それでもサンタはやってきた  '96サンタはごきげんななめ



 サンタクロースが日本に定着したのはいつごろなのだろうか?私が子供のころは今ほど騒がなかった。サンタがいるか、いないかでもめることもほとんどなかった。クリスマスツリーのそばにプレゼントがあったけれど、誰の仕業かはなんとなく分かった。これがクリスチャンホームに育った人だと、もっと違っているかもしれないが。

 4年生のベッキーはプレゼントをくれるのは両親だ、と思っているそうな。何を欲しいのかしつこく尋ねるから。うちのがきんちょはサンタは実在すると信じている。クリスマスを挟んで家族揃って旅行をしたときも、家に帰るとプレゼントが置いてあった、というのがその根拠である。

 2年生のかおは授業でサンタに手紙を書いて、しばらく廊下に貼っておいた。ある日、かおは「北極でサンタの手伝いをしているこびとの一人から返事が来た」とすっとんで帰ってきた。鉛筆で書かれた手紙には、かおの欲しがっている「くまのプーさんの大きな縫いぐるみ」を「努力してみる」などど書いてあった。クラスの黒板にはクラス宛てにサンタからの手紙が貼ってあった。一目でそれが誰の筆跡か私には分かった。3年の担任のミセス・クインの字に間違いない。そして究めつけ、サンタがプレゼントを家の中に運んでいる間、トナカイが食べる餌まで貰ってきた。学校ぐるみでなんつう事を!

 クリスマスイブの日、おとうは会社から電話をかけてきた。「うちのがきんちょは今年良い子だったか?そうじゃないだろ?いやだぞ、俺は。プレゼントなしで反省させるべきだ。」という。確かに、がきんちょに反省すべき所はいっぱいあった。だけど、大人だってたまにはおとぎ話の中に浸ってもいいじゃない?来年サンタを素直に信じているかどうかは分からないんだし。

 子供のころ、おとぎ話の本を読んでは、その空想の世界に自分も飛び込んだようなきがして、ワクワクドキドキしたものだ。そういう気持ちが持てなくなって久しい。クリスマスはそんな昔の感覚を思い出させてくれる。何を欲しがっているかを探りだし、子供に見つからないようにプレゼントを用意し、それを見つけた時の反応を想像し、ワクワクドキドキ。

 「車のトランクにあるからな。後は知らねえぞ。」嫌々買い物をしてきたおとうはそう言った。翌朝、プレゼントを見つけた瞬間のがきんちょの表情をみせてあげたかった。クリスマスの朝は大人も早起きしなくっちゃ駄目なのよ!