カケス


 冬の里山を散策していると、針葉樹の林から「ギエーッ」とびっくりするような声を出して飛び出す鳥がいる。カラスの仲間のカケスだ。カケスは、そのしわがれ声に似合わずシックな装いで、肩の少し下辺りの羽毛はコバルトブルーに輝いている。この羽を山で拾った時は、何だかとても得した気分だった。黒と青のストライプの羽。これが何枚も重なって、青い肩のワンポイントになっているのだ。
 普段見るカケスは頭頂が白く、白目がギロッとした鳥だが、北海道で繁殖しているカケスは顔全体が赤茶色の鳥で、ミヤマカケスという亜種である(写真左はカケスで、右がミヤマカケス)。それほど観察の経験があるわけではないが、本州のカケスは愛想無しのぶっきらぼうで、ミヤマカケスは比較的愛想の良い鳥という印象を持っている。北海道でミヤマカケスが向こうから近づいて来たのには驚いた。広い空の下で育つと、鳥まで大らかになるのかもしれない。

 カケスに限らず、北海道と本州で羽の模様が違う鳥は結構いる。エナガもそうだし、ゴジュウカラもそうだ。津軽海峡にはブラキストン線という動物相の境界があって、北海道と本州の動物相がここでくっきり分かれると何かの本で読んだことがある。鳥に限らず哺乳類でも、ヒグマは北海道にしかいないし、ツキノワグマは本州にしかいない。キツネだって、北海道はキタキツネで、本州はホンドギツネだ。

 竜飛岬から眺める北海道は目と鼻の先で、タカや小鳥だってホイホイ渡っている。ここをカケスが渡らないとは何とも不思議な話だ。きっと、カケスにとってブラキストン線は越えるに越えられない高いハードルなのだろう。そういえば秋晴れの日、北海道を飛び立ったミヤマカケスが津軽海峡にくっきり見えるブラキストン線の手前で悔しそうに引き返していったっけ。そうそう、クロールしていたヒグマもブラキストン線でターンした。そう!キタキツネはブラキストン線に掴まって一休みしてた・・・いや、本当ですよ、本当。

(注)ブラキストン線は正直者にしか見えません。 
(2000/12/10)