[priceについて]

Around The World In A Day〜Lovesexy


* Around the World in a Day

1985年作品。#7

プリンスは、突然「二度とライヴをしない」という宣言を出した。そして「梯子を探しに行く」「四月にも雪は降る」といい残して雲隠れした。今思えば、たんなる次のアルバムの宣伝でしかない。このように、プリンスはスキャンダルとマスコミを上手に利用する。

そして、発表されたこのアルバムは、ビートルズ的サイケデリックの匂いがする作品で埋められていた。

しかし、基本的に見事なプリンスポップで、即効性は薄いかもしれないが、愛すべき作品が多いと思う。特に、タイトル曲でおこなわれた「ずっと同じ2小節のドラムパターンを繰り返すが、途中で奇数小節のフィルブロックを入れてループの1・2を入れ替えることで新鮮なグルーヴを保つ」という手法に、私は強く注目する。イントロが中東風のソロであるとか、そんなことはどうでもよい。メロディとハーモニーとアレンジが、どこから割ってもプリンスである。(私はマニアである)

なかなかヒットしたポップソング[Raspberry Beret]も見逃せない。キュートなメロディーを持つこの曲は、もし「2番」の部分がおしゃべりに変身していなかったら問題なく大ヒットだっただろうと思う。(私は「1番」のあのキャッチーメロディーを もっと大事にして欲しかった。)

人によっては「あまりにパープルレインから離れた作品。本人の同じ物を作らないという意志がうかがえる」等といっているが、わたしは、このアルバムには、パープルレインの改良作であることを示す面があまりにも多いと思う。[Baby,I'm A Star]を踏襲した[America]等を指すまでもなく、タイトル曲で[Say Purple, If U Wanna DANCE!]と叫んだあとに[I Would Die 4 U]の間奏部みたいな短いキャッチーフレーズが飛び出してくるのが聴けるので、疑いようがないと思うのだが。どうしてだれも言わないんだろう。

(余談:このアルバムで初めて生のサックスが使われた。)


intermission

*B面・未発表曲*

当時のシングルのB面はアルバム未収録曲ばかり。[Hello] [Girl] [She's Always In My Hair]で、The Hits/B-sidesで聴ける。

*献曲*

シーラEに[A LOVE BIZARRE]という強力なファンクを送っている。スターカンパニーとして、バンド[THe Family]のデビューアルバムを、プロデュースという名目で、相変わらず全部演奏したらしい。後にシンニード・オコナーが歌って大ヒットした[Nothing Compare of U]が収録されたこのアルバム、私は聞いていない。ただ、メンバーにエリック・リーズがいるのが気になる。彼は後にプリンスを常にバックアップする見事なサックスプレイヤーである。また、クリア・フィッシャー・オーケストラとの共同作業もこのアルバムから始まった。

*次のステップ*

プリンスは、第2作目の映画[Under The Cherry Moon]の制作に取りかかる。白黒の古いコメディを意識したもので、主役はプリンスとジェローム・ベントン。作品中に、プリンスによる音楽演奏の部分はない。はずだ。

このサントラが[Parade]。

一般に、映画の評価は低い。−−死んでしまった主人公が天国に登るシーン(エンディングロール)で、天使役のリサ&ウエンディ率いるThe Revolutionが演奏する「マウンテン」が流れる。このシーンは見物らしい。あと、2曲(? )程アルバム未収録曲が聴ける。

*さらに次のステップ*

この頃プリンスは、偽名[CAMILLE]で一枚アルバムを作っている。テープ操作でプリンスの声とは違って聞こえるように操作されている。

[Semi-A-Collia] [Housequake] [Strange Relationship] [Fell U Up] [Schockadelica] [Good Love] [If I Was Your Girlfriend] [Rock Hard In A Funky Place]

このアルバムは結局発表されなかった。しかし、ほとんどの曲は何らかの形で発表されている。

カーミールは、その後プリンスの作品の中で度々現れることになる。


* Parade

1986年作品。#8

映画[under the cherry moon]のサウンドトラックという名目が着いているが、実際は、ほとんど独立したひとつの作品として楽しめる。大々的にホーンセクションが取り入れられたこの作品は、プリンス独自のファンク観が前面に押し出されている。いくつかの曲では、クリア・フィッシャー・オーケストラが贅沢なストリングスを入れている。

[New Position]はあまりに新鮮。[anotherloverholenyohead]に代表される暗めのポップな方向も、抜群におしゃれだ。[Girl And Boys]など、ジェイムス・ブラウンを思わせるファンクもある。

このアルバムは、私にとっては「プリンスの代表作」で、「ひとつの到達点」。にもかかわらず、プリンス本人は「パレードは失敗作だ」と公言している。なぜだろう。

私はヴォーカルジャズ/ソウル風の[Do U Lie? ]が全作品を通してかなり上位で好きだ。あまりにプリンスな歌詞を、童謡のように素直で美しいメロディに乗せたこの曲が好きだ。

「僕のことを気にしてくれる? 僕のために泣いてくれる? …キミは嘘をつくの? 」

大ヒットシングル[kiss]が収録されている。これもどうして売れたんだかよくわからない。アメリカ人のヒットセンスってのは、日本人とはかけ離れているんだろう。

[kiss]は、曲はただのR&B/ソウルだが、極端に音数を減らしたアレンジになっている。最初のタームではドラムとエレピしかならない。しかも、エレピも右手でリズムを刻むだけだ。その代わりに、ヴォーカルが何重か入っている。最終的にはマリンバとギターが1本づつ入ってくるが、それも一番最後のタームだけだ。

悪い曲だというわけではない。しかし、どうしてこんなに実験的なポップが大多数に受け入れられるんだろうか。不思議だ。


(余談)

ちなみに、この曲は、もともとは「マザラティ」というバンドにプレゼントされた曲だった。レコーディングはマザラティによって普通のアレンジで行われたのだが、プリンスが「やっぱりこの曲は僕がリリースするよ。それにこのアコースティックギターとベースはじゃまだね。」等といってマスターテープを大幅に編集して、自分のものにしてしまったんだそうな。ああ、プリンス


この年のツアーはプリンス最良のファンキーなものになったそうだ。


intermission

*B面・未発表曲*

当時のシングルB面オンリーの曲は[Love Or $] [Alexa De Paris] [She's Always In My Hair]である。

*次のステップ*

当時発売されなかった2枚組アルバムがある。[DREAM FACTORY]と題されたこのアルバム、収録曲で判明しているのは[Strange Relationship] [Wonderful Ass] [Joy In Repetition] [If U Breake My Heart 1 More Time] [A Place In Heaven] [Movie Star] [Witness] [Can't Stop This Felling I Got] [Databank]。またそのほかにも[3 o'clock]というバンドのために[Neon Telephon] [We Can Funk] [Girl O' My Dreams]が録音されたことが明らかになっている。−−いったい明らかになっていない録音マテリアルは何曲に登るのだろう? 

これをボツにして、次は3枚組のアルバム[Crystal Ball]を作成。[CAMILLE] [DREAME FACTORY]の曲の取り直しを含むこの新作は、リリースにトラブルがあり、結局2枚組に絞り直した末、翌年[Sign 'o' the Times]として発売された。

:1998年、[Crystal Ball]というアルバムがリリースされる。ここでの未発表曲と新曲をあわせたものになっている。)

この段階でのボツ曲には[The Ball(舞踏会? )]がある。これは12分に渡る組曲のような曲らしい。この一部は後に[Eye No]としてリリースされた。

そして、バンド[The Revolution]は解散した


* Sign 'o' the Times

1987年作品。#9

この2枚組アルバムに収録されている曲は、ほとんどデモテープと言っていいほど、楽器が入れられていないアレンジのものが多い。それがかえってプリンスのねらいを浮き立たせている。

ジャンルは、独自路線ものから、相変わらずの王道R&R、ソウル、ファンクが所狭しと並べられている。そして、すべてにしっかりと「プリンス」の烙印が押されている。好き嫌いはあるだろうが、すごい作品であることは否めない。JBを進化させたような[Housequake]やフランク・シナトラばりの[Slow Love]もよい。

特に[If I Was Your Girlfriend]に注目したい。ソウルを奇形にしたかのような白玉アレンジと、プリンスの(カーミール名義だが)ファルセットのアドリブがすばらしい。そして、次のような歌詞を吐き出す。

「僕が女の子だったら、キミと親友になれただろうか。 僕が女の子だったら、キミと別れずに上手くやれただろうか。」

あまりに暗いこの歌は、凄まじくプリンスの本質であると思う。

彼の最大の特徴は、そのファンクではなく、そのロックではなく、その性表現ではなく、そのポップであり、悲しみであり、かなえようがない欲望であると私は主張する。この[If I Was Your Girlfriend]は、そのひとつの証明だと思う。

また、長く疲れる(正直に言って)このアルバムの最後の曲[Adore]には実にすばらしい仕掛けがある。長い長い(分数はそうでもないが、気分的に長く感じる)この曲のラストは、プリンスの「僕の愛を、僕のよいところのすべてを、僕の時間を君にあげる」という美しい宣言を経て、すべての楽器のフレーズがスケールを上昇して、文章では表現できないくらいに美しい不協和音を作り出して終わる。−−私はこの部分を聞くと「天国に魂が昇っていくときにはこんな音がするんだろう」と感じるし、天使が祝福を与えに来てくれたような感じもする。大げさな話だが、これほど美しい部分はそうは出会えないと思う。

「僕はいつの時もキミのそばにいる。キミも僕のそばにいて」

彼がどんな風に変わってしまっても、このとき受けた感銘を、ボクは忘れない。


intermission

*B面・未発表曲*

当時のシングルB面オンリーの曲は[La,La,La,He,He,Hee] [Shockadelica]で、どちらもThe Hits/B-sidesで聴ける。

*献曲*

プリンスは、ジル・ジョーンズという女の子のアルバムに数曲を提供。[Mia Bocca] [G-Spot] [All Day, All Night] [For Love] [Baby, You're Trip]実際は演奏もしているようだ。少なくとも[G-Spot]では、プリンスベースを確認できた。彼女はキレイだが、歌はそれほど上手くないのでつまらない。

*次のステップ*

この年のツアーの音源に、ペイズリー・パークでツアーを再現したステージアクションをかぶせた作品が映画[Sign 'o' the Times]として劇場公開される。この架空の理想のライヴは、かなり高い評価を受けた。

アレンジは、基本的にアルバムのものを踏襲しながら、よりゴージャスに音が加えられたものになっている。マット・ブリスタンとエリック・リーズのペット/アルトコンビの働きがかなり大きい。

現在はヴィデオで買うことができる。(しかも安い。)

余談:[U Got A Look]だけはプロモーションヴィデオ(CDと同じ音源)。)

*さらに次のステップ*

プリンスは、「真っ黒に印刷されたジャケットのアルバム」を自分の名前を入れずにリリースするはずだったが、直前にキャンセルした。キャンセルの理由は、契約問題などいろいろな説があるが、やはりプリンスが「歌詞が他人に対して攻撃的すぎて、 自分の本来の意志からはずれすぎている」と判断したためだろう。

そのジャケットが真っ黒なことから「ブラック・アルバム」と呼ばれているが、実際にはアルバムタイトルはない。

余談:結局1994年にリリースされたのだが、その間に山のようなブートレッグ版がリリースされ、500万枚を売り切り、世界で一番有名な「存在しない」アルバムとなった。)

キャンセル後すぐに再びレコーディングに入り(もっとも、プリンスは年中レコーディングしているのだが)、恐ろしいことに、4ヶ月で次のアルバムがリリースされた。


*Lovesexy

1988年作品。#10

まず内容以前に、ジャケットのプリンスのヌード写真が問題になった。−−これで示したかったのは「自分は神の前にすべてをさらす、身につけているのは十字架だけ」であるらしい。この事を理解して指摘したプレスは、アメリカではひとつだけであったらしく、そのライターはプリンスからディナーに招待されたほどだ。(それほど、プリンスは自分を理解してくれる人を求めている。)

さて、内容だが、ほとんどの人に「プリンスの代表作」として知られているのではないだろうか。それにも関わらず、作品はこれまでのものとは随分異なる感触の、独自のポップファンク路線である。音的にも作りにも、派手さが加わった。音数が増え、エフェクトも派手で攻撃的な物になった。特にドラムのゲートリバーブがきつい。−−もっともその根底には(今までと同じく)暗さ・あいまいさが隠れている。

このアルバムの内容は、いろんな意味で《出来過ぎ》だ。たとえばeye noやalphabet st.(前半)の構成論的に見ると、あまりの無駄のなさと音楽としての純度に度肝を抜かれる(いつか詳細にレビューしてみたい)。だからこそ、「その意図を伝えるにはmixバランスがおかしいのではないか?」というような疑問も複数見受けられる。ある意味で完璧であり、ある意味で4ヶ月でリリースされてしまったアルバムだとも言える。アルバム全体をまとめる思想や技巧はパーフェクトで、個々の演奏も質が高い。しかし、もしPrinceがいつもの作り方をしたならば、ここから音の絞込みや削除を行ったのではないかと思われる。

別の側面だが、歌詞には泣いた。[Eye No]における宗教観、[Anna Stesia]における孤独と求める力、[eye wish u heaven]での慈愛(アガペー)、[Positivity]における倫理観。これらは一度読んでみて欲しい。

「僕が11(elevn)だと思うものを君が7(seven)だと言い張っても、それでも僕は君に天国(heaven)が訪れて欲しい。君に愛を、君に天国を。」

また当時のツアーは、プリンス史上最大規模で、大がかりな物だった。回転する円形ステージと数々の照明システム、ステージを映し出す大きなスクリーン…そして充実したバンドメンバー。


intermission

*B面・未発表曲*

当時のシングルB面オンリーの曲は[Escape] [Scarlet Pussy]で、どちらもThe Hits/B-Sidesで聞く事ができる。

アウトトラックには[Crucial] [Paris] [Sexual Suicide] [Welcome 2 The Ratrace]が確認されている。






ご意見ご要望及び苦情はE-MAILにて

e-mail to : jy3k-sm#!#!asahi-net.or.jp