1989年作品。#11
映画「バットマン」の監督、Tim Burtonがプリンスの大ファンで、「映画のために1曲書いてくれないか? 」と映画スタジオに招待した。実はプリンスは大のバットマンファンである。(彼がはじめに弾けるようになった曲は、TVシリーズのバットマンのテーマである)スタジオに入るやいなや、「音楽が、ボクの中に音楽が入ってくる!」と叫び、即座にレコーディングに突入したという。(←本当か? )
アルバムには[MotionPicture Orignal Soundtrack]とあるが、実際には映画にインスピレーションを受けたプリンスによる独自作品と見てよい。ジャンルは、2曲のバラードをのぞいて、ヒップなファンクに絞られており、演奏はシーケンス・サンプリングが中心。
[Electric Chair] [Vicki Waiting] [Lemon Crush]は、プリンスのベストに数えてよいクオリティを供えている。特に、[Electric Chair]のサビのメロディの動きのなさと、それに伴うハーモニーの変化の重要さには頭が下がる。この方面は、いまだに空前絶後じゃないのかなあ。ちょっと大げさか。[Lemon Cruch]のベースが、マイケルジャクソンの「スリラー」にそっくりなのはなんだろう。でも、かっこいいからそれでよい。
(余談:個人的には、[Batdance]は音楽として大嫌いだが、その意図はわかる。あれは、アメコミの展開そのまんまを音楽にしたものだ。ヒーロー紹介、敵のアジトにとらわれのヒロイン、駆けつけるヒーロー…)
この頃から、カップリングにはリミックスあるいは別ヴァージョンが増えて、未発表曲は減ることになる。当時のB面オンリーの曲は、[200Ballon] [Feel U Up] [I Love U In Me] [Sex]で、前3者はthe Hits/B-Sidesで聞く事ができる。
当時のアウトトラックには[Rave 2 The Joy Fantastic] [The Batman Theme] [Pink Cashmere] [A Man Called Jesus]が確認されている。
ゴスペルの大御所、メイヴィス・ステイプルズのアルバムをペイズリー・パークからリリースさせた。プリンスは6曲をプロデュースした。
1990年作品。#12
The Timeの復活を祝い、プリンスが彼らのための映画を企画した。が、ワーナーはプリンスも出演することを依頼し、結局「パープルレイン」の続編が作られることになった。それが映画[Graffiti Bridge]である。
ジョージクリントン、メイヴィス・ステイプルス、はては何故かテヴィン・キャンベルまで出演したこの映画、内容に関してはよい話を聞かない。
音楽の方は…これもあまりよい評判を聞かない。私自身も、ずっと「あまり好きではない」と感じていた。プリンスらしさというか、斬新さがまるでない、と。
しかし、1996年、私はこのアルバムの評価を変えた。ようやく分かった。このアルバムは、確かにプリンスの作品であり、堂々とポップをやっているにもかかわらず、大変実験的なのだ。確かにキャッチーではない。アレンジにも疑問は多々ある。それにもかかわらず、この作品を無視することは、やはり間違いだ。
リリース・イットを聞いてみよ。その絶妙なサビのずば抜けたハーモニーセンスはどうだ。
−−何もかもが、プリンスではないか。
メイヴィス・ステイプルスやテヴィン・キャンベルのすばらしい歌声だけでも聞いて欲しい。そのトラックを聞いているうちに、残りの作品の聞き方も分かってくるだろう。
シングルB面には、A面曲のリミックス/別アレンジが入っていた。アウトトラックは[Player][Soul Psychodelicide]など。収録曲の別バージョンも多い。
(余談:これ以降の作品は、すべてリアルタイムで聞いている。そのためか、これ以前のものと比べると評価軸がちと違う。これまで以上に客観視できない状態になっている。)
1991年作品。#13
新しいバンド[New Power Generation]を率いてのプリンスの第一シングルは、「今までプリンスが発表した中でも最も邪悪なのでは」と思われる[Gett Off]であった。遅いテンポで重苦しい音色のドラム、低くて音程が聞き取れないようなベース、そして男性ラッパーと女性ボーカルが割り込んでくるリフレイン…。(そのビデオクリップは大変クオリティが高い。)
だが、アルバムのふたが開けられたとき、その内容は唐突にも「一見」オーソドックスな曲ばかりがでてきたのだ。R&B、ソウル、ヒップホップ…よーく聞くとプリンス的ひねりが感じられる。でも、もっとよく聞くとやっぱりただのありきたりなんじゃないかと感じた。
悪いアルバムではない。でも、評価は非常に難しい。−−生ぬるい曲が多いが、メロ自体は美しいものが多い。でもアレンジが…えーと…
プリンスの当時のインタビューによると、「今の子供達はコンピュータやサンプラーで楽器を演奏する楽しみをあまり知らずに音楽をやっている。ボクは本当の音楽の楽しみをみんなに知って欲しくて、このアルバムを作ったんだ。」ということらしい。
(余談:この年のツアーでプリンスは日本にも来た。)
(追記:2003年02月02日(日)19:00)
10年経った今だから、冷静に明確に言える。このアルバムの音楽は最上質だ。綺麗なメロディを丁寧にアレンジし、展開構成も練り、演奏家もボーカルも質がよい。
それにも関わらず、このアルバムはファン・評論家ともに一般に評価が低い。理由はこんなふうに考察できる。
princeはproducerでもあるのだから、こんな工夫をするべきだったのではなかろうか。
この3つの工夫をすれば総スカンは避けられたはず。
ひそかに思うのだが、chicagoやisley brothersの新譜としてリリースされたならば、大ヒットしたんじゃなかろうか。実に惜しい。
焼き直し問題に関しては。上記thunderは論外としても。いろいろ惜しいところ。
この程度は、他のアーティストなら問題にすらならない範囲の話だと思う。ただ、プロモート側の戦略が《prince自身は常に新しいものを繰り出す》だったからなあ。これはprince本人の意思じゃなく、たとえば渋谷陽一の欲望がいけないのかも。
当時のシングルB面はA面のRemix物が多い。一応B面オンリーの曲は[HoneyPoney] [Call The Low]の2曲だったと思う。
アウトテイクは、[School Yard] [Sprit] [OpenBook]等がある。ペプシのCMソング[Uh,Huh!]もリリースされていないな。
新人「カルメン」のデビューアルバムを作っている。セクシーな姉ちゃんである。[adore]が入っているらしい。
マルティカのアルバムを手伝ったのもこの頃か。
1992年作品。#14
NME(NewMusicExpress)に、プリンスに隠し子との記事が載った。その直後のリリースされたのがシングル[SexyMF]である。この記事も、プリンスサイドからの広告だったらしい。
さて、このオスメスラッパマークの「読めない」アルバムだが、前作とは逆の意味で評価が難しい(私にとっては)。どこを割っても「プリンスっぽい」イメージのネッチョリ音楽で、それが逆に意図しすぎな感想になってしまうのだ。
評価を放置します。私が成長したら、がんばって書きます。
(余談:ちなみに、このアルバムにはもうロージーケインズは参加していない。彼女のソロアルバムの企画を、プリンスが潰してしまったという話も聞く。なんてこったい。)
この頃のアウトテイクはよくわからない。
翌年、恐ろしいニュースが届いた。プリンスが、「今後レコーディングは行わず、ライブ活動のみを行う」という宣言を出したのだ。
古いプリンスファンならば、これはただプリンスの虫の居所が悪いだけ、あるいは何かの広告? と思うだけだろう。でも、当時のマスコミがそれを許さなかった。(プリンスが自分の発言の効果におびえたといううわさも聞くが、これはホントにただの噂だろう。)
それに落ちを付けるかのように、次の発言が届いた。
「ボクは改名する。その名はo)+>だ。」
がーん、読めないよ、プリンス! 私が思うに、改名すれば、またレコーディングしても嘘をついたことにならないと考えたのだろう。本人は、「心の中でlovesexyがそうしろと告げたのだ」といっている。
(余談:当時はこれが何と読むのかでひと騒動だった。NMEが「あれはvictorと読むんだ。分解してごらん!」というと、それがプリンスの発言だと誤解されて、日本で報道されたりもした。)
そして、プリンスはガンガンとプロデュース活動に精を出した。EWFに一曲送ったし、(SuperHero! この曲はかっこいい!)ジョージクリントンの[HeyMan...SmellMyFinger]にも一曲送った。メイヴィスの[VOICE]も半分くらいプロデュースした。
(余談:このメイヴィスのアルバムにはどうもロージーのアルバム用の曲と思われるものも含まれている。また、CATのアルバム用に用意した[The Man Called Jesus]も入っている。[Positivty]の酷いリミックス版も入っている。これだけは許せない。[House In Order] [UnderTaker]などプリンス本人もライヴで公開している曲も入っている)
そして名前について、情報が公開された。「あれは、読まないんだ。読むことでイメージを作られたくない」おいおい何だよそりゃあ。結局プレスではTAFKAP(TheArtistFormerlyKnownAsPrince)と表現されている。
プリンスは精力的にライブ活動を続けた。このツアー以後は二度とプリンス名義の曲は演奏しない、と何かの雑誌に載っていたが、いまでも、いくつかのプリンス名義の曲は演奏されている。
そんなこんなで、プリンスの過去をまとめるアルバムがプリンス名義でリリースされた。
1993年作品。#15
これは、一応ベスト版なのだが、タイトルが示すとおり「ヒットした曲」集であり、(ホントにヒットしたんか? )つまりはシングル集である。(シングルで発売されていないのはadoreだけかと思われる)
3枚組で、3枚目はシングルB面集である。1枚目と2枚目はばら売りされているが、ほとんどのヒトが3枚目が目当てなのでは? 未発表曲も3曲入っている。[Nothing Compere with U]のライヴ版も入っている。
B面集は貴重だ。プリンスのB面は、アルバムに入らなかったがよい曲、というのが多い。下手すると、良すぎてアルバムに入らなかったんじゃないか、というのまである。
[ScaretPussy] [AnotherLonelyChristmas] [God]は私にとってプリンスのベストパフォーマンスである。
(余談:この頃に、復刻版シングルがたくさんでた。ロングバージョンを聴いてみたいひとなどには朗報であっただろう。)
この頃のアウトテイクは、何が何だかもうわからない。ライブでやたらと新曲を出しているし、嘘つきプリンスは新曲のレコーディングもしているのだ( o)+>だから嘘はついてないんだろうか)。[1/4& 1/8] [BrackMF] [Johny] [Dorpamin Rash Suit]など。
[I'll Do Anything]というこれまたプリンスにぴったりなタイトルの映画のサントラを手がけたが、結局リリースされなかった。[Rest Of My Life] [Make A Believe] [I'll Do Anything] [Don't Talk 2 Strangers] [Little Pill] [Empty Room] [There Is Lonely] [Be My Mirror]など。
一部は後に[Girl6]や[The Vault]に収録される。
この頃プリンスは、生まれて初めてバレエを見た。そして感激して、自分の曲をバレエに使ってくれ!と頼み込んだあげく、それは実現している。なんとベイベェアイアムアスターなどでバレエをやったそうだ。なんてこった! 又、新曲として[Dark] [dolphin]などが提供されたはず。これは2度目のバレエの方だったかもしれない。