ドコモからiPHONEが発売されずシェアの低下が続いています。
アンケートによると40%位のドコモユーザーが「もしドコモからiPHONEが発売がされたら購入を検討する。」と回答しているようです。
ドコモが
iPHONEを発売しない理由は「アップルから過大なノルマを要求されるから」とか「iモードとかおさいふケータイ、ワンセグ等が乗らない」、「コンテンツをアップルに握られて、ただの携帯電話販売会社になってしまう」とか色々書かれていますが、根はもっと深いと思います。

ドコモは過去にアナログNTT大容量方式(HICAP)、デジタルPDC方式、W−CDMAと携帯電話の無線方式を開発して紆余曲折はありつつも世界をリードしてきました。
しかし、実はドコモ単独として開発してきた訳では無く過去に「ムーバ」と呼ばれた日本の電気メーカーとの共同開発でした。
ムーバは松下・NEC・富士通・三菱の4社が中心となり、ドコモを支えてきました。
ところが各社共に携帯事業の赤字が常態化となり、まず三菱が携帯電話事業から撤退します。
三菱は基幹的な携帯電話のシステムには関わっておらず、移動機の製造が主でしたので、ドコモとして大きな問題は発生しませんでした。
しかし、NECと松下(現パナソニック)はドコモにとってその経営基盤の根幹を支えるメーカーなのです。

現在のドコモ内シェアーを見ますと富士通が約30%、NECとパナ、シャープが20%弱程度で逼迫しており、この国内4社だけで90%近くを占めています。
ここにiPHONEがもし投入されるとアップルの要求するであろうノルマと他社の状況から50%位を独占するでしょう。
そうすると富士通のシェアは15%、NECとパナは10%を切ってしまうでしょう。
もし、そうなってしまうと富士通はスマホタイプで健闘していますので事業を継続出来る可能性がありますが、NECとパナは完全にドコモ依存状態なのでおそらく事業の継続が困難になる可能性が高くなります。
パナは皆さんご存知のように2年連続での大赤字となり、経営見直しの真っ最中です、サンヨーとの経営統合時に赤字が続いていた松下通信工業を子会社から統合させましたが、サンヨーの白物部門を中国のホンハイに売り飛ばしたように、今後も赤字が継続すると携帯事業も切り捨てられるでしょう。
NECも深刻です、基幹事業のパソコンがタブレット系に押され年々販売台数が縮小しており、ここで携帯電話事業も縮小すればコンシューマ系は撤退の可能性もあるでしょう。
これは富士通も同様です。

このようにiPHONEをドコモが投入すると大切なパートナーだった国産旧ムーバ・メーカーを失う可能性が高いのです。

現在のドコモのW−CDMAも無線部分はNEC、交換機はパナが担当して開発、サービス展開されてきました。
LTE(ロング・ターム・エボリューション)もドコモが中心に開発推進し3GPPにて認可され、現在の高速通信を支え世界多くの事業者が利用しています。

当初LTEは3Gと次期4Gを繋ぐ規格として「3.5Gとか3.9G」と呼ばれていましたが、ITUが「4Gと呼んで良い」と発言したので「4G」に格上げされました。

このような新しい技術開発はドコモ単体では困難です、机上の理論は出来るかも知れませんが、その理論を具体化させるにはNECやパナ、富士通の持つ開発力は絶対に必要なのです。
つまりドコモがiPHONEを採用すると、今までのドコモように「新しい通信規格で世界をリードする。」事が出来なくなり、ソフトバンクやAUと同じく「誰かに創って貰った通信方式を採用するだけの会社。」となってしまう可能性があるのです。
つまり日本国内の通信技術開発力が完全に失われる事を意味します。
日本には移動機を発売するメーカーが数社残る程度で、ドコモもソフトバンクやAUのように「ただ利益を追求するだけの通信事業者」となってしまいます。
確かにiPHONEを採用すれば短期的には利益は出るでしょうが、ドコモにだけはそうなって欲しくないと考えます。
この選択のもたらす未来は「日本携帯事業の死」だと思います。

iPHONEとて既に「5」となっており、この人気は10、15とは続かないでしょう。
それよりNECやパナ、富士通と協力してiPHONEの更に上を行く新しい通信サービス形態を構築する位の気概が欲しいです。

それこそ4社共同開発で1機種開発してみたら良いと思います、個人的には次にやってくるのは「クラウド」的なサービスだと思います。
個人のパソコンや会社のパソコン、移動機がセキュリテイを備えながら垣根なく、クラウドされた場所にLINKされて利用出来るみたいな・・・。
スマホはツイッターやFBに代表されるようにリアル的な要素が非常に高く、たぶん今後「せわしなく感じる方」が増えていくように思います。
あまり時間に束縛されずに「あぁ,あそこにあのデータ置いてあったな、今見たいけど・・・。」みたいな時にサクサクとアクセス出来るようなイメージですかね。


追記.LTEとは

LTEは「CDMA方式に対する規格」と思われている方が多いと思いますが、実は第二世代のGSMのGPRSやEDGEにも対応可能で、回線交換方式にもパケット方式にも対応したシステムとなっています。
CDMAを中心に書きますが、CDMA方式は複数のマルチパス(遅延波)を合成するレイク受信を採用していますが、合成可能な数は限定されますので、それ以上のマルチパスが発生すると通信状態が悪化してしまう欠点があり、より効率の悪いけれど安定している変調方式に切り替えますので通信速度が落ちてしまいます。
ところがこの欠点を補足出来る新しい通信方式が開発されました。
それがOFDM(直交周波数分割多重方式)です、現在の日本の地上デジタル放送にて採用されました。
それまではPSKやQAMのように「より単位時間あたりの情報量を増やす」考え方で「高速化」を実現させましたが、変化速度が速くなるとマルチパスの影響が大きくなり、急激な速度低下を発生させる問題点がありました。
そこでOFDMは「単位あたりの情報量をおとしてマルチパスの影響を防ぐ考え方をしています。
「それでは高速化出来ないだろ!」と突っ込まれそうですが、OFDMでは1伝送路の速度をおとす分、沢山の伝送路を確保して伝送させます。
例えますと、今まで「1秒間に10,000個のデーターを伝送していた」のを「1秒間に100個のデータを伝送して、それを100伝送路で送信して受信側で合成する」考え方です。
LTEでは変調方式により高速な16PSK〜64QAMを状況によって切り替え、無線方式でOFDMを採用して安定させる方式です。
それにMIME(同じ伝送路を送受信2つずつのアンテナを持たせ、複数の異なったデーターを多元化し、更に空間の多重性も利用して多元通信させる方式)を採用して高速通信を実現させました。
使用される帯域幅は1.25 3 5 10 15 20MHzを使用可能で、より帯域幅が広いほど高速となります。
(1.25と3は回線交換方式、5〜20はパケットだと思われます。)
実際には回線の状況によってW−CDMAではHSPDAと、cdmaOneでは1xEV−DOとの併用となります。

現在、自分もEモバイルでLTEを使用していますが、4〜8Mbps位のスループットが出ています、Eモバは現在15Mの帯域を使用しており、HSPDAと併用していますので「LTEに5M、HSPDAに10M」させるか「LTEに10M、HSPDAに5M」の2つの選択肢しかありません、自宅はどちらか解りませんが更に新しい帯域を確保しましたので、20M帯域を使用すれば更に高速化出来るのは間違いないと思います。
(ソフトバンクがEモバイルを傘下にしたので、不安はありますが・・・。)