(2005年2月20日執筆)
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有頂天の演奏は、他では見られない特徴(の組み合わせ)を持っています。それを少し語ります。
音楽やらないヒトにはなんだかよく分からない話になりますが… いちおう自分もアマチュアミュージシャンとして多大なる影響を受けたので、いろんなことを語りたいのです。
たまに病気のように顔を出し、楽曲にアクセントを与える。
「あいあいあいあいや、今夜! だけはぁー」で一回ブレイクして止まる。
「君を抱いていたい」の後で半小節単位のフィルを4つ入れる。これでAメロ前半は5小節。1小節多い。
ノーマルでいうところの7小節目「君は汽車の中」で、サクっと間奏に入る(すなわち1小節足りない)。
しかも間奏は7拍子。
「レドシレドシ!」というブレイクを、バンド全体のユニゾンでぶつける。その後空白をあけ、サンプリングでヘンなものを鳴らす。ブレイク演奏回数は、書いたとおり2回が基本だが、1回になったり4回になったり。複雑。
それでいて、聞いていて小難しさは感じない。さらに、サビに戻ると元気なポップ。これぞ有頂天マジック。
(おまけでつけたキャッチ演奏部分は、Cm-BmM7と奇形進行。デモニッシュでありながら、かわいい。次節の素っ頓狂サンプルでもある。)
こういう奇怪なことをしていても、あくまでもポップに聞かすところが有頂天の魔力だ。
ケラの発言を、うろ覚えだが掲載する。
多くのひとに思想を届けたいなら、音楽はポップじゃなくちゃいけない。パンクのような社会解体・再構築思想があるなら、言葉は届きやすいものじゃなくちゃいけない。
ハードなだけのパンクなら、誰でもできる。真にパンクでありたいなら、音楽はポップじゃなくちゃいけない。
有頂天の音楽がパンクかといえば(一部を除き)NOだが、その思想や行動はまさに真のパンクだったと私は思う。
不協和音的な音の飛ばしかたをよく使う。ピース[コレクション]、でっかち[ジュジュマンのうた]など。後述のベースサンプル[べにくじら]では、コード展開・転調がかなりやっかいなのを述べる。
ここではまた違うサンプルとして。
「ビックリ箱を開・け・て〜」の部分がすごく素っ頓狂な響きに聞こえる。トニックはCでコードは4分音符ごとにすばやく展開してC-C-F-G。これに対しメロディは。
意外なことに、単純なミ音で、スケールを外しているわけでもなんでもない。しかし、ミを伸ばしたままFやGに展開するのは異常だ。FM7-G6というコード名はつけられるが、演奏はそれを許容しておらず、あえて外している。それが不思議な雰囲気を出していると思われる。
(注:↑はオクターブ上、↓は下を意味する。)
コードからしてキテレツで、B♭-B♭-B♭-E|B♭-B♭-E-E(IとIV#)。ホールトーン4度というところか。
トニックがシ♭なのに、ロングトーンでシのナチュラルを入れる。この緊張感、たまらない。ミも同様にスケール(基本ドレミファソラシド)から外れる。そこをあえて選ぶ。このテンション。
(再掲)こういう奇怪なことをしていても、あくまでもポップに聞かすところが有頂天の魔力だ。
ここから先は、さらに演奏関連用語が増えるので、演奏しないひとにはサッパリ分からんと思います。すいません。
ふつうのロックバンドは、ドラムには基本パターンがある。バスとスネアで「ドッパン ドドパン」など。さらにハイハットで「チッチッチッチ」と一定を刻む。それを曲を通してキープし、視聴者に分かりやすいビートを提供する。
ところが有頂天では。そういう演奏もするが、そうでない部分が多い。
フュージョンのひとたちがやるような手法。
フィルではなく、基本パターンからタムを叩きまくり。 ドラムがメロディアス。 ハイハットのわかりやすいリズムは省略。 プログレのひとたちがやるような手法。
まごうことなきタムだらけ。
Aメロ・Bメロ・Cメロ(サビ)などと展開するにつれ、大胆にドラムパターンを変える。ここまで極端なバンドは珍しい。
Aはコード展開も特異で、B♭-B♭-A-C(I-I-IV♭-II)、すべて3度なし無調(パワーコードonly)。
有頂天は、音楽の雰囲気の中心にベースを置く。コード分散和音が主だが、ときには歌うようなメロディも。
ドラムとベースがメロディアスだからこそ、ギターはsimpleにリズム カッティングに始終する。といってもギターにテクニックがないわけではない。コードの載せかた・エフェクトの掛けかた・ミュート具合、そしてリズムの選択など、かなり気を使っている。
コード展開を引っ張るかたちで冒頭音を押さえながら、ドラム+ギターとユニゾンでリズムを作る。“ロックバンド”の手法。リズムは8分の3+3+2。
エンディングのリフレインでは、ふつうの8beatにして疾走感を出す。それもこのタメとの対比があってこそ。
前述のとおり、ドラムは「ドッッド ッドッ ッッッッ ッッパッ」。タメの効いたリズム。
これに対し、ベースは疾走感のある16分の3+3+2を繰り返す。
(注:↑は上オクターブを示します。同様に、↓はオクターブ下)。
ギターは1・3表ビート頭でジャーンと一発カッティングするのみ。すると、構造はこうなる。
演奏自体は難しくないが、アンサンブルのセンスがいい。このバンド全体のグルーヴの出しかたが、実に中期有頂天(実にニューウェイブ)。
([壺]でのユニゾンは、後期有頂天(ロック的な要素を追求した時期)のスタイル。)
正直難しすぎて採譜できない。
この曲では、A・Bメロはギターなし、Cでも冒頭ジャーンのみ。シンセもピコピコ音で一定リズムを提示するのみ。すなわち、音楽のニュアンスはベースが担っている。それにふさわしい複雑かつカッコいい演奏だ。
これは演奏は一切難しくないけど、和音アンサンブルの妙の例。
すると、全体として不思議で複雑な和音となり、美しさを増す。
逆の例としては、BOIL時の[心の旅]のイントロ。ベースはトニックから動かない。ギターがI-III♭-IV-VI♭と激しく動きながら、怒涛のカッティングを入れる。これもサイコーにカッコイイ演奏の1つ。