ナシ



 私は果物のナシが好きである。私はちーがお腹にいたころ、無性にナシがたべたくなって困ったことがある。ナシは水分をたくさん含んでいて体を冷やす。夜たくさん食べるとトイレが近くなってしまうし、そのころ漢方薬を飲んでいて、医者から水分を控えるように言われていたのだった。妊娠中特定の食べ物に執着することがあるのだけれど、ちーの時はナシだったわけである。(この執着は経験した人はおわかりのことと思うが、非常に強い欲求だ。のんの時は「りんご」で、おとうが2ヵ月近くアメリカへ出張したのを良い事に私はリンゴをたべまくった。生協で毎週7キロリンゴを注文していたのだ。凄いものであろう!)

 さて、ナシの話に戻ろう。アメリカでナシと言えば洋梨の事をさす。日本の洋梨は「ラ・フランス」が代名詞のように有名で高価な物だけれど、ここでは数種類のナシがとても安く売られている。我が家でもそのまま食べたり、ケーキに入れたりしているが、日本のナシが食べたいもんだ、と思っていた。コーリアン・グローサリーや、日本食料品店には売っているけれど、黒く変色したものしかみたことがない。それに高い。もっと頻繁に通って入荷してすぐの物を買えるといいのだろうけれど・・・。

 昨日、のんとみーをつれて近くのグローサリーに行った。果物を物色していたら、何とあの懐かしい日本のナシが売っているではないか!「ナシ!ナシ!ナシ!」と私は叫んでしまった。のんもみーも感激しない。彼女らの記憶にはナシは存在しないのだ。不届きなやっちゃ、と思いながら、3個だけ買うことにした。こぶりだけれど、これで1ドル79セントだった。学校から帰ってきたちーとかおに、私はナシを見せた。ちーは「ナシ!!!!!!」と絶句した。結局感激したのは私とちーとおとうだけだった。子供が外国に移り住んだとき、母国の風物を記憶に留められるのは7才くらいになってないと難しいって事かな?さすがにナシは含蓄のある果物だ、と感慨に浸った私である。

 味はなかなかの物だった。物心ついて初めて食べたみーは「なんかすっぱい」といって、喜ばなかった。でも私の父が「喉の薬」と称して食べるジャムなら、きっと大喜びするだろう。アメリカではアップルソースが好まれているけれど、ナシで作る方がきっと旨いと思う。誰か商売始めませんか?