九九は続く
九九は表を作る事からはじめている。2の段、3の段、5の段を皮切りに表をうめさせ、その後でフラッシュカードに移る。表は小ぶりのを作っていっぱいコピーしたから、必要なら毎回でも新しいのをうめさせることにしている。はっきり言って、足し算が指を折ってでないとできない子には、表をうめること、つまり3の段なら3とび、4の段なら4とびの足し算を繰り返しさせるのが大事だと思う。
中にはふざけたヤツがいて、(甘えっ子で、おしゃべりで、あちこち気の散るヤツ)そいつにYou're funny.といわれると「おまえに言われたかないぜ!」といいたくなるのだが、彼は実は頭の回転が速いのだ。15−7を計算するのに、フラッシュカードでいくつか前に出てきた14−8から「14−8=6でしょ。元の数がひとつ増えて、引く数がひとつ減るんだから、15−7=8だね。それに14−7が7だから8だもんね。」などという。14−7くらいは考えつくけれど、15−7から考えるのは、私だったら混乱して瞬間的にはイメージできない。彼は関心のある事を集中して考えるようにするといいと思うんだけどなあ。もっとも計算の一つ一つにあーでもないこーでもないとべらべらしゃべるのは勘弁して欲しいが…。
以前から成績が悪いのは、頭を使わないことが大きな原因だと思っていたが、確かに工夫をしない輩が多いのだ。ほとんどの子は九九の計算をたとえば3の段なら、3,6、9、12、15、18、21…というふうに指を折って順番に数えていかないと答えられない。3×9は指を追って9回目にようやく出てくる。3×10が30だということから27を出すという方法を教えて、その他の掛け算でかける数が9の時に応用できた子は多くない。ミセス・ギャンブレルのクラスの子で、私に算数の指導をしてくれと直訴してきた子がいた。彼の名前は私のリストには入っていなかったため断っていたのだが、ある日、勝手に廊下に出てきてしまった。「僕にも教えてよ」。で、ためしにフラッシュカードだけさせる事にした。確かに私が助けている子達に比べると、早く答えられる。が、やはり×1から順番に覚えているらしく、×9になるとため息をつくのだ。彼に×10から元の数を引いたほうが早いと教えると「へえ、頭を使うと早くできるようになるんだ!」と感心したようにつぶやいた。そう、計算が速くなると遊ぶ時間が増えるんだよ。そう言うと彼はニコニコして教室に帰っていった。子供にとって計算練習はめんどくさいだろうけれど、私にとって子供たちと過ごすのは楽しい。さらに彼らの役に立っていれば幸せなんだけど。