トビ

 初夢に見ると縁起のよいもの、一富士、二鷹、三ナスビ。本日、2000年の元旦、一も二もなく鷹見に出掛けた。夢見るは一鷹、二鷹、三も鷹だ。場所はいつもの干拓地。コミミズク会いたさで通い始めたが、出現率があんまり低いので、いつの間にか目的が鷹に変わってしまっている。よくある話だ。
 朝靄の中、干拓地の電柱にポツリポツリ大きな影が止まっている。西暦2000年問題対応のための出勤明け、眠くてぼんやりした目にはなんだか良く分からない。念のため双眼鏡で確認する。「トビか・・・」トビも鷹の仲間だが、鷹界ではあまり人気がない。それは、他の鷹たちのように勇壮な狩りをすることなく、死肉や残飯をピーヒョロロと輪を描きながらのんびり探しているからだろう。電柱のトビは、お天道様が高く上り、上昇気流が発生するのをじっと待っているようだった。

 とりあえず馴染みのコチョウゲンボウに新年の挨拶を済ませ、倒れるように車の中で眠る。小一時間ほど経ったろうか、寝ぼけまなこにドバトの群を追いかけるハヤブサの姿が映った。ハヤブサは50〜60羽ものドバトの群にたった1羽で突っ込んだ。群がザザーッとまっぷたつに割れる。ハヤブサは執拗に攻撃を続けた。群から離れたドバトが彼の標的となった。
 ハヤブサが降りた方向に急いで車を走らせる。電柱の上でハヤブサは悠然とドバトを解体していた。すごい力で食いちぎるのだろう、腸がだらんとぶら下がっている。そこに何を思ったかトビがやってきた。電柱上のハヤブサに向かってまっしぐら。図体はトビの方がはるかに大きい。びっくりしたハヤブサは解体したドバトの内蔵を電柱上に残し、飛び去ってしまった。トビはピーヒョロロと嬉しそうにドバトのはらわたを食べている。「トビめ・・・」ハヤブサの食事を観察し損ねてしまった。

 その後、天気はどんどん悪化。ノスリが1羽飛んだ以外、鷹は全然飛ばなくなった。黒くたれ込める雲の下、珍しく凧揚げをしている親子連れがいる。今日が元旦だったことを思い出した。「そういえば凧は英語でkite、トビも英語でkite・・・案外正月らしい鷹はトビだったのかもしれないなあ・・・」、などと少し反省しつつも、再び襲ってきた睡魔に耐えきれず、泥のような眠りに落ちていった。 
(2000/1/1)