電報



 日本に電報を打つ事になった。訃報を聞いたのが土曜日の夕方。ちょうど友人の通夜に出かけようとしているところだったので、通夜を済ませてから電報を打つ事にした。

 KDDがアメリカにいながら日本語で電報を打てるサービスをはじめたと知っていたので、今回はそれを利用しようと思っていた。これまで何度が弔電を打ったことがあるが、電文は英語だった。電話で電文をオペレータに伝えるのは英語の苦手な私には大変な事で、それ以上に日本語をローマ字で打ってもらうのは大仕事だ。とにかく一つずつスペルを言わなければいけない。しかもA as in Apple, Z likes Zebraなどと言わなくてはならない。電文を伝える前に、相手の住所と名前を言うわけで、それだけでも嫌というほど手間暇がかかる。さらに、意味不明の電文が届いては困るということもあって、今までは英文にしていたのだった。

 日本の葬式では弔電が紹介される。私が打った英文の電報も(すべておとうの名前で打っている)司会者が読んだということだが、英語のうまくない人の場合は、かえって迷惑だったかもしれない。今回義父は「出来れば日本語で」と言っていたので、KDDに期待をしていたのだ。

 インターネットで申し込めるのなら、おとうが自分で出来るはずである。おとうもその気だったが、葬儀の日には間に合わないという事で、オペレータに直接頼まなくてはいけないことが判明した。ここで、早くもおとうはリタイア。私がKDDに電話するとテープがかかった。なんとお休みである。ファックスは受け付けるが取り扱いは月曜日になるという。葬儀に間に合わない。次にAT&Tに電話をする。ここも時間外でオペレータはいない。仕方なく、今まで何度も利用してきた24時間営業の電報会社へ電話する。

 こちらの電話番号を告げると、すでに私の名前も住所も登録してあった。その分、時間の短縮が出来た。電報を受け取る人の名前と住所を告げる。これが厄介。住所の場合、アメリカでは、番地、ストリート名、市名、郵便番号(これをいうと自動的に州がわかる)をいうのだが、日本の郡とか町というのはなんていったらいいんだ?ちょっと考えて、番地の後に町と地区の名前を言って「これがストリート名みたいなものよ」と説明し、郡を「市だと思ってちょうだい」といい、県名を「ステートにあたるものよ」と言っておいた。

電文は英語であるし、弔文である事を言っておいたので、すんなり聞き取ってもらえた。オペレータのお兄さんは最後に私にお悔やみの言葉を言ってくれた。この会社はちなみにAmerican Telegramというのだが、3年半ほど前、アメリカへ来てまもなく、私が英語の電話に慣れていない頃にもとても親切に応対してくれた。電話でチェックを使って支払いを済ませるというのもその時オペレータに教えてもらったのだ。

 確かに慣れた日本語で電報が打てればそれは楽だけれど、いざという時にお休みだなんて、あきれてしまう。もう少しの努力を求める次第である。