ピアス離婚!?



 アメリカではガキンチョの友達も耳にピアスをしている子が多い。オジサン、あるいはオジイサンと呼べるほどの人の耳にも、ピアスを見かける。学校に子供たちを迎えに来ているあるチャイルドケアのオネエサンは、耳と鼻、おまけにおへそにまでピアスをしている。「ディナのいとこはベロにまでしてるんだって!」とチーが教えてくれた。聞くところによると、genital(せっかくスター・レポートで覚えた単語よ。こーゆーところでひっそりと使わせてもらおう。)にまでピアスをしている人だっているそうな。年に一度帰国しているが、日本で必ず聞かれるのは「あれ?ピアスしてないの?」である。日本のたいていの学校では禁止されているわけだから、「せっかくアメリカへ行ったのにどうしてしないの?」となるのだ。

 スーパーでも安くてメチャクチャかわいいピアスが並んでいる。ディズニーのキャラクターから、スヌーピー、今ならハローウィン、そしてクリスマスやイースターにちなんだものなど。ガキンチョが誕生日のプレゼントに貰うことも多い。でも、我が家では、一人もピアスをしていないのよ。カワイイのを見るたびに「いいなあ」とは思うのだけれど。

 もう2年くらい前になるはずだけれど、ベッキーが美容院でピアスの穴ををあけるところをチーは見に行った。ベッキーは普段からちょっとした擦り傷でも大騒ぎをする方で、ピアスの時も断末魔のような叫びをあげたそうな。で、チーは恐怖におののいて「絶対しない。どんなことがあってもしない!」と思うにいたったのである。私は内心ほっとした。それでなくてもウチのガキンチョは皮膚が弱いし、アレルギーでも起こされたらたまんない。予防注射ですら、とんでもないほどの大騒ぎをしたんだし。

 結婚前、私は確かいろんなイヤリングを持っていた。高価なものはなかったけれど、ちょっと変わったものを見つけて集めるのが好きだった。そーゆー世界と縁が切れたのは、もちろん子育てにどっぷり漬かっていたからだ。特に第2子は私の耳を引っ張るのが好きで、だっこひものなかからでも、眠りに付く時も、夜中には無意識でも私の耳を触っていた。私の耳は常に赤く脹れた状態で、イヤリングなど、する余裕はなかったというわけ。かわいいピアスを見つけても、自分で身につけようなんて、考えもしなかった。確かに耳に穴を開ける恐怖もある。私の耳はぽっちゃりしているのよ!祖母は「福耳」と喜んでいたが。それに、忘れもしない小学校2年生のとき、血液型を調べるということで、耳から採血した。クラスの子はみな小さなバンソウコウを貼っておしまいだったのに、私は血がだらだらと流れて、とっても困ってしまったのよ。その頃から血の気が多かったんだと今になれば思うのだけれど。

 ある日、送られてきた通信販売のカタログで、ものすごくかわいいスヌーピーのピアスを見つけた。ガキンチョも「かわいい!」と大騒ぎ。私は「このスヌーピーのためなら穴でもあけちゃおうかって思うよね。」と冗談めかして言った。それを聞きつけたおとう、「自分の体に穴をあけようなんて、信じられない!そんなことをしたら離婚だ!」と真顔で言う。ピアスや刺青を「親から貰った体に傷をつける」などといって嫌がる風潮は日本で未だに健在だということは分かっていたけれど、自分の夫からこーゆー発言を聞いてびっくり。ガキンチョもおとうの気持ちを推し量れず、きょとんとしていた。最近おとうに対する不満が鬱積しているものだから、「ガキンチョが独立したら離婚してピアスをするってのも良いかもしれない」とふと思ってしまった。ふっふっふっ。