算数は嫌いなはずだった



 ガキンチョの学校に行くと、時折廊下でマンツーマンの勉強をしている子がいる。英語のフラッシュカードを使っていたり、足し算やら掛け算だったりする。教えているのは先生だけではなく、実はボランティアもいるのである。

 カオは2年生になりたての頃、時計の読み方が理解できなかった。英語もここに来て1年たったばかりで、通常の授業だけで理解するのには不十分だった。そこで、廊下の個人教授を受けたのだ。「××ちゃんのお母さんが教えてくれたんだよ」カオはニコニコして話してくれた。××ちゃんのお母さんは教師ではなくボランティアである。

 今年度から私はボランティアになったのだが、今日、そのTraining meetingなるものに出かけた。コピーを取るくらいならできるとふんでの決断であったが、それだけではすまないということになってしまった。この学校郡の学校にはそれぞれ2人の副校長がいる。一人はしつけ、スクールバス関連を、もう一人はカリキュラムなどを担当し、ボランティアの指導はカリキュラム担当の副校長の仕事である。ミセス・ディアッレッサンドロ(発音が難しいので皆、ミス・ディーと呼んでいる)は今年ガキンチョの学校にやってきたカリキュラム担当の副校長だ。で、ミーティングに参加した新人ボランティアは5人。私はそ中の一人。

 常々、勉強の遅れそうな子供に対してのキメ細かな指導に驚かされてきたが、そのキメの細かさを保ってきたのはボランティアの力によるところがとても大きいという。5人にはそれぞれ新たに仕事が割り当てられていった。K−4に子供が通う人たちは、当然ハーフデイなので時間帯でできる仕事が決まった。ミス・ディーは私に「3年生のスピーチをみてくれないかしら?」という。新しい先生だから、私が英語ができないって知らないんだ、きっと。で、スピーチは私が教えて欲しいくらいよ!と言ったら、「じゃあ、算数にしましょう」。結局、3年生の算数を担当することになった。ミス・ディーは日本の子供たちの算数の得点がとても高いことを挙げ、「どんな風に教えれば良いか私達に教えてちょうだい。あなたがボランティアになってくれるってことは、きっと私達にとっても素晴らしいことよ」と私には酷な期待をする。今度ウチのがきんちょが算数で良い成績なのは「おとうの遺伝子」ということを伝えておこう。本当かどうかは知らないけれど。

 この日、ミセス・ギャンブレルはお休みだったので、月曜日にまた詳しい打ち合わせをすることになった。本当に勤まるんだろうか?考えると不安になってきた。そういえば、不得意なんだ、算数。