テッケイ(タイワンコジュケイ)
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1920年頃から全国各地で放鳥されたキジの仲間のコジュケイは、中国原産の帰化鳥で、春になると「チョットコーイ、チョットコーイ!」と元気な声で鳴き始める。林の中、小さな群で暮らしている彼等には、山をウロウロ歩いていても滅多に出会うことがない。 ある年の春、僕は六甲山系のとある沢筋でネコヤナギの写真を撮っていた。河原には真っ白な綿毛をつけたネコヤナギがわんさか生えている。川の流れる音と、つぶやくような小鳥たちの声を聞きながら、春の陽射しに輝くフワフワの綿毛を撮っていると、なんとも幸せな気分だった。小さなエナガがカップルで時折やって来ては、ネコヤナギに集まる虫をついばんで行く。なかなか思うようなところに止まってくれないけれど、それはそれで良かった。春の河原でぼんやりできる時間の方が大切だ。 帰り道、山道をてくてく歩いていると、脇の笹藪で音がする。ガサガサ、ガサガサ・・・。腰を屈め、双眼鏡で藪の中を覗く。ガサガサ、ガサガサ・・。小太りした鳥が団体で歩いていた。1羽、2羽、3羽・・・全部で5羽。「コジュケイ?」それにしては変だ。顔が青い。コジュケイといえば赤茶色の頬をしているに決まっている。もう一度双眼鏡で確認する。やっぱり青い。「あぁ、テッケイか!」 神戸市近辺にのみ生息するテッケイ(タイワンコジュケイ)は、台湾原産のコジュケイの亜種。赤茶色の頬をしたコジュケイとは対照的に、テッケイの頬は真っ青で、病人のように顔色が悪い。はるばる台湾から運ばれ、神戸で放たれたテッケイの末裔が、目の前でウロウロしている。「そうか、そうか、おまえがテッケイか!」初めて出会うテッケイは、こちらに気づいているのかいないのか、ゾロゾロと道を横切っていった。「へえ・・・」神戸で暮らし始めて2年目の出来事だった。 |
(2000/3/5) |