ぽぽこ うちの子になれてよかった
パンを焼いていた。ちーとかおが「いつものんとみーだけで作って、ずるい!」と言ったから、学校が休みだった月曜日にどっさりこねたのである。醗酵が終わる、という時になってローリーとクリステンが遊びに来て、がきんちょはヤードへ行ってしまった。げーっ、ちょっと、母一人でこんなどっさり焼けないよー!といってもだれもはいってこない。母は一人でクリームパンとチョコレートパンとウインナパンとカレーパンを作る羽目に陥ったのであった。
ちーはローリーとクリステンが帰った後も家にはいってこなかった。会社から戻ったおとうが「ちーがどっかのおばさんと話している。」と不安そうに言った。窓からみると、ぽぽこママだった。「じゃ、大丈夫だな」おとうは言った。ぽぽこママの顔くらい覚えておいて欲しいものである。
ちーはぽぽこママと1時間近く話し込んで、やっと帰ってきた。ちーはぽぽこが拾われたいきさつを聞き出してきたのだ。
ある日、ぽぽこママが両親と一緒に高速道路をドライブしていると、前を走っていた車が突然ドアをあけ、犬をほうり出した。犬はうろちょろしてぽぽこママの車にも近づいてきた。ぽぽこママも両親も既に犬を飼っている。これ以上は飼えない。犬を振り切って走ろうと思った。でも、交通事故にあったらかわいそうだ。もう、ほっとけない!ぽぽこママは車を路肩に止め、犬を連れて帰った。それがぽぽこだった、というのだ。「車から追い出されたとき、足を引かれたように見えたんだけど・・・。」ぽぽこママは言ったそうだ。実のところぽぽこはしっぽを振らない。自分でしっぽが動かせないのだ。きっとその時しっぽを車に引かれたに違いない。感覚は少し残っているようだが、「今度、レントゲンを撮って調べてみましょう」と医者が言ってたっけ。
ぽぽこが捨てられたと知って、がきんちょは一層ぽぽこがいとおしく感じられるらしい。おとうは「フィラリアにかかってるから捨てたのに違いない」と言った。そうかも知れない。でもそうだったら余計うちの子になれて良かったと思う。病気が治って、がきんちょに好かれて(近所の子供達もとてもかわいがってくれる)。フェンスの下を掘っては外へ行ってしまうので、最近は繋ぎっぱなしでかわいそうなのだけど。
ちーの話に夢中になっているとおとうが叫んだ。「腹へったー!メシにしてくれ!」ん、もう!今日は忙しかったからこのカレーパンでも食べてよ!ちーの話は犬のジャックがぽぽこママの家に来た訳に移っていた。話し込むと止まらないのがこの母子の悪い癖なのだ。