ヒルトンヘッド パンツ騒動



 翌朝、私はホテルのデリカテッセンに朝食の買い出し、おとうはフロントに電話をして部屋を変えるように頼むことから一日が始まった。部屋の変更は前日にも頼んでおいたのだがなしのつぶてで、「今日、ちゃんとした返事がなかったら、違うホテルに行くか家に帰るかどっちかにするぞ!」とおとう。しばらくして4時以降に新しい部屋に入れるという解答を得た。で、午前中は浜で遊び、おひるごろ荷物を全部車に積んで出かけることにした。

 このところ非常に暖かい日が続いている。ペンキ塗りにはもってこいではあるが、さすが海岸では風も強く、水も冷たく、体感気温は低かろうと思っていた。ところがどうして、あったかいのだ。ものすごく暖かいのだ。暑いくらいなのだ。ガキンチョはズボンの裾をまくって水辺で遊び始めた。今回2泊3日という短い旅行なので、着替えを必要最低限しか持ってこなかったが、ま、何とかなるだろうと、その時は思っていた。

 水辺での遊びを切り上げてホテルの部屋に戻った。ミーとしりもちをついたカオはパンツまで変えなくてはならなかった。まずい、今夜穿く分が足りなくなってしまう。私は急いで洗濯をした。荷物をまとめ、車に積み込む。洗濯物は車の後ろに広げておいた。サブウェイでミートボールとツナのサブ2本を6人で分ける。(パンがサブマリンの格好に似ているからサブというのだが、そう言われると本当に潜水艦みたいだ。)そして、子供用のゴルフをすることになったのだが、そこでミーが池にはまってしまった。青く着色された水である。グリーンの面積よりも池の方が広いくらいで、おまけに池の縁は「落ちんかい!」というように急斜面になっている。落ちる方も多少鈍くさいといえるかもしれないが、設計にモンダイがあると私は思う。落ちたボールをすくう為に、各コースに網が置いてある。荷物を全部車に積んでいたのが幸いであった。車へ行ってミーを着替えさせる。ますます着替えが足りなくなる。

 ゴルフを終えるとゲームセンターで遊びたいとガキンチョ。たいした規模ではないが、1時間ほど遊んでホテルへ向かう。4時にチェックインして、きちんと要求した通りの部屋かどうか確かめなくてはならないのだ。おとうの要求は「ノン・スモーキングのコネクティングルームであること。できればオーシャン・ビュー。」部屋に行ってみると前日とは反対側のウィングで、4階(前日は2階)、きれいにアトランティック・オーシャンが見える!(プールも見えるものだからガキンチョはおっさん・ビューとはしゃいでいる。)もちろん、ノン・スモーキングルームの部屋なので深呼吸だってできる。やればできんじゃないの!と思うのだけれど、悪いのは誰だったんだろう?

 荷物の整理をする。が、???今夜はく予定のガキンチョのパンツが…。計算ではバッグに3枚入っていなければいけないんだけれど、1枚しかない。これまでの旅行ではガキンチョの用意した着替えを私が点検して荷造りするのが常であった。ところが今回、前日までミーが熱を出していて私にゆとりがなかったため、点検をしなかったのだ。チーは自分の着替えとミーが自分で用意した着替えをしっかり自分のバッグに詰めた。さすが長女である。で、カオとノンにはそれぞれ自分で用意した着替えを大きなトランクに入れておくように言った。結果としてカオかノンのどちらかが、既にトランクに入っていたパンツを自分が用意したものと思い込んで2枚少ないままだったに違いないという推測が成り立つ。 

   「自分の事を自分でする習慣がないからこんなことになるのよ!」と母はせっかくの旅行だってえのにガミガミ小言を並べる。嫌いな英語で予約を取り、部屋の変更までしてくれたおとうは立場がないってものよ。でも、考えてみればおとうは自分の着替えなぞ、用意した試しはないのである。「今度からとんちゃんも自分の着替えは自分で用意してちょうだい!」と叫びたいのをグッとこらえた。パンツが足りなくても「裏返してはけばいいや」なんて言いかねないヤツなのだから。

 落ち着いて考えれば、ホテルには洗濯機も乾燥機もある訳で、大騒ぎをするほどのことはなかったのだ。パンツごときでカリカリしていた自分が情けない、と今は思うんだけれどね。