VOLUNTEER OF THE YEAR
先日私のところに学校から招待状が届いた。ボランティアのために朝食を用意するから来てほしいというものであった。しかしながら、朝食は家で食べるものの方がはるかに健康的でうまいのだ。どーしよっかなあと考えていると、ミス・クインが「必ず来てちょうだい。絶対来てちょうだい。お願いだから来てちょうだい。」とかなりしつこい。「私のお願いよ。」などといわれれば、しゃーない行くしかあるまいと決心した。
その日集まったのは20人ほど。登録されているボランティアのほぼ半数である。朝食は牛乳(普通の牛乳、ローファット、スキムミルク、チョコレートスキムミルクから選べる)、ジュース(リンゴ、ブドウ、オレンジ)、トースト、ソーセージ・キャセロール(スタッフィングに小さく刻んだソーセージが入っていて、その上にチーズを乗せてオーブンで焼いてある。ちょっとしょっぱかったけれど、まあまあの味。)、そしてコーヒーが用意してある。「コーヒーとビタミンCをいっしょに取るのはいけない!」とどこで聞き齧ったか、おとうがよく言っているので、ビタミンCが添加されていない事を確かめてからリンゴジュースを選んで、トースト一枚、キャセロールをほんの少し、プレートにのせた。ミス・ディーがコーヒーを入れてくれて、食べはじめる。
だいたい食べ終わったところで、ミス・ディーが話を始める。ボランティアへの感謝とねぎらいである。で、「今年は、教師のアシスタントをはじめ、たくさんのことに協力してくれた人をVolunteer Of The Yearとします。Winnerは、ミセス・サイトーあなたです!」???なんのこっちゃ!?とっさに注目を浴びてしまう私は何なんだ?賞状を渡され、プレゼントを貰う。朝食のプレートをミセス・ケリーが「プレゼントをあけるのに邪魔よね。」といって、片付けてくれた。中身は学校のロゴ入りのトレーナーだった。さらに全員にVolunteerのピンが渡された。小さなリンゴがついていて、とてもかわいい。
はっきりいって、私よりずっとずっと忙しく、重要な仕事をボランティアとしてやっていた人たちがたくさんいる。ただ、私のようにあっちにもこっちにも手を出すというのは珍しかったかもしれない。それだって、4人のガキンチョが揃って同じ学校に行っているという現実から来る事で、私は結構楽しんでやっていたに過ぎない。もしかして、英語がよくわからないのに熱意だけで押し切ったという度胸のよさに目を留めてくれたのだろうか?餞別の意味もあろうか?
言葉の壁を考えて、どうしても引っ込みたがる私を、ボランティアになるように勧めてくれたのはガキンチョたちであった。母が学校にチョコチョコ顔を出しているのを嫌がりもせず、むしろ喜んでくれた事は私を大いに力づけた。たとえ私が訛りまくった下手な英語を使っていても、ガキンチョは全く気にしないようだった。それがうれしかった。学校に行って、私が役に立っているという事実がうれしかった。私にとっては、忘れられない、素敵な経験であった。
さて、おとうは私がボランティアすることに「英語ができねえのにみっともねえなあ」だの「そんなめんどくせえもん、やめちまえ」だのと言っていたのだが、ここに来て「チョコチョコ学校に顔を出せるような場所に家を見つけた俺の手柄だな」と言いはじめた。ま、そういうことにしておいてあげよう。