またまたミーの遠足
ツリー・ファームに遠足に行った2日後、ミーたちはまた遠足に行った。今度はダウンタウンの劇場にバレエを観に行ったのだ。暇をもてあましているわけではないけれど、数少ない専業主婦である私は、また付き添いを頼まれた。うれしくて、ホイホイ引き受けた次第である。この日は3年生のボランティアの日で、朝から計1時間ほど引き算をさせ、そのあとで遠足の付き添いに行くことになった。
去年の今ごろ、そういえばノンも遠足でバレエに行った。学校からの手紙には服装について特に書いてなかったので、いつもどおりの格好でノンは出かけた。が、みんな教会へ行くようなおしゃれな格好をしていたのだそうである。そりゃ、考えてみればバレエはオペラなどクラシック音楽のコンサートと同様、欧米では正装して出かけていくもんである。だけどねえ、ガキンチョの遠足までそんなこととは思わないじゃないの。多分先生は口頭でchurch clothsとかnice clothsという表現をしたんだと思うけれど、ノンは聞き漏らした(聞き取れなかったのかも)のだろう。ノンが気まずい思いをしたのかと気になったが、本人は「大丈夫、平気だよ」とかえって母を気遣いように言ったものだ。
今年は、その思い出が強烈に残っていたので、こちらからミセス・スミスに確かめ、ミーのおしゃれ着にアイロンをあて万全に用意をした。付き添いの私も着慣れないスーツ(カオの幼稚園の卒園式に着たヤツ)を引っ張り出して着た。10時15分、今回はちゃんとバスも来て、ミセス・フォルクナーとミセス・ポースの2クラスが1号車、ミセス・スミスのクラスは2号車に乗り込んだ。この日のバレエは、幼稚園や小学校低学年の為に上演されるもので、同じ年格好のガキンチョたちがウヨウヨ。ボーっとしていると迷子になる、しっかりしているつもりでも迷子になりうる、という恐ろしい状態であった。とにかく前の子供と後ろからついてくる子供を一遍に見るために私はなれないパンプスでほとんどカニ歩き。せっかくおしゃれをしたのに、なんてえこった。
この日の出し物は「赤鼻のトナカイ」である。私達は最前列で、子供たちは舞台のヘリばかりが良く見える最悪の場所であったが、私はダンサーたちの表情や息遣いを楽しめた。日本ではトナカイとサンタクロースはよく知られているが、ミセス・クロースはあまり馴染みがない。ところがアメリカでは、サンタクロースがでてくる時には必ずといっていいくらいミセス・クロースも登場するのだ。(サンタがそりに乗って出かける時にキスしたりすんのよ。)絵本でみるミセス・クロースはサンタと同世代の、つまりおばあさんなのだが、この日の舞台では、超ミニスカート(ほら、バレエといえばツキモノのあの衣装)で、メガネこそかけてはいるものの若々しい女性なのだ。私は「サンタのオジイサンがピチピチの後妻をもらって」というような下世話な想像をしてしまう。最後には雪がどさっと降ってくるという設定で、最前列の私達は当然、雪がどっさりと降りかかり、口の中までニセモノの雪まみれになったのであった。劇のあとは、みんなで歌を歌ったり、バレエのステップを説明付きで見せてくれたり、小1時間はあっというまに過ぎてしまった。中には3時間もかけてこの公演に来ている子供たちもいるのだ。このくらい楽しくなくっちゃ、わりにあわないよねえ。
予定では12時15分に学校に戻る事になっていたが、実際に学校に着いたのは1時。その日は12時30分からノンのクラスのプロジェクトを手伝う事になっており、とにかくノンのクラスに向かった。プロジェクトは「ジンジャーブレッドハウス作り」。実際にはジンジャーブレッドではなく市販のクラッカーを使ったのだが、スーツでは手伝えない。「5分で戻ってくるね!」言い残し、走って家に帰る。パンプスで走れるのは通勤で鍛えている日本女性くらいだと誰かが言っていたが、専業主婦だってそれくらいはできるのよ。着替えてトイレに寄って、それでもきっかり3分でノンのクラスに戻った。忙しいけれど、とっても楽しい1日であった。