遠足 チャールストン博物館



 最近、通常のボランティア以外にも学校に顔を出す機会が増えた。その一つが遠足である。今年、チー達6年生はチャールストンの博物館へ行くことになった。遠足ではたいていスクールバスを使うので時間的に大きな制約を受け、そんな遠くへはいけないのである。が、ちょうど古代エジプトの勉強をした生徒たちをミイラが展示してある博物館に連れて行きたい!と先生たちが頑張って実現したのだ。で、6年生全員が、ディストリクトのバスを2台連ねてチャールストンへ行ったのである。

 遠足の付き添いはミーの空港とチーの図書館(これはイーグルクラスのフィールド・スタディーだった)で経験したけれど、今回は片道3時間の長旅だ。カオ、ノン、ミーのお迎えにも間に合わないので、おとうにも協力してもらわなければならない。おとうにはお迎えのほかに夕飯のしたく(といっても、中華を買いに行くだけなんだけれど)を頼んだ。

 7時半にはバスに乗り込むようなことが手紙に書いてあったのだが、実際には8時20分の出発となった。チーのいるミセス・プールのクラスは私の他にクリスのお母さんとニックのおじいちゃんが付き添いとして参加した。ミセス・スタットラーのクラスも同じバスである。この2つのクラスは共にAcceleratedで、Averageクラスよりだいぶ人数が多いのだが、担任がチームを組んでいることもあってバスに乗る人数の均衡は考慮されないようである。

 遠足に出かける時は必ず、手首に名前と学校の名前と電話番号を書いたブレスレットをする決まりになっている。私の分もあって感激。ミセス・プールから私が担当する生徒たちのリストを貰う。チーがささやいた。「みんなおとなしい子を集めてくれたよ。よかったね。一番うるさいのはミセス・プールが引き受けてるんだよ。」バスには副校長のミスター・バーンズも乗っている。そう言えばミスター・バーンズの息子もチーと同じクラスだったっけ。

 バスが走り出すと同時にバスの真ん中から後ろがやかましくなる。ミセス・プールのクラスである。頭の中に反響してめまいがするほどうるさい。バスの前の方はシーンと静まり返っている。チーが言った。「ミセス・スタットラーは恐いから。それに、ミセス・プールのクラスにはおばかな子が集まっちゃったみたいなんだ。」一番うるさいヤツは誰だ!と声のする方を見たら、なんとミセス・プールその人であった。どうりでミスター・バーンズもミセス・スタットラーも 注意しなかったわけだ。遠足にはゲームやおもちゃのたぐいを持ってくるのは禁止されていた。(本は許可されていたけれど。)それでも誰かがトランプを持ってきたので、ミセス・プールは子供たちと一緒に遊び始めてしまった。そのうちミスター・バーンズも入って、お金を掛けてポーカー大会が始まってしまった。うーん、頭が痛い。

 博物館につくと、およそ1時間はグループ毎の行動になる。ミイラ以外にもサウスカロライナの歴史を紹介する展示品がある。中には日本の鎧兜もあった。チャールストンはかつて非常に栄えた港町だったのである。世界をまたにかけた商人たちがいろいろなものを持ち込んだのだろう。肝心のミイラは「マックロケで何がなんだかわかんない!」と子供たちが声を揃えていたが、古代エジプトで使われていた木の枕やら離れた建物同士で太陽の光を反射させて合図を送ったしゃもじのようなモノなど、映画のクレオパトラを思い出した。集合時間までの15分ほどをギフトショップで過ごす。レジのオバサンがものすごくのんびり屋で長蛇の列ができてしまった。チーは何を買おうか迷っていたのだが、ペンダントトップを買った。スカラベなのだが、「あのね、フンコロガシっていうのよ、日本語で。」という私のひとことが気に入ったらしい。その後、クラス単位で学芸員の人から詳しい話を聞いた。複製品をさわったり、当時の衣装を着てみたり、普段博物館を訪れただけでは体験出来ないことである。

 帰る途中で、マクドナルドへ。子供たちにはハッピーミールが用意されていた。3年生の時、チーと同じクラスだったハザーがスカラベのペンダントをしてニコニコしている。私は日本語でなんと呼んでいるか教えたくてウズウズしてしまった。でも、やめとこう。ものすごくおしゃれなハザーだもの、卒倒しちゃうかもしれないもんね。

 ちなみにフンコロガシ、古代エジプトではナントカいう(すんません、覚えてないの)王様が姿を変えたもので、太陽を押して動かしていると信じられていたのだそうな。革の紐とビーズでチーは私にも作ってくれると思う。(クリスマスのプレゼントよ。)由緒正しいフンコロガシのネックレス。楽しみ!

 しかしながら疲れた。ミセス・スタットラーのクラスの付き添いにきていたケリーのおばあちゃんは帰りがけに私に声を掛けてくれた。「ねえ、あなた大丈夫?やかましかったわねえ。私、頭が痛くてたまらないわ!」同感である。