ここでは携帯電話に関す基礎知識コーナーとして記載します。
基本的に初心者の方に分かりやすくする為、比喩的な表現が多くなると思いますのでご了承下さい。

Q1.デジタルって言葉よく聞くけどなに?アナログと何が違うの?

自然界にあるすべての情報は不規則に変化するものでアナログ信号と言われます。
携帯電話でアナログに該当するものは音声信号そのものです。
この音声をそのまま変調して電波(搬送波)にのせる方式をアナログ方式と言います。
現在も利用しているアナログ方式のものとしてラジオのAM、FM放送があります。

アナログ方式は仕組みがシンプルな利点がありますが変調方式と周波数が解れば簡単に傍聴出来る欠点が有ります。
また携帯電話のような限られた周波数帯で複数の回線を確保するには1回線のデータ量が大きくなり効率が悪い方式です。

現在のデジタル方式携帯電話ではこのアナログ信号を0と1だけの信号(デジタル信号)に変換しており、この事をA・D変換と言います。
何故デジタルに変換する必要が有るのか疑問が有ると思いますがアナログ信号は不定期な信号ですのでいったん信号が劣化してしまいますと元信号に復元する事が出来ません。
その点、デジタルに変換しておきますと信号は0と1だけの単純な羅列になりますのでよほどの劣化でない限り復元可能になります。

また、後で書きますがデジタル信号は圧縮と言う技法が有効に使えますので限られた周波数帯で多くの回線を確保出来る利点があり携帯電話をはじめ、テレビ放送でもBSデジタル、地上波デジタル放送に向かって他チャンネル時代に入ろうとしています。

さて、どうやってアナログ信号をデジタル信号に変換するかですが


まずある瞬間 a の信号の強さをデジタル信号に変換します。
この時に信号の振幅をいくつの0と1の数字で表現するかが問題になります。
この数字をビットレートと言いデジタル方式では品質を決定する需要なポイントになります。
もちろんこの数字が多いほどその瞬間の信号の強さをより正確に表現出来るようになります。

現在使用されているデジタル方式携帯電話のビットレートは8ですので8つの0と1の信号で表現しています。(例.00101110)
8ビットですと2の8乗で信号の大きさを現しますので2=256階調で振幅の大きさを表現出来ます。

この後に次の瞬間 b の信号の振幅の大きさを計測してその瞬間瞬間の信号の振幅の大きさを繋げていく(積分)わけですがこのaとbをどのくらいの間隔で測定するかが次の問題になります。
この周期の間隔をサンプリング周波数と言いビットレートと共にデジタル信号の品質を決定する要素になります。

間隔を狭める(サンプリングを高くする)とより滑らかな曲線になり復元後には元信号に限りなく近くなります。
ただしビットレートもサンプリング周波数も大きな数字になるほどデータ量が増えてしまいますのでやたら高く設定出来ず各メディアにあった設定がなされています。



一般にサンプリング周波数は再生に必要な帯域の倍の周波数が必要とされます。
人間の声で必要な帯域は3.4KHz程度ですので若干余裕を見て4KHzとしてサンプリング周波数は8KHzとなります。

つまり、デジタル方式の品質は(ビットレート×サンプリング周波数)で決定されるわけです。
電話で採用されている伝送速度は8(ビットレート)×8KHz(サンプリング周波数)=64Kbpsとなります。
NTT有線のISDNも同じ方式ですの64Kbpsな訳です。


Q2.よくデジタルで圧縮とかコーデックという言葉が出てくるけどどういう意味だかわからない?

現在多くの分野でデジタル方式が採用されていますが、その大きな要因はデジタルでは圧縮と言う技法が有効に使える事に有ります。
音声にしろ映像にしろより高品質のものとなると当然データ量が膨大になり限られた帯域内ですと電送効率が悪くなります。
その為、圧縮技術の使えるデジタル方式が必要になります。
この圧縮のアルゴリズムには多種多様なものが有ります。

簡単な例で説明しますと
デジタル信号はすべて0と1だけで構成されますので

000110000111

と言う12桁のデータが有ったとします。
これを同じ信号が複数続いた場合その信号の種類と繰り返した回数の2つで表現すると

03120413

と言う8桁の数字で表現出来ます。

この数字ははじめの取り決めさえ解かっていればいつでも12桁の数字の復元出来ます。
たったこれだけでもともと12有った情報を8つの数字で表現出来たわけです。
これが圧縮です。
この場合の圧縮率は8÷12で66.7%となります。

この程度の圧縮率では実用化になりませんので携帯電話では採用されていませんがなんとなく理解出来たのではないでしょうか。
この圧縮方式は実際はFAXで採用されています。
用紙を細かいドットに分割して白なら0、黒なら1のように扱って圧縮します。
実際は横方向と縦方向情報を別々に扱って更に高い圧縮率になっています。

PDCハーフレートの場合は64kbpsの音声データをたった5.6kbpsまで圧縮しますので大変な圧縮率で世界屈指の電波効率の良い方式です。(そのかわり音質は・・・。)

端末内部にはコーダー(符号化)とデコーダー(復元)がセットで用意されますのでこれを俗語でコーデックと言います。

この圧縮技術は年々進歩していますのでまだまだ新しい可能性が大きい分野です。
現在使用されている圧縮方式で有名なものにDVDで採用されているMPEG2(エムペグツー)や画像で良く使われるJPEG(ジェーペグ)やGIFオーディオで採用されているMP3AACなどが有ります。

現在は携帯電話のような小型液晶上で64Kbps程度の伝送レートでスムーズな動画を再生すべくMPEG4がさかんに研究されています。

DVDで採用されているMPEG2では制止している背景など時間が経過しても変化が無い部分は最初の画像で肩代わりさせて情報量を減らしたり逆に動きが激しい部分では人間の動体視力が著しく低下するので画質を低下させても気づかない特性を利用して情報量を間引きして全体のデータ量を圧縮しています。

携帯電話では複数の圧縮方式(波形符号化とボコーダ方式)を併用して高い圧縮率を実現しています。

まず、より多い桁数ほどより少ない桁数のデータに置き換える符号帳という方式が採用されています。

1001110=101
001011=1001
10010=10101

など数多くの符号帳を決めて置き換える事により圧縮する方式です。
ヒット率が高くなるほど圧縮率が高くなります。

次に予測符号化(DPCM)と言う方法が有ります。
音声データは基本的に連続しているデータなのでその瞬間瞬間の変化数が

瞬間a  00000001    10進数で1
瞬間b  00000010    10進数で2
瞬間c  00000011    10進数で3
瞬間d     ?
瞬間e  00000101    10進数で5
だったとします。

わかりやすいようにかなり簡略化していますがこのようなデータが有ったします。
しかし瞬間dの数値がエラーにより欠落してしまいわかりません。
しかし、かなりの確立で(00000100、10進数で4)と予想できませんか?
このエラ−部分を予測して補正します。
これが予想符号化の考え方です。

しかし、この予想は外れる可能性も否定できません。
そこで送信側でも予測符号化を行い予想する為の最低限の元データとその予想が外れた部分のデータ部分のみ送信します。

受信側でもまったく同じ予想をして補正すれば元データに復元出来ますのでかなりのデータ量を減らす事が出来る訳です。
PHSに採用されている32KbpsのADPCMはこの方式の中の一種で元々64KbpsのPCM音声を32Kbpsまで圧縮しています。
PCMでは音声の強弱に関係なく8ビットのビットレート(256階調)で符号化しますが、実際には音声が小さい場合には256段階の細かい階調が無くても有る程度忠実に再現できます。
その為、PHSのADPCMでは音声が小さい場合にはビットレートを落として全体の情報量を間引きする工夫がなされっています。
PHS程度の圧縮率ですと音声はほとんど劣化させず伝送可能で音声の遅延も人間の認識レベル以下になります。

次に人間の視聴特性を利用したボコーダ方式が有ります。

まず、受信機側に人工音声発生装置を設けます。
もちろん人工的なものなのでよくコンピュータの自動読み込みのような機械的な音声になります。
次に送信側では元音声から送信したい音声のうち原音(あいうえおなど)のみ取り出して送信し受信側の人工音声発生放置から疑似音声を発生させます。
これでは誰の声でもまったく同じになってしまうので音声の個性にあたる情報(この識別で色々な方式に別れます)を送信し人工音声発生装置で合成してあたかもその人の声に聞こえるようになります。

これにより、そのつど原音と個性に当たる情報を送信せずにすみますのでデータ量を劇的に減らす事に成功しています。

つまり、携帯電話で採用されているコーデックは干渉などによってエラーが発生して復元率が低下した場合にはある程度音声の個性を犠牲にしても出来るだけ原音(何を言っているか)を確保する方式と言えます。
時々相手が名乗らないでかかってきた時しばらく誰だか分からなかった経験が有ると思いますがそれはこのせいです。
ただし人間の脳には話している相手が分かればたとえ若干声が変わっていてもその人の声として脳で認識して自動的に変換してくれていますので普段は意識せずに利用出来ています。
つまり携帯電話では電話をかける時はたとえそれが身内で有っても名乗るのがマナーと言う訳ですね。


Q3.電波に音声ってどうやって乗せるの?

良くドコモは800MHzだとかJ−PHONEは1.5GHzだとか聞かれると思います。
これは搬送波と言い音声信号を運ぶ船のようなものです。
この搬送波に音声信号を乗せる事を変調と言います。

まずアナログ方式として使われるものに音声の波形に合わせて搬送波の振幅を変調するAM(振幅変調方式)があります。
受信側で検波して搬送波を抜き取れば元の音声信号として復調出来ます。
大変シンプルな方式ですが音声品質としてはあまり良くありません。



他に振幅は一定にして波形に合わせて周波数間隔を変化させるFM(周波数変調方式)があります。
音声品質的にはAMより良くなります。



さてデジタル信号で用いられる変調ですがデジタル信号の場合は0と1の2種類のデータしか存在しませんのでそれが受信側で解れば良いことになります。

まず解りやすい方式にAMの考え方を応用したASKがあります。
信号が1の間は振幅を上げて、0の間は振幅をゼロにします。



また、同じようにFMの考え方を応用したFSKがあります。
信号が1の時と0の時の周波数間隔を変化させます。



実際には上記の2つは携帯電話では使われていません。
現在の携帯電話の変調方式はPSKと言う変調方式を基礎にした方式が多く使われています。

PSKは搬送波の位相を反転させて情報を受信側に伝える方式です。
搬送波は正弦波(Sin波)ですが信号が0の場合はそのまま変化させず1の信号が入力されると位相を反転させます。
受信側はこの位相変化から元信号に復元します。



この方式をPSKと言います。

このPSKを発展させた方式にQPSK(4PSK)があり実際の携帯電話で多く使用されています。
PSK信号を相互に干渉しないように4つの位相別に直交させて同時に伝送する方式で周波数利用効率が上がります。
日本のPDCやPHSはこのQPSKベースに改良されたπ/4シフトのQPSKが使われています。
また、位相間隔を狭めた8PSKもありますが周波数利用効率が高くなる利点がある反面フェージング等によるエラー耐性が悪くなる欠点があります。

また、更なる伝送効率を追求した方式にQAMがあります。
QAMは位相と振幅の双方を利用して情報を乗せます。
位相と振幅のそれぞれに4値の変調をさせる16QAMがあります。
この方式はcdma2000のHDR2.4Mbpsの伝送時に使われ大変高い伝送効率を実現させますがエラー耐性には非常に弱くなり現在のところ静止時にしか実現出来ません。


Q4.PDCデジタルではハーフレートとフルレートってあるようだけど何が違うの?

現在のデジタル方式(PDC)は従来のアナログ方式(NTT大容量方式)では契約者の増加に対応できなくなった為に開始されました。

アナログ方式は音声をそのまま電波に乗せて送信しますので、(FM変調と言う方式です)自然な声で通話が出来る一方で、送信するデータ量が多くなってしまい電波の有功利用と言う意味では効率的では有りませんでした。
デジタル方式の利点としてはデータ量を減らす為に圧縮という技術が使えるのでアナログ方式に比べ有功に電波を利用できます。

まず最初に25KHz(インターリブ)の周波数で3回線同時に使用出来るフルレート方式が採用されました。
初期NTTアナログ方式は同じ25KHzステップ、アナログNTT大容量方式ではナロー(狭帯域)化され12.5KHzステップ(6.75KHzステップインターリブも有る)ですので同じ25KHzでは2回線になります。

しかしそれでも契約者の急増に対応出来なくなってきたので現在のハーフレート方式が開始されました。
ハーフレート方式では更に圧縮率を高くし、同じ25KHzの帯域で6回線分の通話が出来るようになります。
結果として圧縮率が高いため更に通話品質が悪くなり、俗に言うところの「宇宙人の声」になってしまいます。
現在のドコモの新製品はすべてハーフレート対応端末です。(厳密に言うとフル・ハーフ兼用機です。)

もう少し詳しく説明しますとアナログ方式は与えられている電波帯を周波数別に分割して利用するFDMA方式(周波数分割多元接続)でした。
デジタルPDC方式は、25KHzの周波数を更に一定時間ごとに分割して複数人数で順番に利用する方式になっており、TDMA方式(時分割多元接続)と呼びます。
(結果、間欠接続になります。1スロットあたりの接続時間は20/3msが必要になります。)








Desin By Wins Soft
                                     時間→

3回線で分割する方式がフルレート6回線で分割する方式がハーフレートとなります。

64,000bpsの音声データをフルレートでは11,200bps(音声6,700bps)、ハーフレートでは5,600bps(音声3,450bps)まで圧縮符号化しますので音声品質の差となります。
ちなみにPHSは32,000bps、cdmaOneは音声8,000bpsです。
厳密に言いますとフルとハーフでは圧縮符号化のアルゴリズム(コーデックと言う)が違いハーフの方が高効率化されていますので実際の通話品質は電送速度の差とはイコールでは有りません。

フルレートはVSELP方式(モトローラが開発)、ハーフレートはPSI-CELP(ドコモが開発)と言う符号化のアルゴリズムを採用しています。
また圧縮・復元に時間がかかるので音声遅延の原因になるのですがハーフレートではより遅延時間が長くなり話にくさの原因になっています。
(厳密に言うと理論遅延時間はフル・ハーフとも40msと同じなのでエラー補正による遅延時間の違いと予想しています。)

弱電地域(アンテナマーク0〜1本の場所)ではフルレート端末の方が安定して通話が出来る傾向が強く、ハーフレート端末では通話品質の劣化や干渉による通話瞬断しやすい傾向が強くなります。

現在のデジタル方式では通話品質が悪化した場合にそれを補正する為の信号(エラー補正信号・冗長ビットとも言う)をあらかじめ伝送して受信側でこの信号を利用して誤り補正しています。

このエラー訂正信号もフルレートの方がハーフレートより情報量が多く安定するようです

フルレート =伝送速度11,200bps−音声6,700bps=冗長ビット4,500bps
ハーフレート=伝送速度5,600bps−音声3,450bps=冗長ビット2,150bps

エラー訂正と言うと何だかわからないと思います。

エラー訂正で一番簡単で分かりやすい方式としてはARQ(オートマチック リピート リクエスト)が有ります。
ARQは欠落したデータをもう一度再送信してもらう方法で一番確実な方法ですが携帯電話のように次から次と音声データが送信されると再送している時間が間に合わず大幅な遅延やデータの欠落が発生する欠点も有ります。

携帯電話の場合は前方向誤り補正をするFEC(フォワード エラー コネクション・先読み方式)という方式が採用されています。
この方式はあらかじめ音声レートとは別に冗長ビットを付加して、その情報を元にエラー訂正する方式です。

冗長ビットを簡単に説明します。
まず8ビットの信号があるとします。
この情報量は2の8乗になりますので256のパターンの信号になります。
これに冗長ビットを4つ加えて12ビットの信号にするとします。
そうすると256×2×2×2×2となりますので4,096のパターンの信号となり元信号が16パターン電送出来るようになります。
つまり冗長ビットを付加する事により元信号をより多くのパターンに増やし、その中から一番エラーレートの少ない情報を選択する事によりエラー訂正を強化する方式です。

もう少し解りやすい例で説明するとデジタル信号は0と1の2つの種類しかありませんから無線伝送路でエラーが発生すると

0→1
1→0

となる事になります。

例えば
001100110001
と言う信号が
00110110001

と1ビット変更されたとするとどこにエラーが発生したのか探る手だてが無くこれではエラー訂正は困難です。

そこでひとつの0を000、1を111と3つの信号で表現させるようにします。
つまり2ビットの情報を付加する事になります。
ここでエラーが発生する確率が発生しない確率より少ない状態と仮定すると

000が伝送路を通過したときにエラーが発生した場合には

001
010
100

の3つになる可能性が非常に高く

110
101
011
111

になる可能性は非常に低い事が予想出来ます。

そこで

000
010
001
100
はすべて0と判断して

111
011
101
110
は1と判断させればかなりの高い確率でエラー訂正が出来る事になります。
この考え方はハミング符号と言い誤り訂正の基本的な考え方になっています。

PDCではFECにブロック符号系列に分類されるBCH符号と言われる方式が採用されています。
PDC携帯電話ではこのARQとFECを組み合わせた方式が採用されています。

更に訂正能力を向上させた方式に畳込み系列がありcdmaOneでは畳込み系列に分類されるビタビアルゴリズムを採用しており強力な誤り訂正能力を発揮しています。

話が大きく脱線しましたがハーフレートの欠点ばかり浮き上がってしまいましたが、その電波効率の良さから現在多くのユーザーが携帯電話を所有出来る環境をつくった事は評価しなければならないでしょう。


Q5.800MHzと1.5Gの携帯電話ってどこがちがうの?

ドコモの携帯電話でも800MHzのものと1.5GHzの周波数帯を使用したものが有り、確かにわかり難いところです。
1.5Gは1、500MHzで有り、800MHzより倍近く高い周波数を利用しています。

電波はその性質上周波数が高くなると直進性が高くなり光のようによりまっすぐ送信することが特徴です。
一方で周波数が高くなると空気中の水分などでの減衰が激しく同じ送信出力でしたら800MHzに比べ飛びにくい傾向が有ります。

その直線性が高い回折(回り込み)は起りづらくなります。
携帯電話で通話中に基地局からの直接波で交信出来ている例はごく希で、そのほとんどが反射や回折波で交信しています。

しかしながら1.5Gの電波は回折がおこりづらい為、影(通話不能)になる場所が出来やすいのです。
一方で800MHzの電波回折がしやすく少し入り組んだ場所でも通話が可能となります。

また屋内においては外壁を透過してくる電波によって交信している場合がほとんどなのですが1.5Gの周波数は800MHzと比べ木造建材ではほぼ同じく透過出来るのですが、コンクリートなどの外壁の場合透過しにくくビル内などでは圏外表示が出やすくなる傾向が有ります。(透過損が高いと言います)

   周波数MHz   920MHz 1、450MHz
木工(15mm)    2.6dB    2.7dB
石こうボード(7mm)    0.3dB    0.2dB
れんが(60mm)    1.3dB    0.8dB
コンクリート(11mm)    2.7dB    3.4dB

(参考)移動体通信の基礎より。建物材透過損。

まあ実際の受信状況はその事業者の基地局の数や配置の方により大きく依存されますのであくまでも全体的な傾向とご理解願います。

ちなみにPHS1.9Gと更に高く、また出力も弱いので建物の中での使用は難しい為、室内アンテナを設置し対処しています。

1.5Gの機種は800MHzの機種に比べ回折がしづらい事と800MHzに比べると利用者の数が少ない為、メリットとしては前に記載した電波干渉によるトラブル(品質劣化や通話切断等)はなりにくいようです。


Q6.デジタルの800MHzと1.5Gと有るけど、数字の大きい1.5Gの方が音がいいの? 

ここで言う、800MHzとか1.5Gと言うものは搬送波と言って音声信号(圧縮符号化されていますが)そのものでなく、音声データを運ぶ船(乗り物)のようなものです。
日本のデジタル携帯電話はすべてPDCと言う方式で、(cdmaOneは除く)800MHzも1.5Gもこの音声信号を運ぶ船(搬送波)が違うだけであとはまったく同じですので音声品質には違いは有りません。

よくJ−PHONEは1.5Gなのでドコモより音質が良いと思われているようですが、正確に言うとJ−PHONEは基本的にフルレート方式を採用しているのでハーフレート方式を採用しているドコモより音質が良いが正解です。

ただしドコモ800MHzの場合は都市部などの利用者の多い場所では時間帯により利用者同士の電波が干渉を起こして通話品質の劣化(音声の劣化や音声の途切れなど)を起こす場合が有ります。

最近はドコモも拡張フルレートであるハイパートークを採用していますのでこれはあまり言われなくなりましたね。


Q7.不安だからいつもアンテナを出して通話してるけど、友人に聞いたら立てなくてもぜんぜん問題無く通話出来るとの事。アンテナって効果あるの?

現在の携帯電話のほとんどが空間ダイバーシチ方式の受信システムを採用しています。
簡単に説明しますと2本のアンテナをある一定間隔離した状態で設置して、その受信状態の良い方の電波を選択していくシステムです。

電波はその性質上必ず弱い場所が出来てしまう事(波長λの1/2の間で最大電位と最低電位の場所が出来る。)や、実際の電波状態は遅延波の影響で大きく変動する(フェージング現象と言う。)為、この2本のアンテナを使用するシステムを採用しています。
つまり外に出ているアンテナ(ロッド式)とは別に携帯電話内部にF型アンテナと言うもう一本のアンテナが有るのです。
(最近はF型より棒状の誘電式小型内蔵アンテナが多くなっています。)
アンテナを伸ばしていない状態では、このF型アンテナとアンテナの先の丸い部分(ヘリカル式アンテナ)でダイバーシチ受信していますので、電波状態の良い場所ではアンテナを立てなくても問題なく通話出来るのです。

(金色の部分がF型アンテナです。)J-SH04で撮影。

ヘリカル式アンテナは棒状(ロッド)アンテナをコイル状に巻いたもので、ロッド式アンテナに比べると若干感度は悪くなります。
電波状況が悪くなると現在のデジタル方式では通話品質が劣化したりプツプツと通話が途切れ出しますので、その場合にはアンテナを立てるとロッド式アンテナとF型アンテナでダイバーシチ受信しますので受信状態が良くなり通話品質の劣化や途切れが少なくなります。
一般的にロッド式アンテナとヘリカル式アンテナの感度差は3dB程度と言われ大体半分の差です。

また、基地局に向かって反対側の手で携帯電話を持った場合にはアンテナを伸ばさないと電波が完全に頭により塞がれてしまいますのでアンテナを伸ばして少しでも基地局との見通しを確保した方が安定して通話出来ます。
身体には多くの水分が含まれていますので電波の透過損が大きいです。
移動機を購入する時はアンテナが少しでも長く、かつ後方にオフセット(傾いている)タイプを選びましょう。
このタイプは基地局からどの方向に向いていても見通しが利くので安定した送受信が出来ます。

特に髪の毛が長い場合はアンテナが髪の毛に埋没してしまいますのでオフセットが大きく埋没しにくいタイプを選びましょう。
(髪の毛も多くの水分を拭くんでいますので電波を遮断します。)

たまにアンテナにアクセサリなどを付けてアンテナがちゃんとしまえない状態で使用されている方がいますが、その状態ではロッドアンテナにもヘリカルアンテナにも給電されず送信出力が著しく低下しますので電池の持ち時間の低下と受信感度劣化の原因になります。 


Q8.800MHzの端末に比べ、1.5Gの端末はみんなアンテナの長さが短いけどなんか意味があるの?

携帯電話のアンテナの長さは、その使用している搬送波の波長によって決定されます。
ちなみに800MHzの搬送波の波長”λ(ラムダ)”(波と波の間の長さ)は約38cm1.5Gの搬送波の波長は約20cmとなります。
(波長λ=光の速度「30万Km/秒」÷搬送波の周波数「800MHz」で計算出来ます。)

この波長の電波に効率良く共振出来るアンテナの長さは一般的にλ/2、λ/4が有りますが、現在の携帯電話はその端末の小型化からλ/4が一般的です。

つまり、800MHzではアンテナの長さ=38cm÷4≒9.5cm
または、1.5GHzではアンテナの長さ=20cm÷4≒5.0cm となります。(おおまかな計算です。)

実際にはデジタルの800MHzでは上り電波(携帯→基地局)で900MHz帯を使用し、下り電波(基地局→携帯)で800MHz帯を使用していますので、この中間的なアンテナの長さを設定しているようです。

中間的な周波数を880MHzと仮定するとデジタル800MHzの場合は 

30万Km÷880MHz≒34cm
34cm÷4≒8.5cm

実際にはアンテナの材質(伝導率)でもアンテナの長さは若干変化します。(若干短くなります)

また、3/8λのアンテナ長も有り実際はλ/4のものと3/8λのものが混在していると思われます。

3/8λの場合は
34cm÷8×3≒12.7cm
と若干長いアンテナになります。

実際にはアンテナが本体に収められる事が前提になりますのでその制限内によってアンテナ長の設定は決められます。
その為、λ/4〜3/8λの間で本体とのマッチングを取っているようです。
最近は若干長めのアンテナが多く3/8λが主流になっているようです。

また、東芝のPHSで採用している方式ではヘリカル部を1/4λ、ロッド部を3/4λで設計してアンテナ収納時は1/4λで同期を取りアンテナを延ばした時はロッド部とヘリカル部の両方を使いλで設計する方式も有るようです。


Q9.ハイパートークとかEFRとか聞くけどあれって何?

ハイパートークはドコモが採用予定のPDC高音質化(拡張フルレート)の規格です。

フル接続時の音質コーデックを高音質コーデックに変更する事と網側で基地局の回線状態をモニタリングしてフル・ハーフを自動的に切り変える2つの技術を融合させたシステムです。

まず、高音質コーデックですがドコモがW−CDMAで採用を予定していたCS−ACELPを採用します。
(実際にW−CDMAではCS−ACELPは採用されず欧州規格のコーデックをAMRとして採用されました。)
伝送速度は11.2Kbpsと今までのフルレートのVSELPと同等ですが音声部分は8Kbpsとなっています。
(旧フルレートVSELPは6.7Kbpsです。)

CS−ACELPは1995年にITUで標準方式(G.729)として採用されインターネット電話(VoIP)のコーデックとしても採用予定になっています。

その音声品質ですがITU標準化時のコンテストではPHS(32K、ADPCM)とすべての条件で同等以上とかなり高い評価を受けています。
(ただし、周辺雑音による音声の劣化や音声以外の音に関してはPHSより悪くなります。)

実際のハイパートークの音質ですが私の個人的見解では極めてPHSに近い音質だと思います。
ビブラートや遅延が少なく音声の自然さではcdmaOneより上だと思います。
ただしcdmaOneはレイク受信が利くので電波状態が悪い状態や移動時はEVRCの方が上だと思われます。
エラー訂正は苦手なようで音声の歪や音声の瞬断が発生します。

ハイパートークは対応機同士の通話と固定電話・PHSとの通話と恩恵を得られるケースは限られます。
(これはcdmaOneのEVRCも同じですが。)
それからフル・ハーフの切り替えですが、基地局が一定以上のトラフィックが発生すると自動的にその後の接続はハーフレート接続になります。

一方J−PHONEは欧州規格のA−CELPを拡張フルレートとして採用しました。
音声レートは旧フルレートVSELPと同様に6.7Kbpsです。
音声品質はハイパートークと比較すると若干ロボットボイスですが弱電界のエラー訂正能力はハイパートークより良いと思います。
それから若干ですが音声の遅延も気になります。
ドコモとJ−PHONEで違ったコーデックを採用する事になりましたがドコモとJ−PHONE間の通話はハーフレートコーデックスルーが導入されています。


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