台所通信16  日本のお料理が一番好き!



   ここに来てよく「アメリカの食べ物は好きですか?」というようなことを聞かれる。そもそもアメリカの料理がなんなのかわからない。いろんな国の文化がごちゃ混ぜになっているのがアメリカだから、ハンバーガーをはじめ、おばあちゃん直伝のラザーニアもアメリカの味である。だったら、アメリカの食べ物は日本でもおなじみだ。そう答えるとみな目を丸くして驚く。日本人は何を食べてると思ってるんだろうか?

 口の悪い人は日本の文化を「猿真似文化」と言った。日本の文化は確かに中国や朝鮮や西洋の文化を取り入れてうまくアレンジして出来ている。料理に関しても古今東西の料理を実に巧みにアレンジしている。日本風の料理の方が本家本元よりおいしいと思う。少なくとも日本人には。ここまで来ればたとえ猿真似と言われようと立派なものだ。

 ラーメンが中国のものだと思っている人は多いだろう。でも、ほとんどのチャイニーズレストランでは日本でおなじみの味のラーメンは食べられない。醤油味だの味噌味だの塩味だの、あれらは日本の文化の一片なのである。我が家では麺だけチャイニーズグローサリーで買い込んで、スープは何時間もかけて作らなくちゃいけない。それでもおとうには「ダシがいまいちだなー」と言われる。(せめてスープといっとくれ)

 ウスターソース。これは西洋のもんだと思っていた。確かにWorcestershire sauce というのがあって、これがウスターソースの語源に違いないのだが、野菜をどっさり使った日本の物に比べると鼻と脳天にツンと来るような刺激的な味である。おとうは身震いしながら「料理に使ってくれ」と言った。アメリカのキッコーマンからでている「ステーキソース」なるものが近いけれど、おとうは日本のソースを欲しがる。とんかつにはこれじゃなきゃ!とおとうは言う。なるほど!で、今は1993年ものの「カゴメ中濃ソース」を使っている。ワインと同じでソースもある程度古い方がいいのかって?お店でこれが一番新しかったのよ!

 がきんちょがケイラの家にいったとき、ケイラが冷蔵庫から「カゴメソース」を取り出してきたそうだ。「これ日本のでしょ?これが一番おいしい!」ほうら、おいしいものはおいしいのよ。今度ケイラにとんかつをご馳走してあげよう。きっと大喜びさ。