第14話 カラシラサギ
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| 「○○川にカラシラサギがいましたよ」。鳥たちの渡りの季節、殆ど竜飛崎の住人と化すEさんが教えてくれた。Eさんは青森県の鳥見人の中では1、2を争う酒豪としてその名を轟かせているが、とりあえずそのことは今回の話と何の関係もない。 カラシラサギである。この鳥との出会いはいつも唐突だ。秋の道東で、夏の徳島で、偶々出会ったことがあった。遠目に見れば、足の短い小さなシラサギ。図鑑で調べてみると、朝鮮半島や中国南部といった限られた範囲にしか分布しない希少な鳥らしい。彼らには国境が無いから、風が吹けば気の向くままに日本まで飛んでくることもあるだろう。僕のあったカラシラサギはそんな鳥たちだったに違いない。Eさんの見つけた白い鳥も、きっとそういう鳥なのだろう。 竜飛崎へ向かう途中に目的の川はあった。これまで気にも留めなかったその川は、地元の方によればとりあえず覗いておくべき場所らしい。言われてみればウミネコやオオセグロカモメが河口を飛び交っている。ツバメやイワツバメも川面をスイスイ飛んでいる。セグロセキレイやハクセキレイが川に転がる岩に止まって歌っている。どこを見ても鳥の姿が目に入ってくる。なかなかいい川のようだ。 お目当ての白いサギはすぐに目に止まった。そもそも津軽にはシラサギが少ない。たまにダイサギを見かけるくらいで、アマサギなど南方のサギは珍鳥の部類に入る。だから、サギがいるだけで風景にどこか違和感を覚える。まるで間違い探しでもしているかのように。 Eさんから1羽と聞いていたカラシラサギは2羽に増えていた。仲良く連れ添って飛んで来たのかと思っていたら、「ゴアーッ」と叫びながら2羽は喧嘩を始め、結局1羽はどこかに追い払われてしまった。数少ない仲間同士、仲良くすればいいのにと思うけれど、相性の良し悪しがあるのは人も鳥も変わらないのだろう。 河原に腰を下ろし、この川を独占したカラシラサギをじっくり観察することにした。コンビニで買ったサンドイッチを頬張りながら、浅瀬で魚を追いかけるサギの動きを目で追う。これまで近くから見たことが無かったので気付かなかったが、なかなか眼光の鋭い鳥だ。首を伸ばしたり縮めたり、全身で何かを表現しているような鳥の動きにしばし見とれる。 細い首をすっと伸ばしたまま、鳥がこちらに近づいて来た。一歩また一歩、ゆっくり歩いて来る。立ち止まり、こちらを凝視している。鳥と視線を共有するその時、海からの風がピューと吹いて、白い冠羽がたなびいた。(ああ、かっこいいなあ・・・)。長い髪の鳥を見たのはこれが初めてだった。鳥は不意に僕から目をそらし、足下の水面を嘴で突いた。嘴の先には銀色の魚がキラキラと輝いているのだった。 |
| (2004/5/9) |