カビだらけのドッグフード
ある日、日本人ファミリーとの会食を終えて家に戻り、ポポコに餌をやろうとした時のこと。前日に買ったばかりのドッグフードを開けてびっくりした。カビだらけなのだ。その日は補習校のヘルパーでもあったし、ちょっと疲れていたのだが、ポポコに餌をやらないわけにはいかない。カビだらけのドッグフードの袋とレシートを持って店にいくことにした。
出かけようとする私におとうが聞いた。「カビって、なんて言うんだ?」私はすかさず「mold」と答えた。だいたい、おとうの方が英語はできる(はずである)。だから、おとうが知らなくて、私が知っている単語はそうざらにはない。たまにそーゆー単語があると、おとうはなんとなく不機嫌になる。今日は急いでいたため、おとうがmoldを知っていたのか知らなかったのか、確かめないままでかけたが。おとういわく私はくだらない単語を知っているんだそうで、くだらないかどうかはわからないけれど、概して食べ物には強いのよ。特に、ここいらじゃあカビの生えたパンが店に並んでいるのは珍しくないんだもの。
店員をつかまえていう。「これ、昨日買ったんだけど、カビだらけなのよ。取り替えてちょうだい。はい、これレシート。」店員は、袋の中をのぞいて「これと同じヤツでいい?だったら取ってきていいよ」という。私は同じ商品を取ってきて「中身を確かめるわね」と開けてみた。今度のは大丈夫。レシートを返してもらって、家に急ぐ。
サウスカロライナではレシートがとても大事である。多分他の州でも同様だと思うが、今回のドッグフードのように家に戻ってから不都合が分かった時のほか、他の店で同じ品物がもっと安く売っていた時に差額を払ってもらえたりするし、メール・イン・リベートがついていた時もレシートがないと請求できないのだ。不測の事態を見込んで、レシートをとっておいた主婦根性の成果である。
さて、製品の品質が日本ほど高い水準で保たれていないサウスカロライナでは、クレームをつけて返品する、あるいは返金してもらうということは日常のことである。英語では苦情を言うというより、ただ事実を正確に伝えることで精いっぱいだ。イヤミをいうなんてとんでもない。今回のドッグフードもたったこれだけなのだが、3年でようやくこの手の会話ができるようになったと喜んでいいのか、3年でまだこんな程度の会話しかできないと嘆くべきなのか、私にはわからない。(たぶん後者なのだろう)クレームをつける時、いつだって「泣き寝入りする方がどれだけ楽かわかりゃーしない!」と叫びたいほどなのよ。それでも、頑張っている主婦。自分で自分を誉めるこの頃である。