共存が出来ず別周波数を用意する必要がありますので周波数配分が少ない日本でトラフィック変動が激しい移動体通信に向いているのか若干疑問に感じています。(^^;;

また、モトローラとノキアで共同開発した1X TREMEと言う技術によりHDRと同様の条件で最大5MBの転送速度を実現し、かつ音声と通信を同一周波数で同時利用可能なシステムを開発したとの報道も有りました。
5M通信時には64QAMと言う超多重変調方式を採用する事により実現されるようです。

3GPP2では1X+HDRを1xEV-DO(データ・オンリー)、1X+TREMEに中国案のLAS−CDMAを加えたものを1EV-DV(データ・アンド・ボイス)と規格化しました。
3GPP2では比較的構成がシンプルな1xEV-DOが今後の主流として考えているようです。

IMT−2000として3GPP2陣営では5MHzの拡散帯域を利用する3GPPとの統一規格案である3X(MC−CDMA)と言うシステムを導入する予定でしたが、この方式を採用する事業者が現れない事と比較的システム構成が簡単で設備費用が少ない1xEV-DOの登場によりIS−95事業者に賛同を得やすい1xEV-DOを3Xに変わってIMT−2000の標準規格として採用させる方針です。
3Xは5MHzの拡散帯域を使用する方式で上りに関しては5MHzに直接拡散されますが、下りに関してはcdmaOneとの互換性を考えて1.25MHz×3周波数に分けて束ねる方式でcdma2000(3X)がMC(マルチキャリア)方式と呼ばれる由縁です。
ITUとしては1xEV-DOは今のところIMT−2000として標準化されていませんが、3GPP、3GPP2から答申された方式をITU−Rは採用する方針ですのでおそらく認められるでしょう。(認められました。)

これにより、現在の800MHzを利用したcdmaOneは1X→1xEV-DOと進化させて、2Gを利用したIMT−2000でも同じ1xEV-DOを採用する事が可能になりますので、既にエリアの完成したcdmaOneとローミングさせる事が容易になりドコモ、J−PHONEのW−CDMAに対してアドバンテージになりそうです。

また、3Xも完全に捨てられた訳ではなさそうで3XにHDR技術を導入した3xHDRも1xEV-DOの後継として考えているようです。

ドコモ503で採用されたJAVAですがAUも夏にJAVA搭載モデル(C45系)が発売されます。
おそらくJ-PHONE同様にアプレックス社が提案しているJBlendベースのようです。
ただしMIDPはJ-PHONEと共通ですが両者とも独自のAPIを採用しますので同じJAVAアプリが動作する保証はありません。

また、クアルコムはCDMAに最適化させてCやC++ベースにしたプログラムをクアルコムのベースバンドチップMSM上で動作させるBREWを提供すると発表、AUも2001年冬モデルで採用する模様です。
また、JAVAのように端末のソフトウエア上で仮想的に実行するのでは無く直接チップ上で実行されますので動作が速くできる利点もあります。
また、BREWはiアプリ対応のHPも実行可能にするようです。

ドコモのiアプリはプログラムサイズが10K以下という制限や端末内部のプログラムを書き換えられたりユーザー情報には触れないよう厳しい制限をしておりコンテンツ作成者からすると面白いコンテンツが作り難いと言う声が多いです。
一方でBREWは極端に言えば端末のプログラムを完全に書き換えて別物の移動機にしてしまう事も可能そうです。
BREWはセキュリティに関してはクアルコムが認証したアプリケーション開発ベンダーにサービスを絞り問題の無いプログラムには認証信号を埋め込み、それ以外のプログラムは実行不可能にするようです。

現在クアルコムはIS−95用ベースバンドICチップの90%のシェアを占有していますがBREWがクアルコムのIC上で実行するとなるとクアルコムのICチップの占有を助長させる心配があります。
クアルコムは将来的には他のチップ製造メーカーにも仕様を公開するとは言っていますがどうもこの手のアメリカ的なやり方には反発を感じ得ません。

4.KDDIと日立によるHDRフィールド試験に見るHDRの実力値。

日経コミニュケーション、2001年の新年号に昨年秋より新宿区で行われたKDDIと日立によるHDRのフィールド試験の内容が記載されていましたので、そこから読めるHDRの実力を検証しましょう。

まず、クアルコムはHDRにより2.4Mbpsの通信速度が実現可能と宣伝されています。
実際はどうでしょうか?
フィールド試験の結果からすると基地局から数10メートルと言う至近距離エリア内に他移動機が通信していない条件下で最大2.4Mbpsの通信速度が可能との事です。

元々HDRはパケット通信が前提ですので一定の通信速度は確保出来ない方式ですが基地局から数10メートルと言う条件では2.4Mbpsの通信速度は理論上可能でも実サービスでは無理そうです。
将来アダプティブアレイアンテナ技術を併用出来れば実現の可能性が出てくるかもしれません。

次に基地局からごく平均的な距離をおいた条件下で歩行程度の速度でエリア内に1台の移動機で占有出来る条件下では平均400Kbpsとの事です。
(その後のクアルコムの報道では600Kbpsと公表しています。個人的には「ごく平均的」の捉え方の差だと思います。)

基地局から移動機の距離で通信速度が2.4Mbps〜400Kbpsと激変する事からHDRと言うシステムは基地局との距離によって大きな影響を受ける事が解ります。

また、エリア内で8台の移動機で同時アクセスした場合の平均速度は平均で100Kbpsです。
車の移動による30〜40Kmの低速走行時にエリア内で占有した場合は平均で150Kbpsです。

以上から想像すると通信状態による通信速度の変動が激しい為に一定速度を要求するサービスよりインターネット接続のように通信速度の変動に許容性の高いサービス向きだと思います。
まあ、HDRのシステム自体がインターネットのTCP−IPと同じようなシステムですので当然と言えば当然ですが。(^^;;
もしかするとパケット方式による定額料金制度が導入されるかもしれません。

HDRは通信専用と書きましたが実際は1Xと併用して音声と通信を共用出来る端末やHDR専用の通信機器が登場するでしょう。

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