ペンキ塗り 脚立が欲しい!



 おとうは飽きっぽい。おとうはしつこい。一見矛盾していると思われる文章であるが、実は「おとうは飽きっぽいが、飽きるまでは非常にしつこい」ということになって、矛盾はしないのである。

 今、おとうは何といってもペンキ塗りに夢中だ。いつもは8時過ぎに会社へ行くのだが、早く帰ってペンキを塗りたい一心で、先週の金曜日には7時前、まだ暗いうちに会社へ行った。おとうが何かに夢中になることに文句はないが、私やガキンチョがボランティアもダンスのレッスンも犠牲にしなければいけないとなると、ちょっと不満が残るのだ。この不満におとうが気づいて、ペンキ塗りが終わった時にでもねぎらいの言葉があればいいけれど、ペンキに夢中でホームページを覗くこともないだろうから、気づかないだろうなあ。ペンキ塗りを始めて、誤算が多いことにびっくりした。考えていたより大変なのだ。

 ペンキはホーム・ディポで色を混ぜてもらった。カタログの中から選んだ色で、今回はベースが白、そこに黄色を薄いものと濃いもの2種と、ちらっと見たとき、紺か黒に見えたこげ茶色をそれぞれ少しずつ混ぜて作ったのだ。ペンキの缶には下地としてプライマーを塗るようにと書いてあった。ところがホーム・ディポのオジサンは「いらない、いらない。ペンキを2度塗りすればそれでいい。」という。しかし、ペンキで1度失敗している身としては、マニュアル通りにしておきたい。で、ブレンドしてもらったペンキを持ってその場を離れ、おとうはオジサンの目を盗んでプライマーを取りに戻り、逃げるように買って帰ったのだった。こんな卑屈になるこたあないとは思うのだが。

 プライマーは白で、伸びが悪く塗りにくい。ものすごく手間がかかる。塗り始めてすぐに、我が家にある小さな脚立ではどうにもならなくなってしまった。「三脚(何度脚立と言ってもおとうはこう呼ぶのよ)を買おう!」8フィートの脚立を買うことにした。昼休み、そそくさと食事を済まして、近くのWal-Martへ行く。6フィートはあったけれど、8フィートは売ってない。翌日のやはり昼休み、高速を使っても25分かかるところへ行った。そこにはホーム・ディポ、ロウズ、それにWal-Martもあるから、買いそびれることはないだろうという考え。まず、ホーム・ディポ。あったけれど、おとうが考えていたより10ドル高い。で、Wal-Martへ。74ドルちょっと。「前、ロウズで見た時は66ドルだった。ロウズへ行こう。」で、ロウズにいくと77ドルほどなのよ。「ウェストコロンビアのロウズなら66ドルかもしれない」私はおとうの好きにさせるしかないとあきらめた。高速をぶっ飛ばしてかのロウズに行ったが、8フィートは77ドルなのよ。これからWal-Martに戻るわけにもいかない。お金より時間の方が高くつくこともある。おとうは仕方なく8フィートの脚立を買った。

 車はDodge "Grand" Caravanである。上に脚立を乗せてひもで縛った。このロウズからは高速(インターステート)にのらずに帰れる。脚立を車から降ろすと、おとうは会社へ戻った。翌日から脚立を使ってのペンキ塗りが本格化すると、その時はおとうも私も信じていたのだが…。