平成十三年三月

● 穴主が今月読んだ本は
です。


『逆説の日本史 - 2 古代怨霊編』

怨霊とその鎮魂を軸に聖徳太子から天智、天武、聖武天皇の時代を説き明かす

古代の人は怨霊を恐れた。しかし、現代の日本の歴史家は怨霊を無視しすぎるという主張の著者が聖徳太子、天智、天武、聖武天皇の時代に起こった出来事を、怨霊と怨霊鎮魂という観点から見直し、新たな日本史を打ち立てている。本書は4つの章に分かれていて、第1章では、聖徳太子はなぜ「徳」と呼ばれるのかについて、「徳」が含まれた諡号をおくられた他の天皇の死に様から、一般に思われている意味の「徳」ではないということを指摘する。第2章では天智天皇は実は暗殺されていたという説、そして天智と天武は兄弟ではなかったという説を展開する。第3章では、天武、持統天皇と話。第4章では奈良の大仏は暗殺された長屋王の怨霊を鎮めるために作られたという話が展開される。 歴史の出来事についていままで常識と思われていたことを次々と根本から覆していくこの本は、へたな小説よりもはるかに面白い。


面白度 ★★★★
コストパフォーマンス ★★★★
感動度 ★★★
日常生活役立ち度

『中坊公平・私の事件簿』

現場でものを見て考える大切さを教えてくれる

現代の鬼平とも呼ばれる中坊さんの弁護士として扱ってきた様々な事件を本人が書き綴っている。この人が慕われるのは、扱う事件に対して自分自身が相手の人と一緒になって汗をかき、共に苦労を分かち合ったり、その解決のためには前例にとらわれず自身の頭で考えだし、それを口だけでなく実際に実行するところにあると思う。
例えば、倒産した鉄工会社の和議申し立ての時には、その工場が立ち行かなくなった原因がいい品物を作っていないことにあることに気づき、かつて自身が学徒動員の時の工場での経験から、工員に直接作業の手ほどきをし、最後にははしごを登ってクレーンの操作までする。
あるいは、あるビルのフロアを借りて営業していた店舗が追い出されることになり、その補償問題を引き受けたときは、その店主らや家族に対して座り込みをすることを提案する。
こういう現場主義で型破りな行動が森永ミルク中毒や豊島の産業廃棄物の問題を解決へと導いていく。
やはり座って考えているだけではだめで、体を動かして実際にものを見て判断することの大切さを教えさせられる。 最近、本棚にしまってある本で情報が得られるのに、本を探すのを面倒くさがってインターネットで調べていたりすることがある。もっと体を動かさなければ。


面白度 ★★★★
コストパフォーマンス ★★★
感動度 ★★★★
日常生活役立ち度
『逆説の日本史 - 3 古代言霊編』

日本人を今でも呪縛する言霊の力を認識させられる

第一章では、道鏡と称徳女帝の関係について、昔からこの2人は愛人関係であると言われてきたが実際にはそうではなく、純粋に政治的な結び付きしか無かったという説を展開する。第二章では、桓武天皇が平安京に遷都した理由を怨霊対策を軸に説明していく。第三章では、今も日本人の心を呪縛している言霊についてを説明する。ただ、言霊が日本の歴史を見ていく上で重要な役割を担っているいることは確かだと思うが、日本国憲法の話にからめるのは、飛躍のしすぎではないだろうか。穿った見方をすれば、自分のイデオロギーの主張のために言霊に引っ掻けてわざわざこの話題を出しているようにも思えてしまうのだが。


面白度 ★★★★
コストパフォーマンス ★★★
感動度 ★★
日常生活役立ち度