母とは因果なもので、チーを生んでもうすぐ12年になるというのに、その間朝まで一度も目を覚まさずにぐっすり眠れたためしがない。だいたい2時間ごとに目が覚める。これは新生児の授乳の間隔である。ミーの断乳からして5年も前に済ませているというのに、いやになってしまう。昨夜もまず夜中の一時半に目を覚まし、おとうが寝言で「もういらない。食っていいよ。」というのを聞き、ガキンチョの寝相が悪いのを誰に似たのかとしばし眺めた。で、ミーの足の裏が妙に熱いのに驚いた。これはまずい!と思ったが、案の定明け方4時にはものすごい熱を出していたのだった。

 本人もまもなく目を覚まし、尋常ではない体調に気づいたようである。頭が痛いとべそをかいてしまった。昨日まで元気だった子供が急に熱を出すというのはインフルエンザの可能性も高いわけで、こういう時、市販の薬でしのぐにはちょっと注意が必要である。もともと、私は熱を下げるために薬を飲むというのに抵抗がある。熱は必要だから出ているのであって、やたら下げればいいというものではない。ただ、あまりにつらいようなときは一服盛ってやり、少し元気が出たところで栄養と休息を取らせるのがいいと思う。

 最近日本でインフルエンザが猛威をふるっていた際、「特に子供に鎮痛解熱剤を投与するときは、アスピリンの含まれていないものを選ぶこと」という表現をTV-JAPANで耳にした。インフルエンザや水疱瘡の時アスピリンを服用すると稀にライ症候群といったか、重い病気になることがあると4年生のヘルスの教科書にも書いてあったっけ。アメリカでは子供でも知っているべきことなのだ。

 ミーは5時に薬を飲んだ。鎮痛解熱剤の代名詞ともいえるタイレノールで、ビンのラベルに表が張ってある。体重と年齢に応じて何錠飲むかがわかるのだが、注意書きには「なるべく体重を参考にして量を決めるように。できなければ年齢で決めること」と書いてある。ミーの体重をキログラムからポンドに換算する。2錠である。2錠は年齢で見ると2〜3歳となっている。ミーはあと10日もすると6歳なんだけれど…。

 やはり体重で量を決めるのがいいに違いないと私は確信する。薬を飲んで、ミーは一時間ほど眠った。目を覚ますと、熱もだいぶ引き、元気も出て、本当に熱があったのか疑いたくなるほどだったのだ。1時半からろくに眠らなかったので、私の方が病人のような気分である。ミーはその後、5時間ほどでまた高熱が出て、それからさらに2時間でまた我慢できないほどの頭痛や関節痛で唸ることになったのだった。

 そういえばこっちに住む日本人の知人が言っていた。「こっちの薬って効くわねー!飲ませるとよく寝てくれるし、助かるわー!」ミーは2回目の薬を飲んでしばらく眠り、今起きたところである。さすがに遊ぶほどの元気はないようだが、しっかり食べて、しゃべりまくっている。あれ以上多く薬を飲ませていたら、きっとごそごそ起きだして遊び始めていただろうなあ。ところで大人の薬には体重別の表がないんだけれど、こっちのでかい人と同じ量飲んでいていいのかなあ?ちょっと不安を覚えたのだった。