ノンの誕生日会 1998

 ノンの誕生日会を開いた。ミーが熱を出していたり、サンクスギビングの休暇があったので、実際の誕生日よりも2週間遅れてのパーティーである。本当はスケート場でしようと思っていたのだが、予約がいっぱいで取れなかった。2年生にもなるとマクドナルドっていうのは幼稚すぎるし、ゲームセンターでは大人の目が届かずに責任が持てない。結局自宅でやるしかなかった。

 普通土曜日は補習校でつぶれてしまうのだが、年に2回大学の試験の為に日曜日に振り替えられる。その土曜日の昼時にパーティーをすることにした。お昼を一緒に食べるのは、大変そうに思うかもしれないが、「ここはアメリカよ」と割り切ってしまえば、ピザをオーダーするか、ホットドッグを用意するだけなので簡単なのだ。ピザはエナが食べられないというので、ホットドッグにした。おとうは「葉っぱがないなあ」と文句をいったけれど、こっちの子、特に低学年は、葉っぱなんぞ食べやしないの。

 最近何と言ったらいいか、私は元気が出ないのよ。疲れが取れないっていうか、体が重く感じるというか…。おとうは「実際に体が重いんだろう」などと言うのだが、ビタミン剤を飲んで元気を振り絞っている。そんな状態なので、家の片づけも進まず、パーティーの朝は生きた心地がしなかった。片づけだけではなく、ケーキ作りも今回は手を抜いてしまった。「汽車ポッポケーキ」というノンの希望だったのだが、細いロールケーキを20人分作る元気が出ないのだ。「きっとみんな残して捨てちゃうよ」とチーが言う。確かに2年生はホットドッグを食べてポテトチップをつまんでそのあとケーキなぞ食べられないに違いない。こっちの子は「もったいない」という意識にかけている。なんでもポイポイ捨てるんだもの。汽車ポッポケーキをそんな風に捨てられたら悲しくなってしまう。で、市販のロールケーキを使うことにしたのだ。

 その小さなロールケーキは12個入りで99セントの安さ。ホント作るのがバカバカしくなる値段である。信じられないくらい甘いけれど。車輪にはリング状のシリアル。いつもはキャンディーだが、今回はロールが細いし、重いキャンディーを貼り付けてチョコレートコーティングがはげてしまうと困るので、軽くて小さなシリアルにしたのだ。煙突には小さなマシュマロ。窓に星の形の小さなキャンディー。あっというまにカワイイ汽車ポッポケーキのできあがり。プレーンとココアスポンジの台を並べてレモンフレバーのフロスティングを塗り、線路を描く。その上に2両の汽車を置いてろうそくを立てる。我ながら満足の出来栄え。こうして手を抜き始めると「これで充分じゃないの!」と思ってしまう。コワイ、コワイ。

 サブリナの妹のチェルシーはミーの同級生である。私の顔を見るとすぐに「ねえ、あなたが私の面倒を見られるっておばあちゃんに言ってちょうだい。」と叫ぶ。おばあちゃんは有無を言わさずチェルシーを連れて帰ろうとする。おチビが増えてもっとも実害を蒙るはずのチーに了解を取って、チェルシーに尋ねた。ここにいたいの?「うん、良い子にするから。お願い!」おばあちゃんに話すとおばあちゃんも大喜び。サブリナもチェルシーも良い子なのだが、どちらも猪突猛進タイプなので、おばあちゃんにはもてあまし気味なのに違いない。

 チーとカオが庭に連れ出して遊んでくれたので、大助かり。そのチーとカオは途中で「もーやだ!!!」となんどか叫んでいたけれど。私もチェルシーがまとわりついてくるので困ってしまった。彼女は何度も「ねえ、私の分のお土産ある?」と聞くのだ。あると何度言っても、またすぐに聞きに来る。何十回となく繰り返して、しばらく聞きに来ないと思ったら、お土産の袋をしっかりひとつ持っている。どうして探り当てたのか?胃の痛くなるようなパーティーが終わってほっとしてはいられない。ガキンチョどもは補習校の宿題を何一つやっていないのだから。でも、私にはもう怒鳴る元気は残っていないのよ!