Kit



 夏休みにバニキュラという名前のハムスターを預かったのは2年前のことであった。さて、チーのクラスは動物園と異名をとるほどいろんなクラスペットを飼っている。それらのペットは休みが3日以上続くときは誰かが家に持ちかえって世話をする事になっている。「家が散らかっている」「宿題をするというお約束が守れなかった」などとこざかしい理由をくっつけては「Take homeしたい」というチーの申し出を却下していた。が、明日からの春休みはどこの家でもどこかしら遠出をするらしく、なかなかボランティアが見つからないようだった。ミセス・プールが3種類も4種類もの、小さいとはいえ動物たちを家に持って帰って面倒をみるなんてえのはカワイソーだということで、我が家で一つ預かろうという事になった。もちろん「おとうさんに聞いてごらん」と私は言ったので、許可したのはおとうだということにしておこう。

 チーのクラスに行ったとき、そのケージは何度も見ていたのだが、実際車に積んでみるとものすごく大きいし、とんでもなく重いのだ。暖炉のレンガの上にケージを置き、ちょっとふたを取ってみる。デカイ。「こいつこんなにでかかったっけ?」私は思わず叫んだ。メジャーで図ってみると尻尾の先端まで90cm以上あるのだ!「毎日ケージから出して運動させなくっちゃいけないんだよ。」ゲゲゲッ。天井の高い我が家で、壁を這い上がって届かないところにいっちゃったらどうしてくれるんだ?バニキュラが逃げて大騒ぎになったことを思い出す。「リーシュはないんかいな?」私が聞くと「あるわけないでしょ!」とつれない返事。

 ガキンチョたちは「かわいい!」「あっ、こっち向いた!」「ねえ、こっちにも来てよ!」と口々に騒ぎ、ふたを開けてはなでている。「触ってもいいけど、ふたをきちんと閉めてよね。必ず閉めてよね。絶対閉めてよね。完璧に閉めてよね。」と私はしつこく言っている。じっと見つめてみた。確かにかわいいといえるのかもしれないし、吠えたり、うるさい音を出さないのだから、良いペットと言えないこともない、かもしれない。

 Kitという名前のイグアナである。