ペンキ塗りの効用!?
毎日パソコンに向かう暇もないほどにペンキ塗りに精を出しているというのに、表面が想像以上に傷んでいてペンキのノリが悪く、なかなかはかどらない。飽きっぽいおとうは既に「めんどくせえな」と機嫌が悪くなっているし、嫌だ嫌だと思っていると、仕上がりもイマイチで、塗り直しをしなければいけなくなったりする。ドラマでは簡単そうにペンキ塗りをしているのだけれど、実際は本当に面倒な仕事である。
このところ、気温が低めだったので、ペンキ塗りができるのはおとうの昼休みと、ガキンチョが帰ってからしばらくの間だけだ。近所の人からは「よほどペンキ塗りが好きなのねえ」などと言われる。お向かいの奥さんからは「ずっとここにいられることになったんでしょ?家を買い取ったのよね。だから塗り替えているんでしょ?」といわれてしまった。確かに借家にこれほど手をかける住人は珍しいに違いない。「もし買うんなら、ペンキ塗りの手間のいらないレンガの家にする!」と答えておいた。おとうは「10年はペンキなんか塗りたかねえや!」とほざいているのだが、実は予想外の「ペンキ塗り効果」がおとうに現れたのである。
本格的にペンキを塗り始めておよそ1ヶ月。おとうは4キロほど体重が減ったのだ。もともと大柄な人ではないおとうなので、4キロというのは結構デカイ数字である。暇をみてウォーキングに汗を流している私は、体重という数字の上では変化がない(たまに増えることはある)。男と女の生理的な違いもあるのかもしれないが、どうしておとうの体重ばかりが減るのよ。急激な体重の現象は、思わぬ大病が隠れていることもある訳だが、おとうに関してはとても血色が良く、食欲も落ちているわけではないので、その心配はなさそうである。ペンキ塗りは、手間はかかっても、さほど運動量の多い仕事だとは思わないのだけれど…。
「脚立を取りに行く。脚立を組み立てる。ペンキを取りに行く。脚立に登ってペンキを塗る。おりて脚立を動かし、また登って、ペンキを塗る。な?結構動くだろ?」そりゃ、たしかにね。「しかも、ペンキを塗る時にはそーっとこうやって…。ほら、ちょうど太極拳をやっているみたいだろ?ペンキ塗りの間に、ものすごく筋肉を使って体が鍛えられているに違いない!」とおとうはぬかす。つまり、高いところの苦手なおとうがこわごわ緊張してペンキを塗るのは運動になって、高いところをいとわぬ私はいくらペンキを塗ってもエネルギーの消費はたいして進まないということなのか?とにかくおとうはペンキ塗りが始まるまで、家ではごろごろしているばかりのヤツだった。手や足が届かないところにあるものは、遠くにいる妻を呼びつけてとらせるし、動くことといえば食事をするために台所に行くのと風呂トイレ、そして眠るためにベッドルームに行くだけだったのだ。
確かにペンキ塗りはぼちぼち終わりにしたいけれど、おとうのためにペンキ塗りに代わるものを見つけないといけないんじゃないかなあ。それにしてもどちらかというと根性の曲がったおとうが簡単に減量できて、素直な良い母で、しかもウォーキングに励んでいる私が減量できないって、なんだか不公平だ。「それだけ食ってるってことじゃないの?」そう言われるとそうかもしれないなあ。