台所通信10  お餅が食べたい!



 お餅なんて食べ飽きた!という向きには恐縮だが、お餅の話である。

 最近はお米屋さんで餅を買う家が多いと思うが、おとうの実家では、毎年大きな臼と杵で餅をつく。器械でついたものとたいそう違う。実に旨い!私の母なぞはあまりの美味しさに「こんなおいしいお餅が食べられるなんて、良い人と結婚したもんだわネー!」と訳の分からない褒め方をしていた。

 コロンビアにも1軒だが日本食料品店があるので、その気になればお餅だって手に入るのだ。暮れに味噌を買いにいったときも「餅」を買おうか、迷ったのである。だが、おとうの実家のあのお餅を知ってしまった今となっては、パック餅に大枚をはたく気にはなれなかった。でも、お餅が食べたい!がきんちょも言う。「お餅が食べたい!」我が家は正月早々から「おもちがたべたい!」の大合唱になったのであった。

 さて、4児の母はこういう時「よっしゃ!」と頑張れなくては勤まらない。「要するに、もち米をふかして叩き潰せばいいのさ!」ちょっと過激だけれど、間違ってはいない。おとうが会社に出かけてからお餅作りにとりかかった。

 義母は前の晩からもち米を水につけていた。今回はその時間がなかったので、蒸し器ではなく炊飯器を使うことにした。おこわのときだって、炊飯器で炊くときは水につけないですぐに炊くもんね。なんちゅういい加減な主婦であろうか!もち米のばちがあたらなきゃいいけど・・。

 もち米は4カップほどあった。研いで、ほぼ同量の水で炊いた。ボールに炊きあがった米の3分の1を入れる。1度では多すぎるし、失敗すると取り返しがつかない。残りのは保温しておく。いきなりすりこぎで叩いたのだけれど、すりこぎじゃ小さすぎて均一に潰せなかった。(うちのすりこぎはとても小さいのだ)失敗だ。

 私の実家もおとうの実家も関東地方で、のし餅を四角く切って使うのだが、この失敗作は丸餅ならぬ「粒つぶいびつ餅」になってしまった。残りのもち米の半分をボールにあける。今度は最初にプラスチックカップの腹を使って潰すことにした。しめしめ、思い通りだ。つぶれたところで、今度はすりこぎで叩く。綺麗なお餅だ!誰か褒めてくれ!3回目はちょっと疲れが出て粒が残ってしまったけれど、がきんちょは大喜び!母も大満足!帰ってきたおとうは「粘りがない」と不満を言ったけれど、いいのいいの、あたしゃ、幸せよ!