英語がわからない モグラは上達が遅いのさ



 おとうの両親の滞在も終盤である。 義父がすこし咳がではじめたのと、バスルームのトイレが時々詰ってしまうこと以外は順調だ。義父の場合は「ワインを飲んで、ソファでうたた寝をしたのがいけなかったのだ」と義母が言うのだけれど、気温の急激な変化は体調を崩しやすい。慣れないことばかりで疲れもしたのだろう。

 ここの印象を尋ねたら、自然がいっぱいある、静かだ、渋滞がない、物価が安い、と良いことがいっぱい出てきた。でも「英語が・・・・」なのだ。義母は盛んに言葉の通じない不自由さを強調する。がきんちょが最初どんなに苦労して、努力してきたか、わかってもらえればうれしい。私なんぞ、モグラ生活で苦労が少ないからか、まだまだ、英語で情けない思いをしているのだ。

 みんなで動物園の中のバーガーキングで昼食をとっていたとき、がきんちょがスプライトの味がおかしい、と言い出した。味見をしてみると、甘くもないただの炭酸だった。すぐ取り替えてもらうべく、持って行った。「スプライトを注文したのに、炭酸だ。かえてください。」かかりの女の子はペラペラ言っている。「そうだ炭酸だ。他の炭酸がいいのか?」と言うようなことを言っている。「注文したスプライトがほしいんだ」と言うのに、またペラペラ。「ないから炭酸にした」と言っているようだ。客に了解をえないまま、注文を変えて良いはずがない。と思ったところで、バーガーキングがペプシ系のソフトドリンクを置いていることに気がついた。じゃあ、スプライトはないはずだ。セブンアップと言わなきゃいけなかったのか?でも、そういう時はたいていコークはペプシ、スプライトはセブンアップ、メロウイエロウはマウンテンデューと言い直して注文を聞き返してくれたのだが・・・。「スプライトじゃなくて、セブンアップと言わなければいけなかったのか?」それに対してもペラペラとよくわからない。「ない」と言っているようにも思えてきた。「セブンアップはないってこと?」これにもペラペラ。困っていると、一部始終を隣で聞いていたおじさんが「セブンアップはないそうだ。他のを注文すれば良い。」と言ってくれた。

 自分の英語が拙いのは良く承知している。それでも、無事に過ごしていられるのは、会話する相手の配慮によるところが大きいのだ。それに改めて気づかされた。この日の女の子の対応は、注文のときに「スプライトは扱っていない、それに代わるセブンアップも品切れだ、」ということをまったくいわなかってのだから、悪かったとしか思えない。でも、聞き取れない自分が情けないことこのうえない。どっと疲れが出て、悲しかったよ!

 ま、いいさ。だって助け舟を出してくれたおじさんの言葉はちゃんとわかったのだから。主婦はこんなことじゃ、めげてらんないのさ!