トロピカル・ストーム
先週木曜日は朝から雨が降っていた。2ー3日前から、ハリケーンが来るらしいと天気予報で言っていたので、驚きはしなかった。ハリケーンはボニーと名づけられたヤツがこのあいだサウスカロライナとノースカロライナの州境に来たばかりだ。その時コロンビア周辺は風が少し強くなったくらいで、そう言えばこのところ雨が降っていない。ガキンチョの新学期が始まってからまとまった雨が降っていないので、一度も車で送り迎えをしていないくらいである。とはいうものの、ハリケーンがらみの雨は度を越すこともある。トルネードをもたらすこともある。で、こういう日は気をつけてテレビのニュースやウェザーチャンネルを見ることにする。
今回のは途中で勢力が衰えてトロピカル・ストームとなったが、そのアールと名づけられたヤツは、ガキンチョのお迎えの頃にここいらを通ることになりそうであった。学校は我が家の目と鼻の先にあり、普段は歩いて通学している。ところがちょっとした雨で、横断歩道のまわりがものすごい水溜まりになってしまうので、雨が降っている時は車で送り迎えをすることにしている。だいたい、ちょっとした雨といっても、日本のようにしとしと降るということはない。ここいらの雨は中庸ということを知らないのさ。
日本の幼稚園や学校では、クラス毎、あるいは住んでいる地域毎に連絡網が作られているのが普通である。万一の時、この連絡網にしたがって、緊急連絡がもたらされる。今回のアールのように、ちょうど下校時にぶつかることが予想される場合、日本だったら下校時間を早めるなどの措置が取られるだろう。ところがこっちは連絡網というシステム自体がないし、臨時休校などの連絡はテレビやラジオで各自が確認しなければならない。両親が共に働いているのが当たり前のアメリカでは、途中で全父兄に連絡を取るなんて不可能に違いない。とにかく、下校時間を早めるなんていう気は毛頭ないらしい。
で、ガキンチョはお迎えの時に最近買ったばかりの「クマのプーさん」の傘を持ってきてねと母に言った。でも、実際には雨と風が強すぎて、ガキンチョに(特にミー)傘を持たせるのは無理である。私の傘を2本持って迎えに行った。まず、ミーのお迎え。幼稚園児は正面玄関でラインナップしていた。1年生もすでに出てきていたが、強風と雨に時折悲鳴が混じる。ある母親が叫んだ。「オレンジバーグにトルネード警報がでてるのよ!」オレンジバーグは隣りの郡なのだけれど、実は私が家を出る3分前に警報は解除されたのよ。ここレキシントン郡はトルネード注意報が出たままだったけれど。ガキンチョ4人を拾い集めて車に一番近いドアから外に出る。傘をさしていても雨が横殴りなのであまり役に立たない。副校長のミスター・バーンズが「濡れないようにね」と優しく声をかけてくれる。彼はジョークの固まりのような人間なのである。一歩外に出た瞬間に、もうビッチョリなんだもの。
この日、アールが通り過ぎてもしばらく強い風がふいていた。我が家の被害はフロントヤードのドッグウッドという木が折れただけだった。コロンビアのダウンタウンはたくさんの道路が冠水したと翌日の新聞は報道していた。ところによっては家(モービル・ホーム)が飛ばされたという被害もあったのだ。バックヤードに植えたキューリも無事で、その日我が家はキューリの浅漬けで無事を祝ったのだった。