Tacky Day
こういう単語があることもアメリカにくるまで知らなかったんだけれど、先週の金曜日はTacky Dayだった。わざと変な身なりをする日なのだ。Tacky means funny.ミセス・スミスは幼稚園の子供たちにこう説明した。
実際どんな格好をしていたかというと、恥ずかしがり屋はせいぜい左右違う靴下を履くくらいだったし、ジャケットを裏返しに着ている子も多かった。女の子は髪にカーラーを巻きつけた子が目立ったし、チーのクラスのキーネンという男の子はハザーに借りた教会用のドレスを着て、右足が緑、左足が赤のタイツを履いていた。ハイヒールでモンローウォークとくれば、なにやらアブナイ雰囲気。彼はにこにこして学校中歩き回っていた。注目されるのが好きな目立ちたがりは本当にとんでもない格好をしてくるものなのよ。
我が家は、最近ひょうきんさが目立つようになってきたチーが(とはいっても、まだ学校じゃあおとなしくしているらしい)かなり前からこの日を楽しみにしていた。一番恥ずかしがり屋のカオは「ヤダ!」と乗り気ではなかったが。その日の朝、普段なかなか起きないのに、いつもより15分速く声をかけるとみなすっと起きてきた。チーは髪をカニの飾りのついたゴムでポニーテールにし、それを5つの三つ編みにした。途中にいろんな飾りをつけ、最後はトカゲの飾り。Tシャツにネクタイをし、ズボンは長さの違うものを3つ重ねて穿いた。靴下は片方が紫、もう一方が黄緑。カオもノンも髪にトカゲやカエルやカニをたくさんつけた。ノンはさらにエプロンを前と後ろにして行った。ミーはチーが赤ん坊だったころ使っていた母手作り(私のことよ)のひざ当てをして行った。もちろん靴下は片足ずつ違う色。
こういう行事で生徒以上に楽しそうにするのは教師たちである。いつもはこざっぱりとした、品のよい服装の先生たちが、手持ちの服の組み合わせを変える事で思いっきりおかしな格好をしてくる。かえって、センスのない人にはできない芸当であろう。
下校するとき、おかしな格好をしてこなかった子供に校長のミセス・ライトは「月曜日思いっきり変な格好をしていらっしゃいな。」と声をかけていた。冗談でしょ?!と私が言うと「ねえ、すばらしい学校だと思わない?私、楽しくって!!!」とにこにこしている。彼女はハイソックスを片方はきちんとひざまで上げているのだが、もう一方は足首のところでだぶつかせたまま履いている。鈴のたくさんついた帽子をかぶり、ちぐはぐな色の洋服ではっきり言って、とんでもない格好である。私は「本当にすてきな学校。大好きよ!」と抱きついた。
学校からの帰り道、カオがつぶやいた。「日本の学校じゃあ、こういうのなかったよね。」彼女自身は恥ずかしがってさほどおかしな格好はしていかなかったのだけれど、それなりにこの日を楽しんだのだろう。日本の小学校で先生がこんな格好をしたら、「超ムカツク」とか「さむーい!」なんてばかにされるのかもしれない。それ以前に通勤電車に乗れないって。