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 引越しが日に日に具体的に迫ってくるようになった。この間は引越し業者のオジサンが来て見積もりと日程の打ち合わせをした。こうなると、嫌でもここから出ていかなくてはいけないという実感が沸いてくる。ガキンチョたちも「このおウチはこのままキープしておけない?」などと言い出すようになった。ガキンチョたちが引越しにどうしようもないほどの拒否反応を示さないのは、私がとても気を使って説得した成果であると思ってきたのだが、実はそういうわけでもないらしい。彼等は「じきに戻ってこられる」と思っているのだ。「またベッキーのお隣になりたいから、このおウチはそのままにしておこうよ」とノンが言う。ここがレンティングハウスだと知っている姉たちは揃って「どうしてこのおウチ買っとかなかったのよ!」と責める。「そうすればここをしばらくの間誰かに貸しておけばすんだでしょ?」この家は6人家族には小さすぎるというと「構わない!」と。同じ年頃の子どもがいて、こぞって仲良しで、毎日キャーキャー遊んでいるんだもの。気持ちはわかるけれど…。カオはブリッタニーとマーディーに「フォー・セールのいいおウチがあったら教えてね。」と頼んであるそうな。おやおや。

   このあいだ、ベッキーのお母さんであるキャシーに引越しのおおよその日程を報告した。彼女は東京に帰るとおとうの通勤時間が1時間ほどになること、それでも1時間ですめば恵まれている方だという事、住宅事情、環境などなどたいていの事は理解している。で、「ミスター・サイトーが満員電車での通勤なんぞ、耐えられるわけがない!10分足らずで会社に行けて、お昼ご飯に帰ってきた人が、そんなことがまんできるはずがない!」という。同感である。「少なくとも3年するとチーが高校生になる。そうしたら、私の家から高校に通えばいい。」キャシーが言うとそばで聞いていたベッキーは大喜び。では、チーに料理を教えとこう!と私が言ったら、キャシーは目を大きくして「じゃ、お掃除も!」と大笑い。

 子どもたちにとっては、環境の変化は悪い事ばかりではない。慣れるまでは大変だとは思うが、違いを知ること、あるいはそれでショックを受ける事も彼等の今後の長い人生を考えれば大きな意味を持つことになろう。4年間をアメリカで立派に生きたことによって、これからの生活の場を世界中から選択できるほどの視野の広さと度胸を持ったといって過言ではない。私たち6人が日本に帰ってどんな事を感じ、どんな選択をしていくのか。これは私自身にとっても非常に興味深い事である。そしてここで知り合った人たちにもその事を伝えたい。

 おとうはこのホームページを日本向けとアメリカ向けの2本立てにしたいと思っているようである。実際には「俺は忙しい」などといって、特に英文からは逃げるに違いないから、英語はガキンチョが頼り!という事になろう。(あー、ここで「私にまかせて!」といえない自分がなさけない。)ガキンチョが英語を忘れないためにも良い事かもしれない。「日本の学校の勉強は、そのうち慣れて追いつくようになるから、適当にしとけばいいよ。そのかわりホームページ頼むね!」と無責任な父親は言うかもしれない。でも、実際に英語版のホームページはリクエストの多いものでもある。

 別れの話が出るたびに私たちは言いあうのだ。
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